柿:東南アジアを中心に輸出が拡大中
今、動きのある航空貨物の統計品目を様々な視点から解説する”エアカーゴ専科”。
今回のテーマは、「柿」。
柿は東アジア原産の同地域固有種。日本や韓国、中国に多くの在来品種があり、特に中国・長江流域に自生している。日本では果樹として北海道以外で広く栽培されている。
柿には「甘柿」と「渋柿」があるが、違いは渋み成分「タンニン」が口の中で溶けるかどうかで決まる。溶けると渋くなり、溶けなければ甘くなる。幼果期はどちらも渋みが溶ける「可溶性」タンニンを含んでいるが、甘柿は成長過程でタンニンが「不溶性」に変化して口の中で溶けなくなるため、渋みを感じなくなる。
また、渋柿の渋抜きとは、アルコールや炭酸ガスを使って処理することによりタンニンを可溶性から不溶性に変化させること。タンニンを取り除いたり分解したりしているわけではなく、タンニンを不溶化して渋みを感じないようにしているわけだ。
同じく干し柿も、皮をむき干すことで表面に皮膜ができ実の中でアセトアルデヒドがタンニンと結合して不溶性に変わるため、食べても渋みを感じないのである。
柿に含まれるビタミンCの量は、日本人がよく食べる果物の中でトップクラスのため、風邪予防や美肌効果を期待できる。
また柿のオレンジ色には、抗酸化作用のあるβカロテンのほか、同じカロテノイドの一種「βクリプトキサンチン」が多く含まれていて発がん抑制作用があるといわれており、栄養価の高い果実と言える。
■22年は輸出量・額とも過去最高に
2021年の柿の収穫量のうち最も多いのは和歌山県で、約3万9700トン。2位は奈良県で約2万8300トン、3位は福岡県で約1万5800トンとなっている。上位3県で全国の収穫量の44.6%を占める。
2022年の柿の輸出額は、6億6000万円(999トン)で金額・量ともに過去最高を記録している。さらに前年比で金額が約50%増、数量で約55%と大きく伸びたことが明らかになっている。
主な輸出先としては、1位が香港で3億9200万円:654トン/2位がタイで1億9900万円:262トン/3位が台湾で2700万円:29トンと続く。トップの香港は1国で全体の6割を占める格好。その香港や台湾に向けては大玉で見栄えの良い柿が人気で、家庭用だけではなく贈答品としての需要も多いという。
また、タイをはじめとする東南アジアでは人々が固めの果肉を好む傾向があり、そうした食感と糖度の高さをともに持っている果物は希少で、柿はこのニーズを満たしていることで好まれているようだ。
22年の輸出全体のうち航空貨物として輸送されたものは4億40万円:541トンで、6割を占めている。
航空貨物としての輸出先についても順位はほぼ同じで、香港・台湾についてはほとんどが航空貨物として運ばれていることがわかる。航空運賃負担力があるほど高価でも、最上級・大玉の日本の柿は好まれていると言えるのだろう。
■今後の展開
国の輸出重点品目に柿・柿加工品が追加されたことを後押しとしながら収穫量1位の和歌山では、輸出拡大に向けた環境整備を図ったり、農産物の生産体制等の強化を行っている。
また各国へのプロモーション動画の作成やライブコマース、web商談なども開催しているという。
こういった取り組みから販路の拡大を目指している。
ことし23年の柿の輸出実績を見ると1月〜7月は4700万円:61トン。シーズン外の実績となるため小さく見えるが、前年同期の2200万円:19トンと比べると金額で2倍超、数量で3倍超と伸ばしている。
今後も成長が続く輸出品目となるだろう。
2023年11月9日掲載
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