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Z世代とSNSの使い方~Z世代の旅行行動から考える①~
若者の研究所では、月に一回、学生研究員が集まって学生会議を開催しZ世代の価値観を分析している。8月のテーマは、夏休みということもあって「旅行」にした。Z世代の大学生たちの旅行にはどのような特徴があったのか、著者のメルボルン旅行のSNS記録を交えながらまとめていく。
Z世代の旅事情について聞いてみた
今回集まった学生たちは、大学1年生~4年生までの9名。皆それぞれ、自分の旅行の写真を見せながら、自分が思う「Z世代ならではの旅先行動」を話してくれた。
コストをかけるのは非日常の体験
全員に共通していた意見として、「宿や交通手段ではコストを削減し、経験にお金を使いたい」というものがあった。
例えば、沖縄に行った研究員のTさんはシュノーケリングという体験にお金をかけたそう。著者も沖縄に行った際パラセーリングとシュノーケリングをしたのだが、合わせて1万4千円ほどだった。大学生にとって決して安くない金額。しかし、「沖縄でしか出来なささそうな体験」に価値を感じた。普段はインドアで、マリンスポーツをしようなどとは思わない性格の私だが、旅先では普段できないような行動を積極的にすることができる。これは旅の醍醐味のひとつだろう。(ちなみに私は、メルボルンでは体験をわざわざ探しに行かなかった。海外という環境こそ、非日常だったためだろう。)
「陶芸や蕎麦打ちなど、日常では体験できないことを旅先では積極的にしたくなる。普段は少し面倒くさくなることでも、旅先だとポジティブな気持ちで楽しむことができます。」
若者は旅行に「非日常の体験やワクワク感」を求め、お金をかけているようだった。これは普遍的な旅行の価値であると考えられるが、若者はその体験をどのように昇華しているのだろうか。
SNSにも複数の自分がいる
若者たちは、旅行の体験を写真に撮り、SNSに投稿する。これは、Z世代の大学生だけではなく10年以上前から、多くの人がしている行動だろう。
日本におけるInstagramの拡大は2017年のインスタ映えによるブームが1つの要因だとされており、以降インスタ映えという言葉は一般的に定着しています。 また、同年には日本国内のユーザー数が2,000万人を突破し、2019年には3000万人を突破しました。
Twitterは、2006年8月に米国で一般公開され、日本でも2008年4月から日本版が公開されています。日本では運用開始から2年ほどですが、Google Ad Planner(注2)によると、2009年12月におけるtwitter.comの日本のユニークユーザー数(注3)はすでに740万人です。
“つぶやき”と“ゆるいつながり”による 新しい形のコミュニケーションサービス その魅力と活用法
https://jp.fujitsu.com/family/familyroom/e-family/2010-36/ud/#:~:text=Twitter%E3%81%AF%E3%80%812006%E5%B9%B48,%E3%81%99%E3%81%A7%E3%81%AB740%E4%B8%87%E4%BA%BA%E3%81%A7%E3%81%99%E3%80%82
我々がよく使うこの2つのSNSも、引用の通りZ世代の大学生が小学生・中学生のころから日本で親しまれている。旅行の思い出はインスタグラムに載せる学生が多いので今回はインスタグラムに注目し、Z世代らしいSNSの使い方を分析していく。
1.ストーリーにも求められる「オシャレさ」
「インスタ映え」という言葉通り、フィード投稿にはオシャレな写真をのせる。これは前と変わっていない使い方だろう。しかし、ストーリーには日常の写真を載せ、大きくカラフルな文字で状況説明というインスタグラムの使い方をしている学生は少ない。今は、ストーリーすらもオシャレさを求められているのだ。例として、著者のインスタグラムのメルボルン旅行ストーリーズを引っ張ってきた。
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写真を三分割でぎゅっと載せるのも若者っぽいかも?
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特徴は、「文字なし」「余白なし」「位置情報のみ」。不必要な文字や余白をすべて排除し、写真のみを載せる。これがZ世代の中でオシャレとされているストーリーである。写真を撮る際はサイズを16:9に設定し、ストーリーのサイズに合うように撮るようにしている若者も多い。インスタグラムに載せることを考えて写真を撮ることが旅行をはじめ、日常の当たり前と化しているのだ。
SNSは自己表現の場というよりは、キラキラした日常の切り取りを載せ、自分のブランディングをする場になっている気もする。そんな中、インスタグラムのアカウントを2つ以上持つ若者が増えている。
2.本垢とサブ垢の使い分け
インスタグラムの投稿にオシャレさを求められる若者たち。(正確に言えば求められる、というよりオシャレでないといけない気がするという気にさせられているのだが)これもZ世代が感じている協調性や同調圧力によるものなのだろうか。(以前のnoteにこのテーマも取り上げているのでぜひご覧くださいhttps://note.com/wakamonoken/n/n960dc287606d)
さらにはサークルの新歓で知り合ったよく知らない人、一度だけ会ってそれきりの人、そもそも誰なのかわからない人などもインスタグラムで繋がっている。コミュニティが増えていく過程で、「よっ友」にもならない知り合い未満には見せたくない写真もある。そのため若者たちは、等身大の写真を、好きなだけ、仲のいい友達にだけ見せるための「サブ垢」なるものを持つ。
本垢と呼ばれるメインアカウントがオシャレさ重視なのに対し、サブ垢は、何も気にせず自分が載せたいものを載せる人が多い。
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上の画像にあるように、本当にくだらない内容ばかりである。仲のいい友達にしか見せられないような姿(酔っぱらいの写真など)や、笑えたこと、悲しかったことの共有など、サブ垢は、友達とのコミュニケーションに使われる。本垢とサブ垢では、投稿する内容どころか、役割まで違うのである。
「本垢は、自分の印象づくりのためだったり、きれいな写真を思い出としてとっておく用。基本的には当たり障りのない写真しか載せません。サブ垢は友達とのコミュニケーションだったり、等身大の思い出を残しておくアルバムのような役割のイメージです。」
器用にアカウントを使い分けているZ世代。これは、Z世代ならではの行動なのではないだろうか。交友関係やコミュニティが増えているからこそ、アカウントを分けて自分のアイデンティティを分立する。これは、特徴的なZ世代の考え方である。
楽観的に旅をする若者編に続く
若者の研究所について
Z世代の価値観をZ世代が深掘り。“ディープ”な調査レポートを毎月発行
「若者の研究所」では、高校生・大学生による若者のシンクタンク・コミュニティである“若者の研究所”が毎月、様々なテーマに対し、Z世代の思考・価値観・行動の傾向に迫る調査レポートを発行しています。Z世代は1996~2010年生まれ(現在13〜27歳)の若者を指し、日本の総人口の約14%を占めています。一方で、Z世代は世界人口の約32%を占め、Y世代人口を上回っています。日夜、Z世代調査など、Z世代に関する情報は溢れています。しかし、価値観が多様化する中で「Z世代は〇〇である」と一括りに理解することが難しくなっています。「若者の研究所」は、彼らの行動や価値観をより深く掘り下げた独自調査を、Z世代の当事者から発信していきます。
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本レポートの著者について
Watanabe Aiko|渡邊藍子
株式会社バイデンハウス 学生インターン
若者の研究所 学生所長