ANAのカーゴ・プログラム、荷主企業向けにもCO2削減証明発行
全日本空輸(ANA)はこのほど、航空貨物の荷主企業向けにSAF(持続可能な航空燃料)利用により二酸化炭素(CO2)の削減量を割り当てるサービスを開始する。国内の航空会社では初の取り組みとなる。
ANAは21年10月、SAF等の活用を通じて航空貨物の輸送や社員の出張等により発生する間接的なスコープ3の可視化とCO2排出量削減を目的とした新プログラム「SAF Flight Initiative」を立ち上げたが、今回、貨物輸送のプログラムで荷主企業を対象とした新サービスをスタートさせたもの。
同プログラムはこれまで、ANAと直接取引のある貨物代理店を対象にCO2削減証書を発行していたが、貨物代理店からの荷主企業別の輸送実績(重量、距離等)に基づき、新たに荷主企業にもCO2 削減証書を発行する。
この証書は欧州連合(EU)の再生可能エネルギー指令に準拠しており、気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)やカーボン・ディスクロージャー・プロジ
ェクト(CDP)などの気候変動対策に関する企業の情報開示に使用できる。
スコープ3は、製品の原材料調達から製造、販売、消費、廃棄に至るまでの過程において排出される温室効果ガスの量(サプライチェーン排出量)で、スコープ1(自社での直接排出量)、スコープ2(自社での間接排出量)以外の部分「その他の間接排出量」を指す。
既に多くの企業が、自社のCO2排出量を削減するのみではなく、サプライチェーン全体でのスコープ3排出削減や業務効率化の実現に取り組んでいる。
外山俊明・ANA取締役専務執行役員、ANA Cargo会長は「地球温暖化やそれに伴う世界の気候変動は我々の想像をはるかに超える事業継続上のリスクになっている。そのような状況を背景に、TCFDに基づく情報開示や、サプライチェーン全体における具体的な対策がグローバルで求められている。 他方、島国でありながらも貿易大国である日本の企業にとって航空は国際社会における競争力に影響し得る重要な輸送手段だ。 当社は豊富な航空貨物ネットワークとともに“SAF Flight Initiative”プログラムを提供することで、航空貨物輸送と環境問題への取り組みの両面でお客様とともに社会へ貢献していく」とコメントしている。
スコープ3の排出量を踏まえた自主的なGHG削減目標を採用する企業が増えるにつれ、今後は出張の削減、CO2排出量の少ないフライトの選択、さらには航空会社や燃料供給企業との契約を通じたSAF(およびSAFクレジット)の購入が求められるようになっていくだろう。
2023年9月08日掲載