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重み増すアフリカの対中債務 真の支援 日本ならできる|【特集】「一帯一路」大解剖 知れば知るほど日本はチャンス[PART-8]

吉澤 啓(国際協力機構〔JICA〕アフリカ部計画・TICAD推進課 専任参事〔TICAD・開発政策分析担当〕)

ケニアでは中国の融資により鉄道が開通したが、莫大な赤字を垂れ流してしまっている。1993年のTICAD1からアフリカ支援を見続けてきた、JICAの生き証人に話を聞いた。

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モンバサ・ナイロビ鉄道はケニアの悲願であったが、代わりに莫大な債務が残された(AFP/AFLO)

 2017年、アフリカ東部のケニアの内陸にある首都ナイロビと港湾都市モンバサ間の約480㌔メートルを結ぶ「モンバサ・ナイロビ鉄道」が開通した。建設にあたっては、総工費約37億㌦のうち9割弱(32億3300万㌦)を中国輸出入銀行(輸銀)が融資した。ケニアにとって、鉄道の更新は悲願だった。イギリス植民地時代に敷設された路線が、独立後は維持できず老朽化していた。

 20年ほど前、国際協力機構(JICA)の担当者として、私も同鉄道更新事業に関するケニア政府からの要請内容に目を通したが、日本が手を出せる規模を大きく超えていた。誰も貸し手が現れない中、中国が本格的にアフリカ支援に乗り出した。

 中国のアフリカ援助は、10年代初頭までは資源権益の獲得を重視していた。だが「一帯一路」構想発表後の15年ごろから、輸出市場として、また中国国内の余剰生産力の販路開拓先として、資源のないアフリカ諸国にも進出するようになった。モンバサ・ナイロビ鉄道と、エチオピアとジブチを結ぶ「アディスアベバ・ジブチ鉄道」(16年開通)が、近年のアフリカにおける中国の二大鉄道プロジェクトだ。

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