生成AI開発のベストな環境の作り方!エンジニアが開発の流れを解説
あなたの会社では、AIの開発を行っていますか?
総務省が公表している「令和元年版情報通信白書」によると、国内企業の39%は、すでにAIを業務に導入しているとのこと。
近年では、ノーコードツールや生成AIツールが普及してきたこともあり、自社でAI開発を行えるのも要因の1つとして考えられるでしょう。
実際、システム開発のサポートを行っている弊社のもとにも、多くの企業様からご相談をいただいております。
ただし、AIの開発をしたいが、開発の流れや必要な環境がわからないという方も多いのではないでしょうか。
そこでこの記事では、AI開発の流れや必要な環境、AI開発におすすめのツールをご紹介します。
最後まで読んだ方は、AI開発に必要な流れや環境を理解し、自社の業務にAIを組み込むことで業務の生産性や売上を向上させることができます!
ぜひ、最後までご覧ください。
AI開発のフロー
まずは、AI開発のフローを紹介します。AI開発を行う際は、スタートからゴールまでのフローを明確に掴んでおくことが大切です。
そこで、AI開発のフローを、3段階にまとめました。
AI開発の企画
AI開発の検証/本開発
AIの運用
以下で、それぞれの開発フローを詳しく解説していきます。
AI開発の企画
AI開発の企画は、最初に行う業務でありながら、最も重要な工程です。自社の業務で解決すべき課題を洗い出し、AIによってどのように解決していくのかを設定します。
目標設定を疎かにしてしまうと、AIの導入後に思ったような成果が得られず、導入コストを無駄にしてしまうことにもなりかねません。目標の設定後は、社内で必要なデータを集め、AIに勉強させるためのセットアップを行います。
課題・目標設定
AI開発の企画で最初に行うのが課題の洗い出しや目標の設定です。自社内で抱えている課題を明確にし、AIでどのように解決していくかを話し合います。
また、目標を設定する際は、具体的に数値で目標を立てましょう。AI開発には大きなコストがかかるので、費用対効果を考慮することも忘れてはいけません。
勉強・セットアップ
目標の設定後は、社内でAIの学習に必要なデータを集め、学習モデルのセットアップを行いましょう。この学習モデルにデータを学習させ、簡易的に運用していきます。
AI開発の検証/本開発(PoC開発)
AIの勉強やセットアップ後は、PoC開発のフェーズに移ります。PoCとは「Proof of Concept」の略で、「コンセプト(構想)の証明」という意味です。
企画したAI開発が技術的に実現できることを、実際に検証していきます。検証に問題がなければ、本開発でAIモデルを開発し、学習や性能評価を行いましょう。
データ取得・整形
まずは、検証用のAIに学習させるデータを取得します。その後、データを集計できるような状態に整え、次の工程である環境構築に備えます。
環境構築
検証用のAIを構築し、ディープランニングを活用するために必要なデータの量や質を確保できていることを確認します。このときに、AIの出力精度や出力スピードも検証し、費用対効果に見合っているかどうかも確認しましょう。
AIモデル開発
検証に問題がなければ、本開発用のAIモデルを構築します。検証用のAIと同様に要件定義を済ませ、設計やコーディングを行いましょう。また、開発手法にはウォーターフォール型とアジャイル型の2つがあるので、それぞれの特徴を踏まえ、自社に適した開発手法を選択してください。
学習
本番用のAIにデータを学習させます。検証時に浮き彫りになった課題を踏まえ、AIに必要な量と質のデータを学習させましょう。その後、AIをテスト稼働させ、性能評価のフェーズに移ります。
性能評価
AIの性能を評価し、問題があれば適宜修正を行います。性能評価で期待している効果が得られなかった場合は、データの取得・整形からやり直し、性能評価で期待している効果が得られるまで繰り返し検証しましょう。
AIの運用
AIの運用フェーズでは、開発したAIを実務に導入して運用していきます。社内システムとの連携を行い、本番運用を開始しましょう。
本番運用中は、適宜システムの点検や保守を行い、安定稼働を図ります。また、企画段階で設定した目標の達成状況をモニタリングし、必要に応じてAIをチューニングしていくことが大切です。
システム連携
開発したAIを社内システムと連携させます。スムーズに連携させるためにも、社内システムの特徴を押さえておくことが大切です。
本番運用
社内システムとAIを連携させた後は、本番運用を行っていきます。本番運用後もデータの学習やAIモデルの追加作成を行い、AIの精度向上を追求していきましょう。
なお、生成AIを使ったツール開発について知りたい方はこちらをご覧ください。
→【生成AI×開発】AI担当者が気になる生成AIツール開発の情報まとめ
AIの開発に必要な環境とは?
