チャイナ・ジャイアント 中国南方航空の保有機が900機を超す
航空業界ニュースを発信するデジタルサイトSimple Flyingによると、中国最大の航空会社・中国南方航空(CSN)は先月8月25日に、保有機数にして900機目となる新造航空機を受領した。これは中国の航空会社としては初めての記録的な保有機数であり、中国のジャイアント・エアラインとしての同社の存在感をさらに高めるマイルストーンとなった。
中国南方航空と言えば、1991年に旧・中国民用航空総局 (CAAC)の広州管理局を引き継いで広東省の省都広州市を拠点に設立された民営航空会社。当初は中国国内線を豊富に展開することで成長し、さらに国際線に進出してからは旅客数・便数・飛行時間・売上高・定期便旅客キロ数などほぼすべての側面で、フラッグキャリアたる中国国際航空を上回る規模のエアラインとなり、中国最大はもちろん、アジアでも最大の航空企業の地位に君臨している。
同社の赤いロゴマークは、東南アジア原産の落葉高木カポックの木をモチーフにしていることも、早くから中国を超えて汎アジアに雄飛する狙いを持っていたことを示しているようだ。
中国南方の保有機数は1998年に初めて100機を超え、2013年には500機、2018年には800機に達し、そして今回900機に達したもので、機材内容としてはエアバスのA330、A350、ボーイングのB777、B787などの広胴機のほか、小型の狭胴機としてもB737シリーズでは-700や-800型とMAX 8を含む180機を揃えている。
同じくエアバスの狭胴機ではA320ファミリー機を313機保有しているため、同社は世界最大のA320運航会社のひとつになっている。
一方で、この2023年初めにすべての超大型機A380型機を退役させたことも注目しておくべきかもしれない。
実は、中国南方の保有900機目となった機材はA380とは真逆の、しかし極めて特徴的な中国自慢の小型新鋭機なのであった。
8月25日午前1時30分に、同社保有の900機目として広東省の掲陽潮汕空港(SWA)に到着、引き渡しを受けた航空機こそ「ARJ21」と称する中国製のリージョナルジェット機だったのである。
ARJ21は、中国が初めて国際民用航空のルールを踏まえて独自に開発し、独自の知的財産権を持つ中・短距離向けリージョナルジェット機で、製造した中国商用飛機(COMAC)によると、すでにこれまで中国内外の取引先へ計100機以上を引き渡したという。
航続距離にして2200キロから3700キロ、座席数100席以内のリージョナルジェットは、中国や東アジア、南アジア域内ではほとんど供給されていない空白の航空機市場とされるため、ARJ21はポストコロナ時代のASEAN市場での販売強化を狙っている。すでに今春、東南アジアではインドネシアのLCC・トランスヌサが最初に同機を購入して商用運航を開始しており、今後、東南アジア諸国に販売していくうえでの良いモデルとなりそう。
中国南方としても中国航空界をリードする存在として、この国産リージョナルジェットを2020年から積極的に活用してきており、すでに20以上の省間路線で運用するほか、主要・基幹路線からのフィーダー展開にも採用しているところ。
同社は現在、21機のARJ21を保有・運航しているが、来24年末までにこれを40機にまで増やす計画でいる。広州をハブとする一帯一路構想や、広東-香港-マカオ大湾エリアの開発構想といった国家戦略への貢献にも、域内を細かくネットワークする航空路線が欠かせないと意識しているようだ。
ちなみに中国南方は、中国が国の威信をかけて開発した国策航空機であるC919についても、製造元のCOMACに対して5機発注している。同社が現在運航中の狭胴機B737とA320と競合する座席数タイプながら、中国のトップ航空企業としては当然の発注だろう。
現在の世界最大の航空市場はアメリカだが、やがては中国が追い抜くだろうとは世界の常識になりつつある。その中国でトップランクの地位を維持していくためにも、中国南方航空の機材数は今後も右肩上がりで増えていくことは確実と見られている。
2023年9月07日掲載
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?