最も不幸な転職類型に出会った
ひと月ほど前、同僚が、理由もなく急遽今日の午後は休みますと言った。体調はよさそうである。休ませてくださいとかではなく、一方的な通告。そんなことが翌週にもあった。ははあ、これはもしやと思ったらやはり退職するのだという。あの不自然な休み方は、転職面接を受けていたのだろう。
彼女に聞いたところによると、決め手は先方の部長からの「ぜひ来てほしい」という熱心な誘いだったとのこと。それは選考担当者なら誰にでも言うセリフなので真に受けないでほしいが、目がキラキラしているので何を言ってもダメだ。彼女の口から語られる「新設部署」「挑戦」といったキーワードからは、期待感があふれてしまっている。大きな期待が先行して入社した人は、入社後にFacebookで「毎日が刺激的で充実している」旨の近況報告を行ったのち、次第に投稿が減り、Twitterで毒を吐くようになり、2年後くらいに退社するパターンである。
さらに話を聞くと、年収も相当あがるようである。一応儀礼的に引き留めてはみたのだが、「転職先と同じぐらいの年俸払ってくれるならいいですよw」ときた。
おそらく新しい会社は彼女を過大評価している。彼女のカタログスペック、つまり学歴や職歴はすばらしい。しかし積んでいるOSが終わっているので、仕事はできない。スケジューリングや段取りといったものが組み立てられないし、話し手の意図を汲まず(本人は汲めていると思っている)、あさっての方向のアウトプットを自信満々に出してしまう。そんなわけで会社からの業務評価は低く、そのことへの不満も公言していたが、同僚である自分からすると妥当な評価だし、そういうことを公言してしまうことが問題であろうと思っていた。むしろ会社はなんとか活躍の場を与えようとしているとさえ自分は思っていた。
面接の場では、自信満々にピントのずれた回答をしてくるのは、面接の緊張からくるものと勝手に補正してくれるし、技術寄りの職種であれば少しコミュニケーションが苦手なのは「あるある」的な受け止めで済まされてしまうのだろう。
採用のミスマッチにもいろいろな類型があると思うが、「相互の過大評価」が最もタチが悪い。会社にクチコミサイトがあるように、求職者個人に対するクチコミも聞ければいいのになあと思った。そういう意味ではリファラル採用が最強だろう。