2024 秋便り(その3)

秋雨が続いて洗濯をするタイミングがない。乾燥機はあるけど縮むしなあ。
涼しい時は、というか夏も皮膚が弱いのでロンTを着ているのだが、今年の秋冬はシャツでも着ようかな。

いよいよ肺がんでの入院当日、前日の疲労をひきづったまま病院へ。日曜日入院開始だったので裏口の受付で入院手続き。父親がここに入院するときに母親に頼まれて保証人の書類を書いたのを思い出す。意外とあっさりと入院できて妻と8階西病棟へ。
ナースステーションに行き、看護師さんと話すとまずはコロナ検査とのこと。これでダメだと帰宅らしい。処置室に連れて行かれ鼻にクリクリされてじっと待つ。一番安い個室が空いてるけどどうするかと聞かれOKを出す。
検査結果は陰性。腕にバーコードの入ったリストバンドをはめられ、看護師さんに部屋に通してもらう。着替えやらタオルやらいっぱい持ってきてしまったが、明日の手術後はICUに一泊予定なので持ち込めるものが限られているため選別して最低限のものだけにして後は持って帰って欲しいと言われる。スマホや貴重品はICUに入る人の専用のロッカーへ入れるらしい。
ICUの看護師、麻酔科の人など部屋を次から次へと訪問して来て明日の説明を色々と聞く。なんか疲れたなあと思ってたら夕飯の時間。食事の時間は面会者は退席しなくてはならないらしく、ここで妻とお別れ。なんか心細い。
質素な病院食をいつもの早食いで完食。寝不足で病院に行った方が良いと妻に言われていたので昨晩は3時間くらいしか寝なかったので睡魔に襲われるが我慢。消灯時間は何時ですかと看護師に聞くと個室は何時でもいいですよと言われたので、スマホで音楽を聴く。ネトフリですでに一度見終わってる「Better Call Saul」のシーズン6を小1時間見る。もう結構忘れてるなあ。
明日は9時前に手術への迎えが来るそうなので、23時頃寝る。これがよく寝れた。寝不足作戦成功。スッキリと7時頃目が覚めた。手術当日は飲食は不可なので、妻にスマホで「これからだよ」とメッセージを送った後にICU専用ロッカーに貴重品を入れに行く。
前の日にお願いされていた加圧ソックスを履き、準備OK。
迎えに来た看護師の若い女性とちょっと会話。「外科手術初めてなんですけどどんなですか?」と聞くと「私も昔手術したことありますけど寝てる間に終わります。起きた後がちょっと辛いですよ」とのこと。内心ビビってた。
一緒に3階の手術室のフロアーに行くと自分より年長の男性、女性の患者と手術スタッフが雑談をしている。主治医の先生はまだ見当たらない。名前を呼ばれ今日はどこを手術しますか?と聞かれ、「左の肺の手術です。」と答える。温かい毛布を掛けてくれる。パンツ一枚で手術着を着ているのでありがたい。でもなんか尿意があるような。
ついに名前が呼ばれ、手術室の番号(もう忘れた)も言われ、中に入る。緊張感が増す。
手術台に乗り、なんか色々と付けられた後にまずは麻酔をかけるために体を丸め、背中に部分麻酔を注射される。その後、背骨の何番目かに針を刺し、6cmだか7cmだか麻酔科のスタッフ同士で何か確認している。体に何か入ってくるような感覚とともに…これから先は全く記憶がない。

