イチゴ:昨22年の輸出は量・額とも過去最高に
今、動きのある航空貨物の統計品目を様々な視点から解説する”エアカーゴ専科”。
今回のテーマは、今が旬の「イチゴ」。
イチゴは冬〜春の長いシーズンで楽しめる
イチゴはバラ科の植物で、野生のイチゴはヨーロッパではすでに石器時代から食べられていたという。現在、栽培されているイチゴの元となるものは、18世紀オランダで北米産と南米産のものが交雑してできたもの。
日本のイチゴ品種は、とちおとめ、あまおう、紅ほっぺ、スカイベリーなど300種以上あり、各産地でさらにオリジナル品種の開発が進められている。日本産は香り
が高く大粒で、甘みと酸味のバランスが良く、海外での評価も高い。
スーパーで販売されている期間は12月〜5月頃で、このためイチゴの売れ旬は冬から春と言える。
しかし本来的にはイチゴが実を成らす時期は主に4月から6月であるため、30年ほど前までイチゴの旬は春だけだった。
では、なぜ今では冬にイチゴの収穫ができるかというと、ビニールハウスを使って「人工的な春」を作り出しイチゴに季節を勘違いさせて、本来なら収穫できない季節にイチゴを収穫しているからである。
本来収穫できない季節にイチゴを収穫したい理由は、冬や早春にイチゴの需要が高まるため。たとえば12月にはクリスマスケーキの需要に応えるために、国内向け出荷が爆発的に増加する。
世界的に見てクリスマスにイチゴを大量に使ったケーキを食べる文化があるのは日本だけ。生クリームの白とイチゴの赤という紅白の組み合わせがおめでたいからとか、サンタクロースカラーだからなどと理由には諸説あるが、12月にイチゴを収穫できるように栽培農家が生産スタイルを変化させてきたことが、イチゴ満載のクリスマスケーキを習慣づけたとも言えるかもしれない。
逆に言うと、6月から11月の間に出回るイチゴは海外から輸入されているものがほとんどで、スーパーなどには出回らず、ケーキやデザート用として洋菓子店やレストラン向けに輸送されている。
しかし、日本にも6月から11月まで収穫できる特殊なイチゴもある。夏から秋に収穫できるため「夏秋(かしゅう)イチゴ」と呼ばれている種類だ。このタイプのイチゴは普通のイチゴとは、花を咲かせる仕組みが異なる。
普通のイチゴは「一季成り性イチゴ」というタイプだが、夏秋イチゴは「四季成り性イチゴ」というタイプ。
この夏秋イチゴは数年前までは甘味や酸味をほとんど感じない、飾りとして使用されるものばかりだったが、品種改良を重ねた結果、従来の夏秋イチゴに比べて高い糖度を持つ品種も生産されるようになった。
円安追い風に輸出伸びる、国内生産量1位は栃木県
2021年実績で見る都道府県別のイチゴ生産量および金額の国内1位は2万4400トン(238億円)で栃木県、続く2位は1万6600トン(231億円)で福岡県、3位は1万2100トン(142億)で熊本県となっている(農林省統計)。栃木県はとちおとめ、福岡県はあまおう、熊本県は紅ほっぺなど、それぞれ強いブランド・イチゴを抱えて揺るぎない支持を得ている。
一方、財務省の貿易統計によると、日本の生鮮イチゴの輸出は右肩あがりに伸びており、2018年には過去最高の輸出量1237.5トンを記録した。翌19年は台風や大雨など天災の影響で大きく減少するも、翌20年には回復し、コロナ下にあった21年も伸び続けていた。さらに昨2022年になると輸出量が2183.5トン、輸出額が52.4億円となり数量・額とも過去最高を更新した。昨年は7、8月の記録的な猛暑に加えて、9月の日照不足で夏場の生産量が激減となったにも関わらず数量は前年比22%、金額は30%増の伸び率となった。
これには昨年、円安となったことが大きな理由のひとつと考えられるが、もうひとつ、輸出する海外市場が拡大していることも挙げられる。たとえば台湾では、11年東日本大震災時の原発事故以降、福島・茨城・栃木・群馬・千葉の各県で生産・加工された食品に対する輸入停止措置をとっていたが、昨22年2月に輸入規制が緩和された。栃木県からさっそく台湾に16年ぶりにイチゴの輸出が試験的に開始されており、今後本格的な輸出再開へ向けた体制を準備している。
生鮮イチゴは傷みやすく日持ちしないため、その99%以上がエアカーゴとして輸出されている。輸出の伸びは今後も続くと見られるため、重要な生鮮エアカーゴ品目としてあり続けることは確実だ。
2023年3月30日掲載