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生成AIを社内で活用する際の課題7選とその対策!競合に負けないためのノウハウを解説

生成AIは私たちの生活やビジネスに革新的な変化をもたらしています。ChatGPTをはじめとした様々なAIツールの登場、広島サミットでの広島AIプロセスの立ち上げなど数多くの話題が有りました。

しかし、その活用にはまだ解決すべき課題が存在します。

この記事では、生成AIの活用の現状とともに、その活用に立ちはだかる課題とその対策・解決策について詳しく解説していきます。生成AI活用における課題を理解し適切に対処することで、組織でも個人でも生成AIの活用はさらに広がっていくことでしょう。

ぜひ最後までご覧いただき、生成AIを自社で活用する際に検証すべき項目として参考にしてください!

生成AI活用の現状

生成AIは、その能力と可能性を最大限に引き出すために、多くの分野で活用されています。

それは、記事の作成、広告の生成、ソーシャルメディアの投稿、さらには詩や小説の作成に至るまで、あらゆる形で見られます。

このように一見、生成AIの活用度は進んでいるように見えますが、2023年12月時点における企業の生成AI活用状況の調査では「導入済み」が18%と、企業の半数以上が導入済みのアメリカや豪州と比較するとかなり遅れているのが実状です。


参考:【データから読み解く】日本企業の生成AI活用状況|オンラインMBAなら『ビジネス・ブレークスルー大学大学院』 (ohmae.ac.jp)

「他社に負けないこと」が原動力

日本国内で生成AIの認知・活用が進んだ理由は、生成AIの発展に伴い自社ビジネスや業務における活用イメージが具体的となったことが大きい要因の一つでしょう。

調査統計からもそれがうかがえ、さらに「競合他社に先を越される可能性」や「新規競合の参入の可能性」を感じている企業が多いことがわかりました。要は「先を越されたくない」ということですね。

既存ビジネスにおいて「他社に負けないこと」は重要なファクターとなりますので、生成AIの普及にもつながっていると言えます。

半数近くはテキスト生成を活用

現在、生成AIを導入している企業や組織の半数近くがテキスト生成AIを活用しています。

これは、記事の作成、レポートの作成、メールの自動化など、さまざまなタスクを効率的に行うことができるという分かりやすさと、社内業務向けの利用が多いことが関係しているでしょう。

その一方で、画像や動画、音声・プログラムコードへの利用はまだ初期段階で20%程度です。未熟な分野であるとともに、利用方法の模索中であることがうかがえます。

なお、生成AIの活用について詳しく知りたい方は、下記の記事を合わせてご確認ください。
生成AIと自社データを連携する方法4選!できることや成功事例も解説

生成AIを活用する際の課題と解決策7選

業務への活用が広がらない理由は、様々な理由が考えられる中で、生成AI自体にも課題があると考えられます。確かに人間のように文章や画像を生成できる技術は、非常に活動範囲が広く活用方法も無限大で魅力的です。その驚異的な能力と可能性をもっている半面、いくつかの重要な課題にも直面しています。

以下で、生成AIを活用する際の課題と、それに対する現時点でできる対策・解決策をご紹介します。

ハルシネーション

生成AIの一つの大きな課題は「ハルシネーション」です。これは、AIが存在しない事実や情報を生成する現象を指します。AIは、学習データからパターンを学び、それに基づいて新しい情報を生成します。しかし、このプロセスは完全ではなく、AIが誤った情報を生成する可能性を持つという事です。簡単にいうと、嘘の情報を生成するという事になります。

例えば、企業において市場分析のために生成AIを利用した際、存在しない製品のトレンドを報告したら誤ったビジネス戦略となってしまうでしょう。ですので、特に絶対に間違ってはいけない業務・分野については生成AIが使えるレベルにいないと言えます。

この問題への対策としては、最新かつ正確なデータでAIを定期的に学習させることです。出力を人間が監視し、必要に応じて修正することも有効な対策となるでしょう。生成AIにあらかじめ「事実の根拠となる資料を提示してください」と指示を出すことで解決できる場合もあります。

