勇気
「え〜なにお前、死にたいの?」
「...え?」
「私よりずっと頭も良くて色んな経験もしてて、人格も優れてるお前が死ぬの、勿体なくね?」
初めて私を真っ直ぐと褒めてくれた彼女は、嘘を殆どつかなかった。
思ったことを常に真っ直ぐに伝える、それは美点なのか欠点なのか私にはわからないけど。
でも確かにその瞬間の私はその無骨な言葉に救われた、救われてしまった。
「まあ別に私も止めるつもりはねえよ、死にたいなら死ねば?と思ってもいる。」
「自分みたいに...?」
「その通り。いやだってホントに勿体ないと思ってるけど、だからといって私にはどうにもできないしな。死ぬのも生きるのも勝手にしてくれ。命の使い方は人それぞれだ。」
勇気のない私はきっと、一緒に生きてくれ...と言われたかったのだと思う。
そんな私の我儘には気づかないまま、君は手をひらりと振ってどこかに行ってしまった。
そしてもう二度と会うことはなかった。
君は私をおいていってしまった、君だって勿体ないよなんて伝えてあげれたら良かったのに。
私には勇気がなかった。