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銭湯そしてEV充電 同潤会アパートの思い出から

はじめに

1980年代、東京の代官山や表参道等に同潤会アパートという建物がありました。代官山で言えば、現在「代官山アドレス」があるあたり、表参道では「表参道ヒルズ」のあたりです。

同潤会は、内務省によって1924年に設立された財団法人である。その前年に発生した関東大震災の義捐金をもとに設立され、東京と横浜において住宅供給を行った。集合住宅「同潤会アパート」の建設で知られている。

Wikipediaより

1980年代にはほぼ素敵な廃墟の様相を呈していて、私のような写真を撮るのが好きな学生には隠れた人気の撮影スポットでした。ちょっとアールヌーボの香りの、古いながらも小洒落た雰囲気を持つ建物でした。基本的に地上3,4階程度の建物が公園のような空間に割と密集して存在する不思議な空間だったのです。

このアパートメントハウスが建てられたころの時代を考えるに、鉄筋コンクリート造りの洒落た雰囲気は当時の最先端のものだったのでしょう。

大学生だった私は愛用のニコンの一眼レフを持ってその廃墟のような空間を歩き回り、写真を撮りまくっておりました。当時からそろそろ取り壊される話が持ち上がっており、早く撮らないと無くなってしまう、という思いもありました。残念ながらその当時撮った写真が今現在、見当たりません。本当なら披露させて頂きたいのですが短時間では無理なので、まずはGoogle等で検索しても写真が出てきますので、興味を持った方はそちらをお勧めします。

例えば以下のブログは当時の雰囲気をよく伝えていらっしゃいます。

同潤会アパートにあった銭湯と現代

当時、同潤会アパートをカメラ片手に歩いていた私は、その中で銭湯を見つけて驚いた記憶があります。なぜならこれほどおしゃれな空間を作った居住用建造物なのに、各戸にはお風呂は無かったと知ったからです。当時の水道や湯沸かし器の性能など色々な要因があったのでしょう。当時としては珍しい鉄筋コンクリートだったでしょうから色々な課題があったであろうことは推測できます。

一方、1950年代前後に建てられたいわゆる「団地」には銭湯は無く、各戸に小さいながらも給湯器とお風呂がありました。親戚が墨田区の団地に住んでいたので、むしろ子供のころからそれを知っていた事もあり、同潤会アパートで銭湯を見た時に違和感を覚えたのかもしれません。

この一連の記憶に現在なりの理解を適用して解釈をします。この例は日常の家庭生活において必要不可欠なリソース(e.g. お風呂)は、当初は住民が共有する設備として居住空間に設置されていたが、後に共有ではなく各家庭が占有できる各戸個別の設備として進化していった、と解釈できると考えます。

同潤会アパートが存続して、仮に進化していくとしたら、あの同潤会アパートにあった銭湯はどうなっていたでしょう。各戸にお風呂が設置されるようになるか、あの銭湯がもっと豪華な銭湯になるか。まあ、両方あれば楽しいとも思いますが、どちらか一つと言われたら通常前者、すなわち各戸にお風呂、なのではないでしょうか。

銭湯と充電

私たちユビ電では、WeChargeというEV充電環境をサービスとして提供しています。そしてマンションやオフィスビルの駐車場の各車室(車室=一台のクルマ分の空間)にスマートコンセントを設置して、クルマを停めたらその場所で常にエネルギーにアクセスできる環境を日本全国に広めています。

一方、従来、例えばマンションの駐車場にEV充電設備を置きたいという方がいらっしゃると、そこに共有充電設備を1台置いて、それを予約して皆さんでお使いください、という提案が主流だった時代がありました。逆に言えば、そのような提案が受け入れられた背景として、EV充電という行動をライフスタイルの中に受け入れるなかで、まだ経験が無い方が導入を決めることが多かった時代があった、ということかもしれません。

当時同潤会アパートに住んで居た方々に、新しく入浴設備を導入できる予算が付きました、どうしましょう、とアンケートを取ったとすると、どうなっていたでしょうか?

独身で働いていて普段からそれほどお風呂に興味がない人なら、「じゃあ銭湯にサウナをつけてくれ」だったかもしれません。私の勝手な推測ですが、そのアンケートのほとんどは、「各戸に専用のお風呂をつけてほしい」になったのではないかと思います。

たまに行く温泉露天風呂やスーパー銭湯の話ではありません。毎日入りたいお風呂の話です。

でもほとんどの方は、そんなこと当たり前じゃないか、と思われるでしょう。しかしそれはあなたが「入浴する」というライフスタイルをよくご存じで慣れている方だからです。

私も天然温泉源泉かけ流し露天風呂が大好きです。これは自分のうちにお風呂があって日常生活を送れる前提で、必要に応じて露天風呂を楽しむ事ができるのです。ですので、自宅にお風呂がある事と、自分のまわりにスーパー銭湯や源泉かけ流し温泉があって、行きたい時にそれを楽しむということは矛盾しないのです。

これは自宅にあるEV普通充電と高速道路にある急速充電に似ている関係かもしれません。

銭湯そしてEV充電

2020年代、EVは普及の過渡期にあり、多くの方がEVを所有した経験が無い中で、急速なEVの普及を可能性として実感できる時代に入りました。

各家庭にお風呂が普及した一因に、湯沸かし器メーカやエネルギー企業が小型で安全な湯沸かし器を開発して各戸でお湯を作る事が可能となり、晩御飯を食べてそのあと家族でテレビを見ている位の時間で、風呂桶を適温のお湯で満たすことができるようになった事も大きいでしょう。高層マンションも含め、あれだけの数の家庭で其々自分のお風呂に入れるという機能の実装は大変だったであろうと思います。

昨今、私どもにご連絡いただくお客様の中には、マンションの駐車場の一角に共用充電器を置いて居住者の方が予約して共有で使うというイメージで問い合わせいただく事があります。これは充電の速度等を考えると、数十世帯は入っているマンションの1階に家庭用の風呂桶サイズの銭湯を作れば、住民は充電器を予約してお風呂に入れる、ということに似ています。

しかし、ここで重要なのは充電の速度や予約するということではありません。大切なのは小さな銭湯を作ろう、ではなく、各家庭にお風呂だということです。

其々が専用で持つように作った仕様のもの(充電器と称するコンセントと同等のもの)を、当面安そうだから、一つ目はタダだから、と一つ買って住民がシェアして使おうとするのは将来的に困ってしまう導入方法だと申し上げたいのです。

新しいところに置いた古いアイデア

ユビ電株式会社は、出先でもエネルギーにアクセスしやすい社会を目指しています。冷蔵庫も洗濯機も外出しませんでしたが、あなたが所有するであろう最も電気を必要とするEVは、外を走り回り、ダイナミックで多様なエネルギーへのアクセス方法を求めます。言い換えれば、EVは物理的に動的な電力需要を生み出しているのです。

この社会的な変化をより円滑で楽しいものにするため、過去の事例(例:携帯電話や銭湯に起こったビジネスモデルの変化)などで学びながら弊社は取り組みを進めています。そしてその第一弾は、集合住宅でも職場でも旅行先でも普通に充電できる環境を、ローコストで頑強なアーキテクチャに基づいたIoT型個別充電技術で実現するWeChargeです。

電気自動車の数だけ、専用の充電設備が必要に

すでに多方面の連携も進めておりますので、ユビ電、WeChargeに興味を持っていただいた方、マンションやビルの駐車場にEV充電環境の設置をご検討の方は、是非下記までご連絡ください。

文: ユビ電株式会社 代表取締役 山口 典男

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