マレーシアLCCのマイエアラインが運航停止
マレーシアの格安航空会社マイエアライン(MYAirline)が10月12日、「深刻な財務上の課題」を理由に突然、運航を一時停止すると発表した。
同社は2021年に設立されたばかりのマレーシア籍LCCで、同国セランゴール州スバンジャヤに本社を置き、主にクアラルンプール国際空港(KLIA)のLCCターミナルKLIA2を拠点として、マレーシア国内の路線やタイとの間の路線を運航していた。
マイエアラインが運航を開始したのは、KLIAからクチン向けに初就航した昨22年12月1日のこと。それからわずか1年にも満たない期間で運航停止に追い込まれた。深刻な財務上の危機の原因については、投資家が撤退したこと、そうした緊急時の対応計画が欠如していたためと同社では説明しているが、見通しが甘すぎたと言わざるを得ず、運航の一時停止というよりも、実質的には経営破綻による倒産と見てよさそうだ。
また同社では、マレーシア航空委員会およびマレーシア民間航空局の両方とのコミュニケーションに不備があったこと、特に運航の一時停止を決定する前に当局および乗客に対してより適切に対応することを怠った点を認めて、謝罪している。
同社では運航停止時点で来年3月までの航空券を販売しており、この突然の運航打ち切りによって、約12万5000人分のチケットが宙に浮いた形になってしまった。
これらすでに同社が航空券を販売済みの旅客についてはチケットの払い戻しにも応じており、一方、直近で旅行予定を変更できない乗客は購入したマイエアライン・チケットを見せれば、エアアジア、バティックエア、マレーシア航空など同じ路線を運営する航空会社が、自社便への振り替えチケットをほぼ半額の価格で売ってくれる救済措置をとっている。
マイエアライン側は新たな投資家とも接触を開始しているとして、運航再開、経営回復について意欲的な姿勢を見せており、従業員の解雇も行っていない。ただ、一部の上級管理職は今回の不手際の責任をとって辞職している。同社では今後、資本増強が完了したら目標の優先順位付けを行い、サービス復旧計画と事業継続計画を確立して発表すると言う。
しかし、コロナ禍で体力が弱ったLCCはここ1〜2年で増えている。ことし5月にもインドのLCCゴーファーストがやはり資金難に陥って破産申請しており、新興LCCに対するユーザーの目は鋭さを増している。ましてアジア市場では強豪LCCが、しのぎを削って競合しているだけに、一度つまずいた格安航空がユーザーの厳しい選択視線の中で立ち直れるかどうか、きわめて厳しい戦いを強いられることになろう。
2023年10月20日掲載