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【コラム】碍子清掃ってなに?②【電信柱編】

合同会社 WeeFeeSでは特殊ドローンを用いた様々なサービスを提供することを目標としています。その中の1つに「高所の碍子洗浄サービス」があります。けれども、「碍子洗浄」とはそもそも「何を洗うのだろう?」という方も多いかと思います。
前回は鉄塔のお話をいたしましたが、今回は私たちの生活においてもっと身近な存在である、電信柱の話をしたいと思います。

前回:【コラム】碍子洗浄ってなに?①【鉄塔編】|WeeFeeS

身近な存在、電信柱の構造

  • 電信柱の碍子

電気が発電所で作られてから家庭に届くまでの大まかな図

電信柱は家庭をはじめ、様々な場所へ電気を送る際に欠かせない存在です。電機は発電所で作られ、送電線を伝って鉄塔を通り、変電所を経て電柱に流れ、各家庭に電気が送られます。

電線の仕組み(一例)

そうした役割を持つ電信柱には電圧の違う配電線がつながれています。電信柱は様々な構造のものがありますが、一例をもとにご紹介します。

架空地線:電気の通っていない配線で、避雷針の役割を担っています。

高圧配電線:変電所とつながっており、6,600Vの高圧配電線が通っています。高圧配電線には「クランプがいし」という碍子が設置されており、電線から電柱へ電気が通らないための絶縁体の役割をしています。

低圧配電線:家庭用の100V、200Vの電気を運ぶ配線。これらの電気は柱上変圧器にて変圧された電気になります。

柱上変圧器:6,600Vを100V、200Vに変える変圧器。変圧器が設置されているところには「耐塩ピンがいし」という碍子が設置され、やはり絶縁体の役割をしています。

  • 電信柱も塩害や火山灰で困っている

鉄塔と同様に、電信柱も「塩害」の被害を受けることがあります。海から風に乗って流れてきた塩は電気を通しやすく、碍子に付着することで漏電を起こし、絶縁体としての機能を低下させてしまいます。

①2018年10月 台風24号の例
2018年10月日本に上陸した台風24号の際には、台風が通り過ぎて3日近くたった10月3日午後9時42分に京成線 船橋競馬場駅構内の送電線から出火、停電が発生し電車の運行がストップ。翌4日午前6時過ぎ再開し、約7万2千人に影響があり、原因は「電線を電柱に固定し支えるための絶縁体『碍子』が原因となった可能性がある。」と東京電力より発表されました。またこの際は、雨があまり降らず、強風が吹き続けたことによって塩が海から遠い地域まで流れてしまい、塩害は埼玉県や栃木県でも報告されました。

②2019年10月 台風19号の例
2019年10月に上陸した台風19号の際は、鳥取市を中心に7万5500戸が停電しました。この停電の主な原因も塩害でした。中国電力では海岸からの距離を塩害対策区域と定め、漏電しにくい耐塩碍子を使用していました。しかし、未曽有の大型台風だった19号の上陸により、強風による断線、飛来物による電線への影響のほか、想定の範囲以上の塩害が発生したとされています。

  • 電信柱を地中に埋める無電柱化による解決方法と現状

電信柱を地中に埋めてしまえば、塩害や火山灰で困る機会も減ってくるかもしれません。日本では1980年代より電信柱や電線を地中に埋め、景観保全、飛来物により電線が切れることを防ぐなどの防災につなげる「無電柱化」が始められました。
しかしコスト面の問題から、現在も無電柱化が中々進まずにいることが現状です。それに加え、配電されている範囲から外れた場所に家が建ち、そこへ配電するために新たに電柱が建てられています。そのため電信柱は減少するどころか増加の傾向にあります。

日本の電信柱とその数

電気事業連合会の「電力統計情報」によると、2023年、日本における電信柱は「鉄筋コンクリート柱」がメインとなっていますが、他にも「鉄柱」、少数ですが「木柱」も存在しています。また最も多くの電信柱を保有しているのは関西電力で75,046基、次が九州電力で48,179基、そして中国電力が30,668基となります。無電柱化が最も進んでいる東京都の電気も管理している東京電力は、6,583基でした。(2023年期統計より)
こうして見るだけでも、現在日本には多くの電信柱がまだまだ存在していることがわかります。またそれだけ、強い台風が来たら碍子への塩の付着が発生し、塩害が原因の停電も発生することがわかります。
合同会社WeeFeeSは、ドローンによる碍子洗浄技術を生かし、塩害対策にも取り組んでいきたい・ご協力したいと考えています。

【参考】
・関西電力送配電「おくりんの電気教室」
おくりんの電気教室 | 会社情報 | 関西電力送配電株式会社
・中部電力「エネルギーについて 電気について」
電気について - エネルギーについて|中部電力
・電気事業連合会 電力統計情報
電力統計情報 - 電力データ | 電気事業連合会 (fepc.or.jp)
・須賀亮行『電柱マニア』オーム社、2020年発行
・黒沢亜美「ニッポンの電柱3600万本、実はまだまだ増えている? くらしの数学考」日経速報ニュースアーカイブ、2022年8月13日
・「台風去っても残る塩害 電線出火、京成線ストップ キャベツ・ダイコン、葉傷む」朝日新聞、2018年10月5日朝刊、35頁
・「塩害 広範囲に影響」読売新聞、2018年10月6日朝刊、37頁
・矢田文「大規模停電、なぜ県内で 中電管轄の8割超7万5500戸 台風19号/鳥取県」朝日新聞、2019年11月1日朝刊、23頁

合同会社 WeeFeeS
masa


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