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ディープフェイクとは?AIを使うなら知っておきたい悪用事例と対策を徹底解説

生成AIの進歩が目覚ましいですが、それと合わせて「ディープフェイク」という言葉がよく聞かれるようになりました。ディープフェイクは便利で生活を豊かにしてくれる技術ですが、使い方を間違えてしまうと大きな被害や損害が出てしまう可能性もあります。

アプリやツールを使えば誰でも簡単に使えてしまう分、自分自身が被害者や加害者になってしまう可能性も出てきます。ディープフェイクについての知識を身につけ、上手に活用できるようにしましょう。

ディープフェイクとは

ディープフェイクの基本について説明します。「ディープフェイク」について理解するためには、意味や語源・使われている技術を知っておくことも重要です。まずは基本的な知識を身につけ、理解を深めましょう。

ディープフェイクの意味と語源

ディープフェイク(Deepfake)は、人工知能(AI)技術を使用して実在する人物の顔や声を非常にリアルに模倣した偽のビデオやオーディオクリップを作成する技術です。ディープフェイクの語源は、「Deep Learning(深層学習)」と「Fake(偽物)」という2つの言葉を組み合わせた造語です。

ディープフェイク技術は娯楽や芸術の分野でポジティブな用途もありますが、偽ニュースの拡散・政治的な操作・詐欺・プライバシーの侵害など、様々な悪用の可能性も指摘されています。特に公共の人物の言動を捏造したり、個人の同意なくプライベートな映像を作成するなど、倫理的・法的な問題を引き起こすケースが増えています。

ディープフェイクに用いられる技術

ディープフェイクには、GAN(Generative Adversarial Network、生成敵対ネットワーク)と呼ばれる技術が使われています。GANは、2つのAIを競わせることで、非常にリアルな画像やビデオを生成する技術です。

一方のAI(生成するAI)は本物そっくりのデータを作り出そうとし、もう一方のAI(監視するAI)はそのデータが本物か偽物かを見分けようとします。この競争を通じて、生成する側のAIは、次第に本物と見分けがつかないほど高品質な偽物を作り出すようになります。

ディープフェイクの良い活用法3つ

実生活の場面で、ディープフェイクはどのように使われているのでしょうか?生成AIやディープフェイクの技術は、上手に活用すれば人々の暮らしをより豊かなものに変えてくれます。具体的な事例を見ていきましょう。

ニュース番組・映画作成

ディープフェイク技術は、ニュース番組や映画作成において活用が期待されています。リアルなCGキャラクターを生成したり、故人の映像を生成するなど、創造的な用途で使用可能です。

たとえば、映画で過去の有名人をリアルに再現したり、ニュースキャスターが多言語で話す様子を自然に見せることもできるでしょう。ディープフェイクの技術により、視覚的なリアリズムを追求し、ユーザーに新しい体験を提供することが可能になると考えられます。

多言語への吹き替え

ディープフェイク技術を利用することで、多言語への吹き替えがより自然に行えます。映像内の人物が実際に異なる言語を話しているかのように口の動きを調整できます。視聴者はリップシンク(口の動きとセリフ・歌などの音声が、同期している状態)のズレを感じることなく、映画や番組を楽しむことができるでしょう。

吹き替えによる言語の壁をなくすことができれば、世界中のさまざまな言語話者に向けてコンテンツを発信できます。

バーチャル試着

ディープフェイク技術は、洋服選びや試着の場面でも活躍が期待されています。バーチャル試着ができるようになれば、消費者はオンラインで衣服やアクセサリーを自由に試着できるような世界になるでしょう。ユーザーの写真や動画にリアルタイムで商品を合成し、実際に着用しているかのようなビジュアルを提供できます。

これにより、オンラインショッピング時の不確実性を減らし、より満足度の高い購入体験を実現します。バーチャル試着は、ファッション業界においても重要な技術になってきそうですね。

なお、バーチャル試着について詳しく知りたい方は、下記の記事を合わせてご確認ください。
【Outfit Anyone】「服を着る」という概念が大きく変わる!誰でも好きな服を着れる最新AIの使い方〜実践まで

