国際航空業界、イスラエル/ハマス戦闘激化でテルアビブ便を運航停止
パレスチナ武装勢力ハマスが10月7日、ガザ地区からイスラエルに向けて大量のロケット弾を発射するとともに越境奇襲攻撃を行い、多数のイスラエル人と外国人を殺害、人質に取るなどした。これに激怒して報復に動いたイスラエルはガザ地区に激しい空爆を実施したばかりでなく、「戦争状態にある」として地上軍によるガザ地区でのハマス掃討戦に踏み切る構えだ(10月12日現在)。
このイスラエル/ハマス戦闘の激化で、世界の航空業界はイスラエルの首都国際空港であるテルアビブ・ベングリオン空港への定期便を一時運航停止する措置に踏み切った。
最も早く反応した米国では、アメリカン航空が12月4日までテルアビブ発着の全便の欠航を発表し、デルタ航空も10月いっぱい、イスラエル発着の全便を運休するとし、ユナイテッド航空は無期限で運航を停止した。
ヨーロッパからの航空便でも英ブリティッシュエアウェイズ、独ルフトハンザ航空、エールフランス-KLM、フィンエアー、TAPポルトガル航空など主要な航空会社がすべてイスラエル発着の直行便を一時的に停止した。
一部の航空会社は10月10日まで、あるいは13日までなどと期限を区切ったところもあったが、その後もレバノン領内からパレスチナ武装勢力のひとつヒズボラがイスラエル領内へロケット攻撃したとか、シリアのダマスカス、アレッポ両空港がミサイル攻撃で使用不能になるなど、不穏な状況が周辺でも続いており、イスラエル/ハマス戦闘はむしろこれから激化するとの見方から、各国航空会社はテルアビブ便の運航停止を維持したままの状況が続いている。
ユナイテッド航空の広報担当者は「顧客と従業員の安全が当社の最優先事項だ」として、 「テルアビブ便は状況が回復するまで運航停止となる」旨を明言した。
しかし、テルアビブのベングリオン国際空港自体は、戦闘が最初に勃発してからも開港したまま営業を続けている。イスラエルのフラッグキャリアであるエルアルイスラエル航空も、一部の便の休止や遅延が発生しているものの、(一部の地域航空を除けば)同国向け空の便としてほぼ唯一、従来通りの定期運航を継続している状況だ。
ただ、ことし23年3月に開設されたばかりのエルアル航空「成田〜テルアビブ直行便」については、同社ホームページを見る限り、10月下旬以降の運航スケジールしか発表されていない。これは日本外務省がイスラエルへの旅行について10月11日付けで、ガザ地区及び同地区との境界周辺を危険レベル4(退避勧告)とし、さらに従来の危険レベルが1の地域には危険レベル2(不要不急の渡航中止)を発出したためでもあろう。エルアル航空もキャンセルには柔軟に対応するとしている。
悩ましいのは米国の航空会社で、イスラエルには多くの米国人が滞在しているため、米国務省は米国航空会社に対し空路の再開を検討するよう要請した。帰国を希望する米国人観光客にすぐに対応できるようにしたいからだ。国務省報道官のマシュー・ミラー氏は今週の記者会見で、「我々はイスラエル出入国の再開を検討するよう様々な航空会社とも協議しており、今後も継続していく」と述べている。
航空業界だけでなく、東地中海域向け観光を売る世界の旅行業界も、人気のイスラエル観光の中止、以後のツアーのキャンセルに追い込まれた。大手クルーズ会社は次々と、有力な観光コースでもあるイスラエルのアシュドッド港、ハイファ港への寄港中止を発表した。
戦闘の激化、あるいは周辺への波及によっては今後、定期航空便の運航中止範囲がさらに広がる懸念もあり、世界の航空業界にとって“中東の火薬庫”の爆発は大きな頭痛のひとつになっている。
2023年10月13日掲載