デルタ航空、来24年に台湾へ同社初の直行便開設
米国の航空ビッグスリーのひとつデルタ航空(DAL)が12月7日、同社の米太平洋岸ハブであるシアトルから台湾の台北桃園空港に向かうノンストップの直行便を、来24年6月から開設することを明らかにしました。
同社にとっては初の台湾向け直行便でしかもデイリー、投入する機材はスタイリッシュな最新鋭型機A330-900neoとなり、アジア・太平洋地域へのデルタ航空の積極的な攻勢を来年さらに強化することを意味する新路線となりそうです。
同社のアジア太平洋担当副社長ジェフ・ムーマウ氏は発表声明で、「太平洋地域で7番目の直行路線を立ち上げ、この地域における力強く一貫した成長への取り組みを強化できることをうれしく思う」と述べました。
実は、デルタ航空は以前にも東京-成田経由で台北に就航していたのですが、同社が東京便の拠点空港を成田から羽田空港に移したことを契機に(発着便数制限の関係もあり)この台北便は2017年に終了し、ほかの成田経由のアジア便もすべて休止となっていました。しかし、その状況も、この台北直行便の開設で来年から劇的に変わりそうです。
というのもこの台北・桃園国際空港は、デルタと同じ航空アライアンスに所属する台湾の航空会社チャイナエアラインの一大ハブでもあるからなんですね。デルタの乗客をタイ、ベトナム、インドネシア、フィリピンなどの東南アジアの人気観光地に台北経由で運んでくれることになるわけ。
まあ、同じことは米国側でも言えます。デルタの本拠地は南部最大のハブ空港アトランタですが、アジア・太平洋地域に向けたハブ拠点となれば、なんと言ってもシアトルで、ここにも全米地域からの路線が集中しているため、全米からの旅客を1回の接続で台北に送り込めます。
もともとシアトルは、「アジアの巨人」と言われアジアに強大な航空ネットワークを誇っていた旧ノースウエスト航空の拠点空港でした。デルタはノースウエストを2008年に吸収合併して、その路線権とシアトル・ハブの施設と機能をそっくり手中にしていたのです。
すなわち、このシアトル〜台北ノンストップ便には、米国側でもアジア側でも大きく販路を広げる戦略的な航空路線ということになるんですね。
近年、米国の航空会社は(不況が続く)ヨーロッパ路線の運航便数を半減あるいは3分の1ぐらいまで路線によっては減便し、代わりに成長著しいアジア・太平洋地域への展開を増やしつつあります。デルタ航空を例にとっても昨22年だけで、東京と中国への路線を再開したほか、豪シドニー向けを増便し、オークランド(NZ)とタヒチへの路線を開いています。
それだけにこの米〜台湾路線も競合が激しくなりそう。米ビッグスリーのもうひとつユナイテッド航空もすでにサンフランシスコから台北への直行便を営業していますし、そのユナイテッドと同じアライアンスの台湾エバー航空も台北からシカゴ、ロサンゼルス、ニューヨークなどの米拠点都市に直行便を開いています。
もちろん、デルタと提携するチャイナエアラインも米の主要都市はおろかハワイにも進出しているところ。さらには新規参入の台湾スターラックス航空は今年初めにロサンゼルスへの就航を開始し、近い将来、サンフランシスコとシアトルにも乗り入れ計画を立てていると言われています。
中国本土の影が台湾に圧力を加えつつある昨今ですが、こうした米台双方のエアラインによる路線強化の動きは、米国による台湾支援の意向を明確にするひとつの表れであるのかも知れませんね。
2023年12月8日掲載