クリーニング屋さん【三橋雄斗】
僕らの衣装はお揃いの生地でできています。
近所のクリーニング屋さんに初めて出したとき、
「あら、いい生地だこと。あら、お揃いなの!いいですわねぇ。」
と言ってくれたのです。
以前書いたように、僕が選んだも同然の生地なので、満更でもない感じで「いやいや、全然たいしたことないですよー!」と答えました。
そのときは、僕一人で持っていったのですが、
それ以来、クリーニング屋さんが、
「あら~相変わらずいいわねぇ、今日も汗抜きもお付けになるのかしら?」
といった感じで、僕達の揃いの衣装を覚えていてくれるのです。
ある日、ひかりちゃんと二人でクリーニング屋さんに衣装を持っていきました。
するとクリーニング屋さんが、
「あら、今日は奥さんが一緒で。相変わらずいい服ねぇ。」
と言ってくれました。
ひかりちゃんも満更ではない感じでした。
しかし、店員さんが、
「これを着てお出かけしたりパーティーに出たりするのかしら。いいわねぇ。お揃いの衣装で出かけるご夫婦なんて今時いませんからねぇ。」
と仰有るのです。
すると、ひかりちゃんは、
「いやいや、これで出掛けたりしませんから!」
と否定するのです。
店員さんは、
「あら、そうなのねぇ。。今日も汗抜きお付けしますか?」
と、深くは追及しませんでしたが、
『一体何のための揃いの服なのかしら。部屋着?』
と疑問に思ったはずです。
たしかに、「僕達漫才師です!!」と主張するのはちょっと違いますが、
そんなに否定しなくても軽く受け流せばよかったのではないか。
と、ひかりちゃんに言いました。
すると、「まぁ、嘘はつきたくなかったからね。一期一会だし。」
一瞬、カッコいいなと思いましたが、すぐに意味がわからないと気づきました。
たぶん、咄嗟に否定してしまったのでしょう。
ひかりちゃんにもそういうことはあります。
それから暫くして、また衣装をクリーニング屋さんに出しに行きました。
前回変な感じになったから、もう気さくな感じではなくなってしまうかな。
そう思っていましたが、
「あら、お揃いの!今日も汗抜きお付けしますか?」
と変わらず対応してくれました。
プロだなぁと思いました。
【相方へ】
すみません、何かが解決すると思い、提案してみました。
本当に仰る通りです。
申し訳ございません、もうしません。
ところで明後日は、約束していた通り、僕が細やかな温泉旅行をプレゼントしますね。
楽しみですか?