ディープフェイクの悪い活用法3つ

ディープフェイクは上手に活用すれば便利なシステムですが、悪用すれば大きな被害を発生させてしまう可能性もあります。すでにディープフェイクが悪用された事例も発生しています。悪い活用法も把握し、被害を受けないよう気をつけましょう。

フェイクニュース

まず懸念されるのが、ディープフェイク技術によって作成されたフェイクニュースです。フェイクニュースの作成に悪用されると、公共の人物が実際には言っていない発言や行動をリアルに見せかけることが可能になります。これにより誤情報が広まり、多くの人々に影響を与える可能性も出てくるでしょう。

フェイクニュースは社会的な混乱を引き起こし人々の信頼や政治的安定性を損なうため、ディープフェイクの技術的な進歩とともに、これに対する警戒と対策が急務とされています。

フェイクポルノ

フェイクポルノも重大な問題の一つです。ディープフェイク技術を使って、実在する人物の顔を無断でアダルトコンテンツに合成し、インターネット上に拡散する行為がこれにあたります。

このようなコンテンツは、対象者の名誉を傷つけ、精神的な苦痛を引き起こす行為です。また社会的な評価を低下させる可能性さえあります。公共の人物や一般人を問わず個人のプライバシー権と尊厳を侵害する深刻な犯罪行為とされ、法的な対策が急務と言えるでしょう。

なりすまし・詐欺

ディープフェイク技術の悪用によって、なりすましや詐欺が発生する可能性もあります。攻撃者はディープフェイクを使用して信頼されている人物になりすまし、本物のようなビデオや音声を作成。これら偽のメッセージは、個人情報の窃取、金銭の詐取、さらには政治的な操作を目的として使用されることがあります。

見分けがつかないほど精巧に作られたコンテンツに騙され、重大な損害が発生する可能性もあります。このような詐欺やなりすましは、個人のセキュリティだけでなく、社会全体の信頼を損なうため警戒が必要です。

ディープフェイクの検知・法整備の現状

ディープフェイクの検知や法整備に関しては、まだまだ追いついていないのが現状です。ディープフェイクを検出する技術に関しては各国で研究が進んでいます。たとえば、DARPA(米国国防高等研究計画局)ではディープフェイク検出技術のプロジェクトに資金などの支援を行い、2018年11月の時点で6,800万ドルの資金を投入しています。

しかし日本においては、ディープフェイク自体を規制する法律はないため、判断が難しいところです。逮捕事例においても、被害者側から「名誉毀損」と「著作権侵害」の罪を告訴後に容疑者2人が摘発されていることからも、まだまだ法整備が追いついていないことを物語っています。

参考記事:ディープフェイクの光と闇──巧妙化で求められる対応とは?

ディープフェイクへの対策

悪用される恐れもあるディープフェイクですが、どのように対策すれば良いのでしょうか?ディープフェイクへの対策は、個人での取り組みだけでなく社会的・組織的な対策が不可欠です。代表的な2つの対策を解説します。

ブロックチェーン

まずディープフェイク対策として有効と考えられるのが、ブロックチェーンです。ブロックチェーン技術は、デジタルコンテンツの作成と動きの履歴を、不変の記録として残します。これにより、画像や動画が元の形で作成された時点からの変更履歴を追跡でき、真正性を証明することが可能になります。

ディープフェイクのような偽造コンテンツを識別しやすくなり、信頼できる情報源からのコンテンツであることを保証する手段となります。

C2PA

C2PAは、オンラインで「誤解を招く情報」のまん延に対処する技術標準化団体です。Adobe・BBC・Intel・Microsoft・ソニー・Googleなどが参画しています。

消費者やプラットフォームは、コンテンツが信頼できる情報源から来ているかを判断しやすくなり、ディープフェイクによる偽情報の拡散を防ぐ可能性が高まると期待されています。

