フライングホエールズ:最大級の貨物飛行船の開発進める
仏新興企業フライングホエールズ(Flying Whales)が、貨物輸送用の大型電動飛行船の開発を進めている。それが次世代型飛行船“LCA60T”だ。
LCA60Tは全長200m、直径50mで、B747の2機分以上の長さを誇り、貨物室も長さ96m、幅8m、高さ7mで、最大60トンの貨物が積載できる。また、硬式構造とヘリウムガスを入れる10個の気嚢(きのう)を備え、推進機構には液体燃料とタービン発電機で発電し、モーターでプロペラを回すハイブリッド式を採用する。この4月には、発電機に世界最大手の航空・宇宙機器のサプライヤーであるハネウェル社製のジェネレーターを採用することを決定している。
そもそも飛行船は、運用するための公共設備が必要なく、どんな遠隔地にも移動できる点がメリットで貨物輸送にも適している。LCA60Tはヘリウムガスの浮力によりホバリング状態で貨物の積み下ろしができるため、風力タービンのブレード、険しい山腹から集められた丸太、遠く離れた孤立した地域へ運ばれる建設資材、災害時により供給ネットワークが寸断された地域への支援物資輸送など、従来の輸送手段では困難だった貨物を容易に届けることができる。
このほか、昨今の世界的な港湾混雑により、港外での滞船が多発しているコンテナ船についても、待機中にコンテナの積み降ろしをサポートできるとしている。
同社は「LCA60Tはインフラが不足、またはまったく存在しない地域などへの貨物輸送に役立つ。今後、地上における障害や問題を克服しながら、グローバルなロジスティクスに新たな可能性を生み出していく」とコメントしている。
フライングホエールズは2012年創業。フランス政府、ボルドーのヌーベル・アキテーヌ地域圏、モナコ、カナダ・ケベック州などの各政府系ファンドからの出資を含め、1億2200万ユーロ(約170億円)の資金を調達。カナダ、中国、フランスに製造拠点を持ち、2025年にLCA60Tの初フライトを実施する計画で、今後10年間で150機のLCA60Tを製造し、2032年までにLCA60Tを運航して物流事業の展開をめざしている。
2023年4月12日掲載