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メタバースの登場は必然だった|【特集】〚人類×テックの未来〛テクノロジーの新潮流 変革のチャンスをつかめ[PART1-1 未来を拓くテクノロジー]

メタバース、自律型ロボット──。世界では次々と新しいテクノロジーが誕生している。日本でも既存技術を有効活用し、GAFAなどに対抗すべく、世界で主導権を握ろうとする動きもある。意外に思えるかもしれないが、かつて日本で隆盛したSF小説や漫画にヒントが隠れていたりもする。テクノロジーの新潮流が見えてきた中で、人類はこの変革のチャンスをどのように生かしていくべきか考える。

「メタバース」がもたらす未来で待つのは、「プラットフォーム」という概念を覆す可能性すらある、〝1億総クリエイター・エコノミー〟という世界だ。

 「メタバース」—。サイバー(仮想)空間や、ゲーム内で「アバター」と呼ばれるキャラクターを使って、人とコミュニケーションをとったり、ゲームをしたりといった活動をする。あるいは、「デジタルツイン」と呼ばれる形で現実世界をサイバー空間に再現するなど、メタバースの定義は広い。そもそもは、メタ(超越)とユニバース(世界・宇宙)という言葉からつくられた造語で、サイバーパンク小説『スノウ・クラッシュ』(ニール・スティーヴンスン、1992年)が、その語源とされる。最近では、スティーブン・スピルバーグ監督による映画『レディ・プレイヤー1』(2018年)でも、現実世界ではなく、メタバースに生活の軸が移った近未来の様子が描かれた。
 昨年、フェイスブックが社名を「メタ」に変更するなど、日増しに注目が高まる「メタバース」。そのビジネスとしての可能性について、米サンフランシスコを拠点にするベンチャーキャピタル・スクラムベンチャーズの宮田拓弥氏に聞いた。

文・宮田拓弥(Takuya Miyata)
Scrum Ventures 創業者兼ジェネラルパートナー
早稲田大学大学院理工学研究科薄膜材料工学修了。ソフトウェア、モバイルなどのスタートアップを複数起業。現在は、米サンフランシスコを拠点に、スタートアップへの投資を行うベンチャーキャピタルを経営する。

クロスリアリティの
時代に突入する 

 パソコンがノートPC、そしてスマートフォンに進化したように、〝メタバース〟が勃興するのは客観的に見ても必然だと言える。スマホの次に来たのが、アマゾン・アレクサやアップル・シリのような音声であり、今度は視覚によるVR(仮想現実)、AR(拡張現実)、MR(複合現実)が生まれた。これらを総称してXR(クロスリアリティ)と呼ぶ。

 フェイスブックも突然社名を「メタ」に変えたように見えるが、VR事業に進出するため、ヘッドセット開発企業オキュラスを買収したのは2014年のことだ。私自身、15年からXR投資を開始した。ところが、残念ながら第1の波が大きくなることはなかった。

昨年10月、社名を「メタ」に変更することを発表した
ザッカーバーグ氏 (AP/AFLO)          

 当時、「オキュラスリフト」を装着してVR動画を見ると強烈なインパクトを感じたが、それは一部のテックマニアにしか受けなかった。その理由は、最新モデル「オキュラスクエスト2」を使用すればよくわかる。画像は明るく、広く、そして軽くなった。逆に7年前は暗く、狭く、重かった。VR・ARコンテンツはあっても、それを実現するハードウェアの進化が追い付いていなかったわけだ。それでも、16年にはARゲーム「ポケモンGO」が登場し、マイクロソフトがMRデバイス「ホロレンズ」を発売、17年にはアップルが「ARKit」を発表するなどコンテンツやソフトウェアの進化の流れは止まらなかった。

 そして昨年末、「オキュラスクエスト2」の累計販売台数は1000万台を突破した(発売は20年10月)。

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