学習データの著作権

一般的に、AIの開発には学習元となるデータセットが用いられますが、このデータセットの著作権問題が存在します。

必要と認められる限度を超える場合や、著作権者の利益を不当に害する場合は、AI開発が目的であっても著作物の利用は認められません。この線引きも難しいものとなっておりAI開発の大きな課題の1つとなっています。

この問題に対する対策の一つとして、公開データセットやライセンスが明記されているデータを使用することが考えられます。これにより、著作権法を遵守しながら必要なデータを収集することが可能となるでしょう。

参考記事:著作権が制限されるのはどんな場合? | 著作権って何? | 著作権Q&A | 公益社団法人著作権情報センター CRIC

学習データの偏り

学習データの偏りも大きな課題です。学習データモデルに用いるデータは偏りがないデータの抽出が必要なのですが、無意識に偏っているという事もあるからです。その結果、偏ったアルゴリズムバイアスが入ってしまいます。

有名な例では、過去にAmazonが開発した採用AIで、学習データとして使用した履歴書の大部分が男性の物でした。そのため、女性よりも男性を高く評価するアルゴリズムとなり炎上しました。

これに対する対策はシンプルで、全体的にバランスの取れた視点を反映していることを確認し、偏りのバイアスを極力なくす、無意識な部分も気が付き次第修正していくことです。

生成コンテンツの責任問題

生成AIが作成したコンテンツに対する責任問題は、その使用と普及が広がるにつれてますます重要になっています。生成AIによって生み出されたコンテンツの責任は、一般的にはその使用者が負うとされています。

しかし、生成AIの意思決定プロセスは複雑でブラックボックス的であり、その説明が難しい場合も多く、どこまで責任を負えるかが課題です。

AIのアルゴリズムがどのように動作し、どのように結果を生成するかを理解するのが困難であるためです。これに対する解決策としては、生成AI提供側がガイドラインや規約を設けることで、ユーザーが適切な使用方法を理解していくことになるでしょう。

データ資産の流出

生成AIの使用は、データ資産の流出という重要な課題を引き起こす可能性があります。生成AIは与えられた情報から学習するというディープラーニングの仕組み上、そのデータが適切に保護されていない場合、重要な情報が不適切に公開されるリスクがあります。例えば個人情報や企業の機密情報もAIの学習材料となってしまうでしょう。

その結果、流出させる意思がなかったとしても、生成されたコンテンツを通して社内データが流出する可能性があります。

これに対する解決策としては、機密データへのアクセスは厳密に制限し、AIの学習用データから除外する、生成されたコンテンツは事前に検査して機密情報が含まれていないかチェックする、AIモデルの出力に機密情報が混入しないよう適切なフィルタリングを行うなどが挙げられます。

プロンプト経由での攻撃

チャット機能を使ってあたかも正常な利用であるかのように装い、開発者が意図しない悪意を持った挙動を誘発させることで攻撃を行います。特に対話型AIが狙われやすいです。

基本的に、個人情報やAIの根幹に関わる情報を外部に出ないよう設計されていますが、意図しない方法で流出する可能性も秘めています。最悪の場合、そのAIのソースコードや内部情報が流出してしまうケースも考えられます。

この問題はAI開発者側が、プロンプトの内容を事前に検査し危険な指令や不適切な内容を含むものはブロックする、生成されたレスポンスも常に監視しAIの設計意図から外れた出力がないか確認するなどの、入力と出力の両面から多層的な対策を講じることが重要です。

フェイク画像

生成AIの登場により精巧さが増したフェイク情報・フェイク画像が簡単に生成できるようになりました。

これは他のニュースでも取り上げられたフェイク画像です。2023年10月7日のハマスによるイスラエル攻撃後、Xのハマス関連アカウントにはイスラエル側の難民キャンプを撮影したとされる画像が投稿されました。

ぱっと見、本物と見間違いそう。ですが、真ん中のイスラエルの旗がおかしいため、フェイク画像とわかるレベルでした。それでもだまされる人はいるでしょう。生成AIにより、このようなフェイク画像が誰でも生成・拡散できてしまうことは大きな課題です。

