ギターを買うとき、スペック表から見える情報・見えない情報
この記事は、わたくしメルが文章を書く練習がてらに書いている随想的文章です。読みにくいことがあると思いますがご了承ください。
語られすぎて手垢がついているようなテーマだが、書いてみよう。
■例えば靴を買うとき、何を参考にするか。
ブランド。デザイン。素材などのスペック。フィット性。耐久性。使用者のレビュー。他にもあるだろうか。
さて、これらのうちネットの写真や動画から掴める情報はどれだけだろう。
どんなに上質な素材をハイレベルな技術で組み上げた一品でも、足に合わなければ正しい商品選びが出来たとは言いにくいだろう。そしてそれこそが2020年現在、最もネット(文字/画像/動画)から得にくい情報だ。
ギターに置き換えてみよう。
■この図から何を読み取れるか。
ツイッターにこんな感じの流れてきましたよね。
同じような見た目にもかかわらず、値段に天と地の差がある。
この差を門外漢の友人に問われ、ギターに詳しいあなたはどう説明しよう。
メイドインUSAだから。有名ブランドだから。高いパーツを使用しているから。利益率に関して企業ごとに方針がある。
全て正しいと思う。一方でそれだけでこの値段の差は正当化できるのだろうか。以下のように考えてみよう。
■カタログスペック以外を読む。
もちろん加工精度が違うということは容易に想像できる。フレット処理やジョイント部の隙間などは如実に価格帯と品質が比例している。しかし。30万円台から上はそこまで大きな差がないとも言える。
他には、例えば今回木材の管理方法を挙げてみよう。
ハイエンド代表格のSuhrをご存知だろうか。
このブランドは木材の乾燥に非常に膨大な時間を掛けるようだ。まず自然環境の中でゆっくりと育った木材を選ぶ。ゆっくりと育った木は年輪の間隔が狭く高密度であるようだ。乾燥のさせ方においては自然乾燥と強制乾燥を組み合わせて気を遣うらしい。そして個体差や特性を経験豊富な職人が吟味する。そのように仕入れてから長い時間を経て、初めて商品の一部に加工される。
別にSuhrでなくとも品質管理を厳格に行うブランドでは珍しくないのではないだろうか。色ムラのある木材を除外する話も見たことがある。
一方で入門レンジのギターを売るブランドは日向で成長を促成された木を大量消費する傾向にある。
以上のような扱いの違いを以て上記の画像のように「同じ種類の木材」としてカタログに掲載されるのだ。これを見たとき、僕たちは安易に高額なギターを批判してはいけない。
(もちろん材にかけたコストは鳴りと言われる要素以外でも「狂いの少なさ」となって楽器の品質に寄与する。すなわち弦高を下げても鳴りを損ねない等の「弾きやすい」楽器の決定的な要素だ。Suhrを弾きにくいと批判する人は少ないだろう。)
■デジタル製品とは違う、目に見えない差
冒頭の靴の例に戻ってみよう。
全く同列には語れないが、スペック上とても豪華でデザインも格好良いが、インソールが1週間で剥げる靴。履いていて1時間で踵が痛くなる靴。これらの要素は中々ネット上では(または実物を試したとしても)気づきにくいポイントだ。3000円の靴なら勉強代として諦めるけど15000円だときついっすよね。
ギターにおいても、スペックだけを追い求めるとこのような状況に遭遇しやすい。僕は特にマスプロダクション(量産)ではないハンドメイドのギターをを好んで探しているが、試奏する機会がないまま個人輸入すると、しばしば美しい希少材を使った、手に合わないギターに出会うのだ。
国内の楽器屋に吊るされている楽器の大半はクオリティコントロールがなされているだろうから、著しく低品質なものには当たらないだろう。一方購入前に手に取れるほど数が多くないギターがほしいとき、結局僕たちは色々な要素を複合的に考え、時に博打に出るしかないのだろう。それも人生のスパイスとか言って笑い話にするしかない。
■人件費+材料費≒価格
余談だが、海外の個人工房というかプライベート製作された楽器にべらぼうな高値で売りに出されている状況を時たま目にする。そのルシアーは"○○ドルのエキゾチックウッド、最高のハードウェア、ビルドに○○時間を費やしたマスターピース(傑作)だ。"などと書かれている。しかし写真でみて解るほどいびつなカーブに隙間が目立つ木材のラミネートなど、悲しいまでに粗末な作りであることがある。しかし彼にとってその価格は労働量、労働時間からすれば妥当なのだろう。みながハッピーになるかは別として。
KieselのようにCNCルーター+自社販売のウェブシステム構築など合理的な体制を作ることがビジネスとしては正解の1つなのだろう。彼らのギターはさほど多く触れたことはないが、質に対してコストパフォーマンスが驚異的に優れている。そしてカリフォルニアウッズを始めとする、取引のある木材供給業者も優良な会社が並んでいるのだろう、と予想してみる。
趣味のマネタイズってムズいっすね。と思います。
僕は学生の頃、ギターのカタログを楽器屋からよく持ち帰って眺めていた。フェルナンデスやESPなどはスペックと値段が比例していたが、フェンダーとギブソンは同じようなスペックなのに値段がピンキリで、何故だろうと不思議に思っていた。
今回はカタログに書かれている情報ってギターのほんの一部ですよね、というお話でした。このような文体で気が向いたときに書いて見ようと思いますので、お暇なときにお読んでいただけますと、とても幸いです。