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【中国トレンド】オーディオブックアプリについて知る

要点:
①中国の若い世代にオーディオブックアプリが流行、市場規模は約2700億円で日本の40倍
②提供コンテンツは書籍の枠にとどまらず、人気アプリ喜馬拉雅(Ximalaya)は、豊富なコンテンツで「オーディオ・エンターテインメント」を実現
③中国オーディオブックアプリのさらなる飛躍のカギはUGC(User Generated Contents)


  中国のオーディオブックアプリが好調だ。調査会社iResearch(艾瑞咨詢)の報告によれば、2019年のオンラインオーディオブックの市場規模は175.8億元(約2700億円)となっている。これは、日本の市場の約40倍にあたる。両市場を単純比較することはできないが、それでも中国のオーディオブック市場の大きさが十分にわかる。同社の報告では、アプリのユーザーの半数以上は90後(1990年以降に生まれた人を指す)であり、都市に住む若い世代を中心に市場が構成されている。

  一昨年、筆者が中国の浙江大学に一年間留学していた時、WeChatのタイムライン(朋友圏)上でよく見かける投稿があった。それは、オーディオブックアプリを通した読書報告だった。アプリがSNSと連携しており、読んでいる本やおすすめのコンテンツをSNSのフォロワーにシェアできる。当時は「さすが中国の学生は勉強熱心だな」くらいにしか思っていなかったが、今思えば、オーディオブックアプリが都市部の若い世代に浸透していることがうかがえるエピソードだ。

では、オーディオブックが流行する理由はどこにあるのか。

  まず、AIやIoTの活用が進む中で、中国市場にスマートスピーカーが徐々に普及してきたことが挙げられる。アリババやシャオミー、バイドゥ等、大手ハイテク企業がスマート家電市場の成長を見込み、スマートスピーカーに注力したことは、オーディオブック側からすれば強力な援護射撃だといえる。

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アリババグループのスマートスピーカー「天猫精霊」は人気商品のひとつ。

「ニーハオ天猫」または「天猫精霊」と呼びかけ
オーディオブックを流すようにお願いすると
自動的に再生してくれる。

  さらに、現代社会の生活リズムに追われる人々の、スキマ時間を活用したいというニーズに応えられたことも大きいだろう。通勤・通学中や就寝前などのスキマ時間に、気軽に聞くことができるオーディオブックは、有意義に時間を使いたい現代人にぴったりだ。加えて、中国でも健康志向の人が増えている今、オーディオブックを聞くのは、デスクワークで疲れた目を休めるためにもいい選択肢だ。


  このように、順調にユーザーを獲得していったオーディオブックアプリだが、流行の理由は、アプリ自体の魅力にもありそうだ。業界シェアNo.1を誇る喜馬拉雅(Ximalaya)を例にとって、人気の秘訣を紹介していこうと思う。

  喜馬拉雅は、2013年に配信が始まった音声コンテンツのプラットフォームで、「中国で6億以上のダウンロード数、月間1億2,000万以上のアクティブユーザー数を誇る巨大音声プラットフォーム」である(シマラヤジャパンHPより)。その業績は国内業界トップであり、海外にも積極的に展開。日本でも2017年からサービスを開始している。

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  では、喜馬拉雅の強みとは何だろうか。筆者が思うに、それはズバリ、コンテンツの豊富さだ。といっても、様々な書籍が収録されているというだけの意味ではない。例えば音楽、ラジオドラマ、語学学習教材、相声(中国の漫才)に加え、様々なテーマに沿ったセミナーやトークショーまで、本当に何でもある。喜馬拉雅をはじめ、中国オーディオブックアプリのサービスは、オーディオ「ブック」の枠に拘らない、言わばオーディオ「エンターテインメント」の形態をとっているのだ。

  オーディオ・エンターテインメントといえば、Podcastのようなサービスを想像する方も多いと思う。実際、喜馬拉雅を使ってみると、ポッドキャストのようなコンテンツも充実していることが分かる。「喜馬拉雅」型の中国オーディオブックアプリは、オーディオブックとポッドキャストを足して、さらに特徴的な音声コンテンツ(セミナー、相声など)を追加したものだと理解することができそうだ。

  オーディオブックと比較したとき、ポッドキャストの魅力の一つは、個性あふれるUGCの充実だろう。UGCとは、User Generated Contentsの略で、ユーザーが作り出すコンテンツのことだ。そして今、このUGCが、中国オーディオブック市場の更なる発展のための重要な要素として注目されている。

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筆者が実際に喜馬拉雅でよく聞いているUGC。
クリエイターはDJ小直という男性で
リスナーの生活に寄り添うような優しい内容に癒される。

  インターネットを通じて、人と人とが簡単につながれる時代。あらゆるネット上のサービスにとって、UGC方式でユーザーをうまく巻き込むことの大切さは明らかだ。(YouTubeやInstagramの例に言及するまでもないだろう)現に、喜馬拉雅や業界二位の荔枝FMはUGCコンテンツに力を入れ始めている。例えば荔枝FMは、「音声クリエイター養成学院」を設立し、UGCクリエイターを自ら育てにかかっている。流行に敏感な都市部の若者層がユーザーの基盤であるため、インフルエンサー的人気を持つクリエイターがいることはアプリにとって大きな強みになると考えられる。

  ただ「聴く読書」を体験するだけでなく、幅広いコンテンツで楽しむことができる中国のオーディオブックアプリ。今後、UGCコンテンツの拡充で、若い世代を中心に、さらに市場を拡大することはできるのだろうか。ユーチューバーやインスタグラマーという言葉は、日本でもだいぶ定着してきたような気がするが、最近では中国発のTikTokが流行し、ティックトッカーという単語も聞くようになった。音声メディアはこれに続けるか。そして、勢いを増す中国のオーディオブックアプリがその火付け役となるのか。引き続き要注目である。

文責:木本玲那



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