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新幹線ルーティーン

中高生のころ、地元を離れて寮生活をしていた私は実家に帰るのにしばしば新幹線を利用していた。実家までは特急と新幹線を使うと3時間はかかってしまうので飛行機で帰る方がもしかするとはやかったのかもしれない。しかし、私はその新幹線で帰省する時間が大好きだった

帰省当日の朝、私は朝早く寮を出る。朝の澄んだ空気の中、前の日の晩に荷造りを済ませている私は朝食を食べずに寮を出る。私にとって帰省の時間は非日常を味わう時間でもあるので、寮の食堂で朝ごはんを食べるなどというTHE日常は排除するのである。そして寮から駅までの道のりだが、キャリーケースを転がしながら歩くことにしている。駅までは歩けば20分ほどで、正直時間はかかってしまう。しかし、私のいた街は街の景観が美しく、その街並みを、朝に歩くということがとても楽しかった。朝にしか見えない世界がある。静けさの中に響く鳥のさえずり、前日に降った雨による澄んだ空気。そんな世界を独り占めしている感覚が私を非日常へといざなってくれる。

駅に到着し、切符を買ってからがお楽しみの始まりである。家族へのお土産の購入もそこそこに、コンビニへと歩みを進める。新幹線の中で食べる朝ごはんを買うのだ!まずは食べ物。私がよく買っていたのはミックスサンドとゆで卵である。ミックスサンドは主食として、キーとなるのはゆで卵なのだが、これについては後述したい。そして飲み物は中高生らしく(?)、モンスターエナジーとお茶である。

そして新幹線に乗り込む。席に着くと、私はガキなのですぐに自席の机を手前に出す。電車に乗っていて自分の机があるというのはとてもテンションが上がるのだ。そしてスマホを取り出し、イヤホンをして前日にダウンロードしていたアニメやドラマを見る。この際、私は新幹線の中にピークを持ってくるため、物語のラスト三話を残してこの日を迎えている。窓からの日の光を浴びながら、先ほど買ったミックスサンドを食べ、お茶を飲みながら、朝からアニメ・ドラマのクライマックスを見ている。もはや一句詠めそうな勢いである。そしてついにゆで卵を食べる。ここで重要なのは殻を割るために卵をたたきつける場所である。普段皆さんはどこで卵を割るだろうか。机の角、もしくは自分の膝という人もいるかもしれない。ここで私が選択するのは窓際の出っ張っているところである。

新幹線

皆さん一度試してほしいのだがここで割ったときのこなれてる感は異常である。ここで割ることでその帰省はワンランク上の帰省になる。そして食事が終わるとモンスターエナジーをプシュコと開ける。なぜモンスターエナジーなのか。1つは寝ないためである。せっかくの帰省タイムを寝てて覚えてませんなんてことには絶対にできない。そしてもう一つは、大人が新幹線で飲む缶ビールがあまりにもおいしそうだからである。出張帰りのサラリーマンが新幹線の自由席で缶ビールにピーナッツでプチ飲みをしている姿を皆さんも見たことがあるだろう。あの時のビールはきっと日本シリーズ優勝した後のシャンパンファイトくらい美味い。その雰囲気を味わいたいヤバい中高生の私はモンスターエナジーを飲むことでそのあこがれを昇華するのだった。

以上がかつての私の新幹線ルーティーンである。今はここまではいかないがやはり帰省の新幹線は格別で、わくわくしながら新幹線に乗っている。そういえば父親に聞いた話だと、むかしは新幹線で読んだ雑誌や新聞は自分の席に置いていくということがよくあったそうだ。それは次にその席に座った人に読んでもいいよということで置いていくらしく、まるで新幹線の中で手紙が回されているようで、私のとても好きなエピソードである。そう考えると大人にとっても新幹線は特別な場所なのかもしれない。

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