AI開発を行う際は、はじめに環境を整えることが大切です。ハードウェアとソフトウェアの両方において、必要な環境を整えましょう。
ハードウェアでは、演算処理を高速で行うためにも、高性能なプロセッサーとGPUを搭載したPCが必要です。AIモデルの学習やデータの出力を行う際に、大量の演算処理を行うため、いかに演算時間を短縮できるかがAIの開発効率に影響します。
また、ソフトウェアにおいては、AI開発を行うための言語とフレームワーク・ライブラリーが必要です。言語はPythonを使用するケースがほとんどで、ライブラリーはPythonを記述するために使います。ちなみに、複数の機能を搭載したライブラリーの集合体をフレームワークと呼んでいます。
おすすめのAI開発ツール8選
AI開発ツールには、プログラミングを駆使して開発を進める通常のツールとプログラミング不要のGUIツールの2種類が存在します。GUIツールであれば、ドラッグ&ドロップの直感操作でAI開発が行えるので、AI開発のコストやかかる期間を抑えたい方におすすめです。
以下で、通常のツールとGUIツールをそれぞれ4つずつ紹介していきます。
scikit-learn
機能・特徴
Pythonを使用して機械学習が行えるAI開発ツール。さまざまな機械学習のアルゴリズムをクラスとして用意している。
料金体系
無料
日本語対応
なし
サイト
https://scikit-learn.org/stable/
scikit-learnは、Pythonを使用して機械学習が行えるオープンソースAI開発ツールです。さまざまな機械学習のアルゴリズムがクラスとして用意されているので、AI開発初心者でも手軽に機械学習を試すことができます。
分類や回帰といった処理を得意としているので、スパム検出や画像認識、株価を予測するツールを開発する際におすすめのツールです。
IBM Watson
機能・特徴
基盤モデルと機械学習を活用するために設計された、AIのAPIサービス。文章の構造を理解して要約を作成してくれる「Watson Discovery」や、音声をテキストに書き起こす「Watson Speech to Text」などを提供している。
料金体系
Lite:無料
Plus:音声認識1分あたり0.01ドル
Premium以降は問い合わせWatson Discovery
Plus:月額500ドル(30日間無料)
Premium以降は問い合わせ
日本語対応
あり
サイト
https://www.ibm.com/jp-ja/watson
IBM Watsonは、基盤モデルと機械学習を活用するために設計された、AIのAPIサービスです。文章の構造を理解して要約を作成してくれる「Watson Discovery」や、音声をテキストに書き起こす「Watson Speech to Text」などを提供しています。
従業員の作業効率を向上させるツールやカスタマー対応を自動化できるツールを開発できるおすすめのツールです。
TensorFlow
機能・特徴
TensorFlowはGoogleが開発したオープンソースのAI開発ツール。多次元のデータ構造をスムーズに処理することが可能で、画像認識や音声認識システムの開発が行える。
料金体系
無料
日本語対応
あり
サイト
https://www.tensorflow.org/?hl=ja
TensorFlowはGoogleが開発したオープンソースのAI開発ツールです。多次元のデータ構造をスムーズに処理することが可能で、画像認識や音声認識システムの開発が行えます。
また、オープンソースで提供されているのでツールを利用するのに費用もかかりません。さまざまなフレームワークが用意されているため、構成要素を繋ぎ合わせるだけでもモデルを作成できます。
Chainer
機能・特徴
Chainerは、Pythonを使用して深層学習が行えるAI開発ツール。画像認識、化学・生物学、強化学習などの分野における応用をスムーズに行える。
料金体系
無料
日本語対応
あり
サイト
https://tutorials.chainer.org/ja/
Chainerは、Pythonを使用して深層学習が行えるAI開発ツールです。画像認識、化学・生物学、強化学習などの分野における応用をスムーズに行えるよう、さまざまな拡張ライブラリを提供しています。
また、推論のための便利な機能やエコシステムを備えているのも特徴。深層学習の研究開発から実用化までを一つのフレームワークで完結させられます。
Deep Analyzer
機能・特徴
マウス操作だけで簡単にAI開発が行えるGUIツール。工場の異常検知システムや自動運転の物体検知で活躍できるAIを開発できる。
料金体系
要問い合わせ
日本語対応
あり
