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再生進めるエア・インディアは航空貨物でも復活なるか
エア・インディア(AIC)と言えば、まだインドが英国植民地時代の1932年に、今は同国最大の企業グループになっているタタ・グループによってその前身が設立された由緒ある航空会社ですよね。
その後、インド政府が引き取って国営航空として同国のフラッグ・キャリアになったわけですが、年を経るうち、国営企業にありがちな非効率性によって累積赤字がふくらみ続けて経営危機に陥り、最終的に昨22年1月にタタ・グループが全株式を買い取って傘下に入れたのです。いわば創業家のもとに戻った形でした。
それからほぼ2年近くが経過して、徐々に国際舞台でエア・インディアの名前を聞くことが増えてきて、ようやく再生の道が順調に動き出していることを感じさせます。なかでも同社のカムバックを予測させる大きなニュースといえば、本23年2月にエアバスに対して250機(内訳はA320neo:140機/A321neo:70機/A350-900:6機/A350-1000:34機)、ボーイングにも220機+オプション70機(内訳737MAX8/10:190機/777-9:10機/787-9:20機)、額面にして800億ドルという大型発注を行ったことでした。オプション含めて540機というのですから、すごいのひと言ですよね。
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この大規模発注を行った背景には、経営危機のために長らく保有フリートの更新を控えていたことがあるのはもちろんですが、なにより低迷していた時期に、台頭してきた新進LCCのインディゴ航空に「旅客輸送でインド・トップの航空会社」というステータスを奪われていたので、それをなんとか取り返したいという思いもあるのではないでしょうか。
もうひとつ、エア・インディアが目指している復活劇に、どうやら航空貨物分野への再挑戦という計画が含まれているようです。
同社には、かつてエア・インディア・カーゴという貨物部門があり、1980年代から90年代にかけて国際線でB747FとDC-8Fのフレイターを定期運航していました。これらの貨物便は損失が拡大したことで一時停止したのですが、懲りずに2006年にA310F型2機を投じて貨物便を再開したものの、運航上の課題や中東キャリアとの競争激化のため、2012年、ついにエア・インディア・カーゴは貨物便運航から撤退していたのです。
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ところが最近、その自社フレイター運航の再開が実現するかも、と思われるエア・インディアの動きがいくつか報じられています。
例えば、ことし23年の初めに新たな貨物事業責任者として、フレイター運航の大手であるエミレーツ航空やカタール航空から経験豊富なプロフェッショナルを引き抜いていますし、世界的な貨物ネットワークの拡大に向けて航空貨物の実績とノウハウが高いドイツのルフトハンザ・カーゴと戦略的な提携を結びました。最も近くでは、この12月中旬にムンバイで開催されたインド国際貨物ショーでエア・インディア・カーゴが意欲的な展示を見せて、久しぶりに存在感をアピールしているのです。
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インド国内でも、陸送と航空輸送を組み合わせて、国内のさまざまな地域から首都デリーまで保税貨物を効率的に輸送する革新的なロードフィーダー・サービス方式を導入したとのこと。このシステムによって国内貨物輸送が効率化・最適化されるだけでなく、デリーからの輸出貨物の輸送機能も向上したということです。
23年第2四半期(4~6月)におけるインドの国際航空貨物に占めるエア・インディアのシェアは6.7%まで回復し、エミレーツ航空やカタール航空、エアロロジック航空、キャセイパシフィック航空などの業界大手に次いで5位となりました。かつての「貨物のエア・インディア」の名誉を取り戻すことができるでしょうか、同社のフレイター運航の再開はあるのでしょうか、眠れる大国インドの眠っていたエアラインが本格的に目覚めるのが楽しみですね。
2023年12月21日掲載