「Great Books of the Western World」プロジェクトから学ぶ「考え方」
全世界的に大学院に進む人数は増えている
現在、全世界的に大学院に進学する道を選択する人々は、増加していると考えられます。下記図からも読み取れる、研究者数の推移から推論できると思います。
今後世界がどう変わるかわからない。
人生100年時代と言われています。それに伴い転職平均年齢は40代が普通。40代でまた新たな職につき、人生を歩んでいくことが当たり前になりました。
しかも、技術革新の速度は速すぎて、大学院に所属している著者本人も不安になることが結構な頻度であります。
一つの例として、大規模言語モデルの出現、そしてその大規模言語モデルからの創発能力の発見・・・。
単純な1機能を担っていたAI全分野を統括する、「AGI」の実現可能性が高まっています。
そして、ごく最近、超伝導体のニュースが世界中を騒がせています。本当に世の中がどう変わっていくのか、ますます予測が難しい状況となっています。
恐らく、こういった状況は改めて「大学院」に行くといった選択肢を今後加速する要因になると考えております。つまり、人々は人生という長くて険しい航海の羅針盤をもとめて、大学院に改めて進学するといった選択を、今後もっとするのでは?と考えております。
本日は、下記記事でも少し触れた「羅針盤」の見つけ方を「シカゴ大学」の特徴から、皆さんにお伝えしたいと思います。
シカゴ大学、実はFラン大学であった。
知る人ぞ知るシカゴ大学。シカゴ大学は1890年に設立され、設立時には、
Fラン大学でした。
現在はどうでしょうか?大部分の院生達は知っていると思いますが、あえて説明したいと思います。
2023年基準、シカゴ大学はUS Newsによる全米大学ランキングでは第6位、ノーベル賞受賞者を100名輩出しており世界で最も評価が高い大学の一つです。経済学で有名で、Chicago Boothと呼ばれるビジネススクールは世界トップレベルです。マッキンゼー・アンド・カンパニーやボストンコンサルティンググループなどの有名コンサルティング企業、ゴールドマンサックスの設立者を輩出しています。
Fランから世界超一流大学になった秘訣とは
アメリカの大富豪ロックフェラーがシカゴ大学を設立しました。その後1929年までの約40年間、シカゴ大学はアメリカで単に平凡な三流大学に過ぎませんでした。
その後、シカゴ大学は一躍世界的な大学の仲間入りをする驚くべき出来事が起こります。
1929年、シカゴ大学の第5代総長として就任した法学者出身のロバート・ハッチンスは、彼の渾身の作品である「シカゴ・プラン」を実行します。「シカゴ・プラン」とは、「哲学古典をはじめとする世界の偉大な古典100冊を暗記するぐらい読まない学生は卒業しない」という古典哲学読書教育プログラムです。ハッチンスは、教養教育が選択の領域ではなく、民主市民としての義務だと考えました。大学内に大きな反発があったものの、彼は最後まで目標を達成しました。
ハッチンス総長は、学生にただ本を読むだけでなく、以下の3つの課題を与えたと言われています。
モデルを決めろ:自分に最も適したモデルを1人選べ
永遠不変の価値を見つけろ:人生のモットーとなる価値を見つけよ
見つけた価値に対して夢とビジョンを持て
彼は、学生が人生を生きるうえで必要な人生の指針を立てることを強調しました。つまり、自分のロールモデルの選定、不変する価値の発見、夢とビジョンの開発の必要性を勧めました。また、「ジョン・スチュアート・ミル」式の読書法も次の4段階を進めます。
まず、哲学古典の著者について簡単に説明した本を読みます。
哲学古典を通読します。理解がうまくいかなくても、とにかく読みます。音読すれば、さらに良いです。
精読を行います。理解ができない部分に出会った場合、ある程度の理解ができるまで何度も繰り返し読みます。特に理解がうまくいかない部分は、大きな声で音読することを推奨します。
ノートに重要な文章を中心に書き写しながら通読します。書き写すことは、哲学古典読書の核心と言えます。書き写すことで、哲学古典の著者の思考力を少しでも自分のものにできるからです。そして、書き写すことで、何度も精読したときに理解できなかった節が一瞬で理解できることがあります。
シカゴ大学の学生たちは、「シカゴ・プラン」が発表されてから卒業までの間に、100冊の古典哲学を読む必要がありました。その過程で、シカゴ大学の学生たちの脳には革命的な変化が始まりました。その結果は、驚くほどのものでした。シカゴ・プランが始まった1929年から2000年まで、卒業生が受賞したノーベル賞だけで73個に達しました。シカゴ大学のノーベル賞伝説は、ハッチンス総長の就任から準備されていたのです。
「シカゴ・プラン」は現代まで続いています。シカゴ大学の成功に刺激を受けたシカゴ州政府は、子供から大人まで、それぞれのレベルに合わせた哲学古典を読み議論する「グレートブックス」という財団を設立しました。財団の設立目的は、子供と若者を哲学古典を通じて思慮深い人にし、大人たちも遅ればせながら深い考えのある人にしようという目的のもとに設立されました。
「シカゴ・プラン」のリストの一部を紹介します。
プラトンのソクラテスの弁明・クリトン、
アリストテレスの政治学、
新約のマタイによる福音書、
マキャヴェリの君主論、
シェイクスピアのマクベス、
ミルトンの出版の自由、
アダム・スミスの国富論、
トクビルのアメリカの民主主義、
マルクス・エンゲルスの共産党宣言、
トルストイのイワン・イリイチの死、
ホメロスのオデュッセイア、
デカルトの方法、
ホブズのリヴァイアサン、
パスカルのパンセ、
ミルの自由論、
カントの永遠の平和を求めて、
旧約のヨブ記、
プラトンの饗宴、
カルヴァンのキリスト教強制、
ロックの市民政府論、
フロイトの精神分析の起源と発展、
孔子の論語、
アウレリウスの瞑想録、
シェイクスピアのテンペスト、
ロックの人間理解論、
トマス・アクィナスの神学大全、
ダンテの神曲、
カントのプロレゴメナ、
スピノザのエチカ、
セルバンテスのドン・キホーテ、ヘーゲルの歴史哲学、
マハーバーラタのバガヴァッド・ギーター、
ライプニッツの形而上学、
マルクスの資本論
などがあります。
他のリストはこちらを参照してください。
人生の羅針盤を見つける「術」を院生に
上記、シカゴプランのリストの本は「名著」であることはまず、間違いありません。
しかし、何故「今」も読まれているかに注目すべきだと思います。これは、あくまでも私見に過ぎませんが「人類の考え方」は時代が100年単位で変わろうが、あまり変わらないからだと思います。
その証拠に、アダム・スミスの道徳感情論と今後一万円札のモデルになる渋沢栄一の論語と算盤は、類似した観点から物事を語り、今なお、読まれ続けている名著です。
即ち「人間の本質」を比較的見つけやすいのが上記「名著」だと考えております。
こういった背景からハッチンス総長の課題の中で、注目すべきは以下だと考えております。
人間の本質をよく把握し、それを最新トレンドの「論文」と組み合わせることで、素晴らしい研究は勿論、自分なりの人生を怯むことなく歩んでいけるのではないでしょうか。
私も、上記名著から「いくつ」かの羅針盤を発見し、「今」を歩み続けております。
皆さんの人生の羅針盤を発見できる事をここらから祈っております。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?