新規ビジネスの創出にも直結 SF思考の差が国力の差になる|【特集】〚人類×テックの未来〛テクノロジーの新潮流 変革のチャンスをつかめ[COLUMN3 コミュニケーションが生み出す力]
メタバース、自律型ロボット──。世界では次々と新しいテクノロジーが誕生している。日本でも既存技術を有効活用し、GAFAなどに対抗すべく、世界で主導権を握ろうとする動きもある。意外に思えるかもしれないが、かつて日本で隆盛したSF小説や漫画にヒントが隠れていたりもする。テクノロジーの新潮流が見えてきた中で、人類はこの変革のチャンスをどのように生かしていくべきか考える。
SFを生み出す力やSFに熱中することと、経済力(新規ビジネスの創出)が直結するのはなぜなのか?
SFを生み出す力やSFに熱中することと、経済力(新規ビジネスの創出)は直結している。「メタバース」の語源は、ニール・スティーヴンスン氏のサイバーパンク小説『スノウ・クラッシュ』(1992年)で初めて登場した言葉だ。
SF小説の流行と、イーロン・マスクやジェフ・ベゾスに代表される新たなビジネスリーダーの台頭は軌を一にしている。実際、劉慈欣氏の『三体』(2008年)に代表される中国SFも隆盛を極めており、SF界でも世界のトップを米中が争っているように映る。
一方で、1960年代、70年代とSFが華やかなりし頃の日本の姿は、今は昔となった部分もある。米国で大ブームとなったSF小説も日本では未邦訳であったり、刊行後も絶版になったりすることが多い。SF小説を機に大きな経済ムーブメントが起きた米国とは対照的で、その差がそのまま経済の差になっている。
私の肩書は「応用文学者」「科学文化作家」だ。聞き慣れないのは当然で、私がつくった造語だからだ。これからの時代は、1人の人間がいくつもの仕事を掛け持ちして、その掛け合わせによって価値を生み出すのだ。架空だけれども現実に接した独自の肩書を生み出せるような思考が「SF思考」であるとも言える。
いま私のもとには「SFプロトタイピング」を行いたいのでサポートをしてほしいという企業からの依頼が殺到している。「SFプロトタイピング」という考え方が普及してきたことは喜ばしいが、日本企業に共通する誤解があることに気がついてきた。
「未来(ビジョン)」をつくることが目的化していることだ。未来は「つくる」ものの、自分自身(自社)が、未来に「なる」方法についてはおざなりになっている。
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