これを防ぐことは非常に困難で、今後ガイドラインや規約を設けていくことで対策を取っていくことになると思われます。

倫理的な問題

倫理とは善悪を判断する際に必要な思考であり、社会生活を送る上での一般的なルールや、社会で行為を起こす際に善悪を判断する規準となるものです。  

生成AIが広く一般に普及するにつれて、生成AI技術の応用が人々のプライバシー、偏見、権利、自律性などの重要な倫理的価値に影響を与える可能性があるとされています。また、生成AIのシステムが公正かつ透明性のある方法で設計・運用されないと、差別や不公平が増幅され、個人の尊厳を損なう恐れもあります。このように、生成AIの開発と普及に伴い、倫理的な問題に対処することは重要な課題だといえるでしょう。

この問題に対するAI開発者側の対策も進んでおり、最新の生成AIでは有害コンテンツや偽情報の生成はできないような仕組みが作られています。また、「生成AIの利用ガイドライン」が作成されるなどの対策も行われています。

参考:生成AIの利用ガイドライン

生成AI活用時の組織側の課題3選

生成AIそのものにも課題はありますが、それを活用する組織側にもまだまだ課題がたくさん存在します。生成AIの活用は組織にとって多くの利点をもたらしますが、それは同時にいくつかの課題も引き起こすでしょう。下記に示した例のような課題をクリアしないことには、生成AIの大幅な活用拡大とはならないと思われます。

生成AI系スキルをもった人材の不足

生成AIの導入と活用は、高度な技術的知識を必要とします。しかし、現在の市場では、このようなスキルを持つ人材が十分に供給されていないという問題があります。

それには大きく「人間がAIを補完する」「AIに人間の力を拡張させる」「人間とAIが共同で業務を行う」というスキルが必要となるためです。。

まだ開拓途中の分野であるために、スキルを持つ人材は少ないのが実状であり、人材不足であるのは間違いありません。早急な対策も取りにくく、教育やトレーニングを強化していくほかないでしょう。

ノウハウの不足

生成AIの活用が見込まれるケースとしては、大量かつ高度に処理を行うような作業、専門家の支援、作業効率化などがあります。

生成AIの導入と活用は、単に技術的なスキルだけでなく、適切なノウハウが必要です。これには、AIの設計と運用、データ管理、そしてAIの出力の解釈と活用方法などが含まれます。しかし、これらを実現するためには生成AIについての深い理解とノウハウが必要となります。

開拓途中の分野であるがゆえにこのノウハウの蓄積がまだそれほど多く有りません。それは組織における生成AI活用の障壁となってくるでしょう。これはすでにノウハウのあるコンサルタント等の活用により、改善が見込めます。生成AIのプロを活用しつつ、社内ノウハウを蓄積していきましょう。

AIリテラシーへの理解不足

生成AIの活用を最大限に引き出すためには、組織全体がAIリテラシーを理解し、それを活用する能力を持つことが重要です。しかし、多くの組織では、AIの基本的な概念やその可能性、そしてその使用に関連する倫理的な問題についての理解が不足しています。

「とにかくAIを導入すればビジネスが効率化し、イノベーションが起こる」とイメージしている経営者もいるのが事実です。その結果十分な検証を行わないままAIに投資し、効果が十分に得られないまま失敗するという事例も発生しています。

こちらに関しても、コンサルタント等の活用で理解を深め、適切な活用が行えるように知識を習得していくことで改善が可能です。

生成AI活用における課題は生成AIの発展・利用拡大の活力となる!

生成AIは生活やビジネスに革新的な変化をもたらす技術ですが、その活用にはまだ解決すべき課題が多くあります。

生成AI自体の課題としてはハルシネーションや学習データの著作権・偏り、生成AIを活用する組織側の課題としては、人材・ノウハウの不足が挙げられます。

今後はこの課題を解決していくことで、生成AIはより発展していくことになり、利用の拡大にもつながっていくでしょう。

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