ディープフェイクを悪用した事例3つ

世界ではすでに、ディープフェイクを悪用する事件も出てきています。「オレオレ詐欺」のように事前に知っておくことで、自分の被害を防げる可能性もあるので、具体的な事例を押さえておきましょう。ここでは3つの事例をご紹介します。

大統領がスピーチする動画を作成

2022年3月に出回ったディープフェイクでは、ウクライナのゼレンスキー大統領になりすました人物が、ロシア軍への抵抗をやめるよう国民に呼びかける動画が出回りました。ディープフェイクの技術を使えば影響力のある人物になりすまし、政治的な発言をさせることで混乱を作り出すこともできてしまいます。

参考記事:投降呼びかけるゼレンスキー氏の偽動画 米メタが削除

企業重役が話す音声を作成

2019年にイギリスでは、企業のCEOの声をディープフェイクで作成し、22万ユーロ(約2600万円)を騙し取られる事件が発生しました。電話での指示は、AIによる音声技術を利用してCEOになりすました詐欺師からのものだったと考えられています。BBCは、他にも同様の事件が確認されていると報じています。

参考記事:CEOになりすましたディープフェイクの音声で約2600万円の詐欺被害か

別人が面接する映像を作成

FBI(アメリカ連邦捜査局)は、就職のオンライン面接で別人になりすますなど、ディープフェイク技術の悪用が増えていると発表しています。面接の最中に他人の映像・画像・音声などを自身に重ね合わせているという申し立てが増えているとのこと。著名人だけでなく、一般の人の情報も悪用される恐れが懸念されています。

参考記事:IT関連の採用面接でディープフェイク使用が増加…FBIが警告

なお、生成AIを活用して作られた人間のようにリアルなキャラクター「バーチャルヒューマン」についても知りたい方は、こちらの記事をご覧ください。
生成AIを活用したバーチャルヒューマンとは?用いられている技術や導入事例を解説

ディープフェイクが作れるツール3選

現在ではアプリやオンラインツールを活用して、簡単にディープフェイクを作成できます。難しい知識やスキルは必要なく、誰でも使うことができるので、興味のあるツールがあればぜひ試してみてください。ただし、悪用はしないようにご注意ください。

xpression camera

xpression camera(エクスプレッションカメラ)は、Zoom会議などで自分の外見をAIで置き換えられるツールです。自分自身の外見をAI(人工知能)で置き換えて、表情や体の動きに応じてリアルタイムにコミュニケーションができます。ZoomやTeams、YouTubeなどあらゆるビデオアプリ上で動作し、好きな画像を一枚だけで、その人になりきることができます。

参考記事:Zoom会議などで自分の外見をAIで置き換える「xpression camera」を正式リリース

DeepSwap

Deepswapは、顔交換ビデオ・写真・gifを生成するオンラインアプリです。現在では1.5億人以上のユーザーがfaceswapを作成しています。Deepswapでは、最先端のAI faceswap技術を提供。高品質で理想的な顔を作成することができ、動画制作をよりクリエイティブなものに変えてくれます。

参考記事:Deepswap-顔交換オンラインのFaceswapメーカー

FaceApp

FaceApp(フェイスアップ)は、 ロシアのWireless Labが開発したモバイルアプリケーションです。顔の印象・メイク・笑顔・髪の色を追加するエディターオプションなど、アップロードされた写真を編集する複数のオプションがあります。手軽に使えて広がりを見せますが、それと同時にディープフェイクの危険性を訴える声も聞かれます。

参考記事:FaceApp(Wikipedia)

ディープフェイクについて理解し、上手に活用しよう

ディープフェイクについて解説しました。ディープフェイクは、人工知能(AI)技術を使用して、実在する人物の顔や声を非常にリアルに模倣した偽のビデオやオーディオクリップを作成する技術です。この技術を活用することで、

  • ニュース番組・映画作成

  • 多言語への吹き替え

  • バーチャル試着

など、様々なメリットを得ることができます。

一方でディープフェイク技術は悪用されやすく、それによる実害も発生しています。ディープフェイクについてしっかりと理解し、自分の身を守りながら上手に活用しましょう。


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