サイト
https://deepstation.jp/deep_analyzer/
Deep Analyzerは、マウス操作だけで簡単にAI開発が行えるGUIツールです。高性能GPUを搭載したハードウェアと開発ツールがオールインワンパッケージになっています。
Deep Analyzerは、プログラミングコードを極力打ち込まない「ノーコード開発」の手法を取り入れているのが特徴。代表的なアルゴリズムである以下の6つをプリセットしています。
画像分類
画像生成
ペア画像生成
物体検出
音源分類
異常検知
上記6つのプリセットにより、工場の異常検知システムや自動運転の物体検知で活躍できるAIを開発できます。
Create ML
機能・特徴
Appleが開発したMac向けのAI開発ツール。画像識別・音声識別・テキスト識別など、さまざまな機械学習モデルから選択してAI開発が行える。
料金体系
要問い合わせ
日本語対応
あり
サイト
https://developer.apple.com/jp/machine-learning/create-ml/
Appleが開発したMac向けのAI開発ツールです。画像識別・音声識別・テキスト識別など、さまざまな機械学習モデルから選択してAI開発が行えます。
また、MacのCPUや外付けGPUを使用してAI開発を高速化できるのも特徴。iPhoneのカメラとMacのマイクによるContinuity機能を使用し、モデルをプレビューすることも可能です。
Neural Network Console
機能・特徴
SONYが開発したAI開発ツール。コーディング無しのドラッグ&ドロップで、簡単にニューラルネットワークを設計できる。
料金体系
月額料金は従量課金制CPU・GPU1時間あたり85円×実行時間+追加ワークスペース容量(200円/10GB)
日本語対応
あり
サイト
https://dl.sony.com/ja/
Neural Network Consoleは、SONYが開発したAI開発ツールです。コーディング無しのドラッグ&ドロップで、簡単にニューラルネットワークを設計できます。
また、豊富なライブラリが用意されているので、学習済みのAIモデルを活用できるのも魅力です。画像認識や画像生成を活用したシステムを手軽に開発したい方は、ぜひチェックしてみてください。
Azure Machine Learning Studio
機能・特徴
Microsoft Azureが提供しているAI開発ツール。Pythonを使用した通常のAI開発が行えるほか、ドラッグ&ドロップで視覚的かつ簡単にAI開発を行える。
料金体系
free:無料
標準:9.99ドル/月、1ドル/実行時間
日本語対応
あり
サイト
https://studio.azureml.net/
Microsoft Azureが提供しているAI開発ツールです。Pythonを使用した通常のAI開発が行えるほか、ドラッグ&ドロップで視覚的かつ簡単にAIを開発することもできます。
さまざまなアルゴリズムに対応しているので、画像認識・自然言語処理・音声認識など、多様なシステムを開発できるのが魅力。無料版も用意されているので、まずは気軽にお試しください。
なお、Azureの生成AI専用環境について知りたい方はこちらをご覧ください。
→Azure OpenAI Serviceとは?メリット、料金体系、モデル、セキュリティについて解説
AI開発の環境を整えて業務を効率化しよう
AI開発のフローを再度まとめました。
AI開発の企画
AI開発の検証・本開発
AIの運用
AI開発は、スタートからゴールまでのフローを明確にすることが大切です。自社の課題を洗い出し、AIの活用方法を決めておきます。いざ、AI開発を進める際は、テストモデルで検証を行い、問題がないことを確認してから本開発に移りましょう。
AIモデルの完成後は、本格的に運用を開始し、定期的にチューニングを行います。AIの精度向上を追求し、PDCAサイクルを回しながら運用することが大切です。
また、AI開発に必要な環境は、主に以下の2種類です。
ハードウェア:高性能プロセッサーとGPUを搭載したPC
ソフトウェア:AI開発を行うための言語とフレームワーク・ライブラリー
AIモデルの学習やデータの出力では、大量の演算処理を行うため、いかに演算時間を短縮できるかがAIの開発効率に影響します。
また、AI開発の言語は、Pythonを使用するケースがほとんどであるため、Pythonを記述できるライブラリーを用意しましょう。
そして、AI開発を行う際は、視覚的な操作で簡単に開発を進められるGUIツールの活用がおすすめです。本記事で紹介したおすすめツールを参考に、用途に応じたツールを導入してみてください。