気まぐれ学び日記:デューク大学講義:石油ガス産業オペレーション&マーケット③
天然ガス処理
天然ガスは一つの炭素原子に四つの水素原子が囲む分子構造です。未加工の天然ガスは水や不純物に加えて、より重くより複雑な炭化水素もわずかに含むことがあります。産業、商用、生活用に使う天然ガスに加工する必要があります。なぜなら未加工天然ガスはパイプラインを腐敗させたり、メタンを動かす専用機器にダメージを与えたり、大気中に有害物質として排出されてしまいます。
まず水を除きます。次にコンデンセート油(液状炭化水素, condensate)を使います。コンデンセート油は5個以上の炭素原子を持つ炭化水素分子で構成されておりメタンよりも重い物質です。このコンデンセート油が石油加工の産業プラントで天然ガスと混ぜられて液体除去(liquid removal)を行います。その後、ガスは天然ガス加工プラントへパイプで流されます。そこではガスに含まれる硫化水素や二酸化炭素など酸性ガス(Acid Gas Removal)を取り除き、次の工程で硫酸に含まれていた硫黄(elemental sulfur)を取り除きます(Sulfur Removal)。これらの過程は原油蒸留と呼ばれ、これによって副生するメタン、エタン、水素等の混合ガスはオフガス(off gas)と呼ばれ、販売されたりエネルギーのために燃やされます(Tail Gas Treatment)。
酸性ガスが取り除かれたガスはあらたに脱水処理、窒素除去され、ドライガス(dry gas)と呼ばれる状態になります。ドライガスとは、85%をメタンで構成された炭化水素を持つガスです。ドライガスはこの状態でパイプを通って販売されます。一方で元々の天然ガスがウェットガス(wet gas)だった場合、大量の液体炭化水素を持つため、メタンの次に大部分を構成します。二つの炭素原子を持つエタン、5つの炭素原子を持つアルカン(pentane)など。これらはメタンと分離処理をされて石油精製工場または産業で販売されます。
原油蒸留について
原油に含まれる炭化水素は燃料として、液体として、また固形物として利用されることになります。石油精製は原油分解を目的とし異なる炭化水素のタイプによってパイプを分けることになりますが、そこで用いられる手法が分別蒸留(fractional distillation)になります。この分別蒸留器が石油精製の核をなします。
分別蒸留機に原油が流される直前にはボイラーで気化(vaporized)されています(気化原油 vaporized crude)。気化原油は分別蒸留器のタワーの下から入り、上に上がるにつれて温度が下がります。下部は400度、上部は150度から20度になります。上部の20度まで上がった気体はLPガス(Liquid Petroleum gas, 液化石油ガス)と呼ばれ3~4つの炭素原子を含んだ炭化水素で構成されています。液化石油ガスは圧力コンテイナーで圧力を与えることでガスになり燃料として使われます。例えばライターで使われるブタン(butane)、グリルやキャンプストーブで使われるプロパン(propane)になります。
液化石油ガスの下の150度から200度のあたりではナフサ(Naphtha)が分別蒸留されます。ナフサは4~12個の炭素原子で構成される炭化水素分子(hydrocarbon molecules)となります。ナフサはガソリンの主成分となり、公共交通機関でも使われます。また石油化学製品(petrochemicals)の生産にも使われ、solvents(溶剤)、洗剤(detergents)、adhesives(接着剤)、pesticides(殺虫剤)、タイヤやナイロン、ポリエステル等の合成繊維に使われる合成ゴム、そしてパッキングからコンテイナー、機械部品など幅広く使われるプラスチック製品に使われます。
ナフサの下で300度で分別蒸留されるケロシン(kerosene)は12~16個の炭素原子で構成されています。ジェット燃料にケロシンは使われます。
ケロシンの下は蒸留液(Distillate)になり一つの分子が15~18個の炭素原子で構成されています。蒸留液はディーゼル燃料として使われ、またより重い蒸留液は暖房のための油として米国の家庭で使われています。
続いて蒸留液の下にある370度で分別蒸留されるのが重油と潤滑油(Heavy fuel oil & Lubricants)になります。これらは1分子に19以上の炭素原子で構成されています。重油は例えばバンカー用燃料として使われ、大型貨物船などに使われます。潤滑油はエンジンの手入れなどで使われます。
最後に、400度以上の下位部分には残渣(residual)が残り、これらは固体炭化水素(solid hydrocarbons)と呼ばれます。25以上の炭素原子で構成されます。ワックスやクレヨン、道路整備や防水屋根を作るときに使われる瀝青(bitumen)、アスファルトに使われます。
分別蒸留で生成された物質割合は?
42ガロン(約159リットル)の石油バレルを仮に設定すると、46%はガソリン生成に使われます(米国)。
原油蒸留含む石油精製は最も利益が上がるように設計されます。例えばアメリカだと46%ほどがガソリンに使われますが、それは米国で最も需要があり最も売りあがるからです。一方でヨーロッパではガソリンではなく公共交通機関で使えるディーゼル燃料が最も需要が高くなるため最終的なアウトプットはディーゼル燃料を最大化されるように生成されます。
また、原油は地域によって粘度が異なります。粘度が軽い原油はより軽い炭化水素を含むため、上記のように分岐蒸留した際にはガソリンに使える部分が大きくなるのです。一方で、原油の種類によって石油精製する欠点としては、粘度が低い原油は粘度が高い原油よりも加工コストが高くなる傾向があるという事です。もちろん加工コストがたかっくなればその分利益も減ります。結果的に、この石油製品群を最適化する追加的な処置が必要になり、価値が低い製品を価値が高い製品に転換する精製方法ということです。
分別蒸留に加えて、例えば粘度が高い原油で重油に蒸留されたものを一つ上の蒸留液に転換したい場合、新たに分解装置を用います(cracking units)。この分解装置では長い炭化水素鎖を砕いてガソリンやディーゼル燃料に使えるぐらいまで短くします。様々な分解装置がありますが、高熱で熱するものやビスブレーカー(visbreaker)で高圧をかけるもの、流動接触分解(FCC; fluid catalytic cracker)など。FCCは固形を液状化しより低沸点の炭化水素へ転換します。
また、ガス系触媒の分解装置もあります。炭化水素の中には分解過程で多くのナフサを生成します。このナフサは蒸留液に戻すのではなくそのままアルキル化(アルキル基を導入,Alkylation)させます。そうすることでガソリンに含まれる化学物質であるオクタン(octane)を増やすことができます。逆に言うと、ガソリン燃焼を活発化させる効果を生み出すことができます。そのため高いオクタン価はエンジン失火やガソリン完全燃焼の可能性を下げてエンジンパフォーマンスを向上させることが期待されます。
ナフサをガソリン化するには改質器(Reformer)を用います。改質器はオクタン価が低いナフサ炭化水素分子をより長い分子連鎖に転換してオクタン価が高いガソリン分子にしていきます。
残渣に含まれる粘度が高い炭化水素の精製はコークス化装置(coking units)を用います。コークス化装置から分解装置(cracking units)へ運ばれ石油コークス(petroleum coke)となります。石油コースクスは鉄生成などの高熱処理ン使われます。最後に、最上部の液状化ガスはガスユニット(gas unit)へ運ばれ、液状化ガスになるか、精製燃料になるかが決まります。
また、cracking units, alkylation, coke, reformer, gas unit, と蒸留器の間のパイプにはそれぞれ硫黄など汚染物質を取り除く処理がされています(contaminant removal)。
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