何か素敵な夢を見ていたようだったのだが徐々に目を覚ますとガラガラと台が引かれる音と妻の呼ぶ声が聞こえる。妻の名前を呼び返す。なんか涙が流れているのだが痛みからだろうか。後から妻に聞いたら「息が苦しい」と何度も言っていたらしい。意識朦朧の中、ICUのベッドに移され、点滴やら、心電の装置やら鼻には酸素の管、あそこには尿の管が刺さっている。息苦しいのでベッドを起こしてもらうと少し呼吸が楽になった。左胸を中心に痛い。痛み止めを点滴しているらしい。しばらくすると主治医の先生が来て、少し話す。どうも無事に終わったらしい。これもあとで妻に聞いたのだが手術時間は3時間、出血は100cc程度で輸血はしなかったらしい。
私は疲れているらしくて、目を開けたままイビキをかいてる。午後のICUの女性の看護師さんが2時間毎に血圧や血中酸素、体温をチェックする。ICUでは2時間毎に起こされるのでちょっとつらい。そんなこんなで数時間後に水が飲めるかのチェック。無事に飲めたので手術当日に晩御飯が食べられるらしい。
ベッドの机の上に食事が並べられるが、咳や痰も出るし食べづらい。が、ここで完食する姿を見せないとと思ったのと意外と腹が減っていていつもよりはゆっくりだが完食できた。看護師さんにも褒められる。女性の場合には体力的に食べられない人も結構いるらしい。1週間以内に退院するという目標があったのでその後もICUのご飯は全て完食。(次の日の朝と昼)
小は管が通っているので良いが、大をしたくなったらどうしたらいいのかと看護師さんに聞くとオマルを体の下にひくのでそこで行ってもらえれば、あとは綺麗にしますよと言われるが、流石に申し訳ないし恥ずかしい。
そういえば定期的にオナラは出ましたか?と聞かれたなあ。
うとうとしたり起きたりを繰り返しているうちに夜勤のショートカットの若い女性の看護師さんに代わり、挨拶。部屋が暗いせいかめっちゃ可愛いように見える。手術後なのでまだ熱が38度くらいあるので、氷枕で頭を冷やしてくれる。天使にしか思えない。しかし57歳の男があまり甘えてしまうのは申し訳ないのでナースコールはしなかった。2時間おきに枕を代えてくれて、瞳孔をみたり、血圧、体温、血中酸素をチェックしてくれる。俺にはできない仕事だ。天使にしか思えない。寝返りが打てないので腰が少し痛いと言うとクッションを腰の下に入れてくれた。体が楽になる。天使にしか思えない。0時、2時、4時、6時とチェックしてくれて8時に好青年風の看護師にチェンジ。朝ごはんで牛乳が出たのだがこれが実に腸に染みる。大がしたくなるかと思ったが、そう簡単に腸は動かなかった。
もう体を動かしましょうと好青年の看護師に言われ、車椅子に乗せられレントゲン撮影に。この時はまた別の女性の看護師にチェンジ。「体重が重くてすいません」と言うと「そんなことないですよ」と言い放ち、すごいスピードで1階のレントゲン室まで。レントゲン待ちが少なく「ラッキー」とのこと。ここで立ち上がれないとまずいと思い、身体中の管を纏いながらせーので立ち上がりレントゲン撮影。流石に手術箇所は痛いがなんとかできた。撮影後に9階のICUまでまたすごいスピードで帰ったところ、もう尿の管は外しましょうとのこと。好青年の看護師が「とりますからちょっと我慢してくださいね」と言って管をさっと抜く。ついでに身体中を使い捨ての温かいタオルで拭いてくれる。あそこを拭かれてる時、悪いなあと思い何も言えなかった。俺にはできない仕事だ。感謝しかない。昼飯も完食して薬を飲んだり、あれこれしているうちに8階の病棟に移動とのことで、ICUの看護師さんたちにお礼を言い、帰還する。
8階の個室で横になる。呼吸しやすいように看護師さんに頭を高くしてもらう。咳をすると傷口に激痛が走るが咳をして痰を出さないと肺炎になってしまうとのことで痰壺が欲しいくらいたくさんを痰を吐いてはティッシュで丸めて捨てる。
ということで肺のサイズは3/4になってしまったが、俺はまだ生きている。死にたいなどとはちっとも思わない。
ふと次のミニアルバムのタイトルは「I Love Myself and I Want to Live More」にしようかなとも思う。(多分続く)

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