中国による日本産水産物の輸入禁止、各業界に影響広がる
中国政府が日本産の水産物の輸入を全面停止する措置に出てから1ヵ月が経過した。
中国では、8月における日本からの水産物輸入額が前年同月比67.6%減の1億4902万元(約30億2000万円)と大幅に減少、7月は同29%だった減少幅が全面禁輸でさらに拡大した形となった。
中国政府は2011年の東日本大震災以降、原発事故を理由に10都県産(福島/宮城/茨城/栃木/群馬/埼玉/千葉/東京/長野/新潟)については、水産物を含むほぼすべての食品の輸入を停止しているが、これを日本全国に対象範囲を広げたわけである。
中国政府は、日本から輸入した水産品をはじめとする食品全般について、放射性物質検査証明や原産地証明を求めていたが、ことし7月から福島県を含む10都県からの食品輸入停止維持のほか、その他の日本からの輸入食品、特に水産品については、必要書類の確認を厳格に行うとともに100%検査を実施している。この措置により、水産物が検査名目で税関に留め置かれる事例が増え、鮮魚など日本からの輸出が実質的にストップした。
実際、7月の日本からの中国向け水産物の輸出額は、前年同月比23%減の77億円で、農林水産省によると前年を下回るのは2021年1月以来、2年半ぶりという。
また中国と同様に香港も8月24日から、10都県(福島/宮城/茨城/栃木/群馬/埼玉/千葉/東京/長野/新潟)からの水産物の輸入禁止措置を開始している。
昨22年の日本の食品輸出において、中国+香港向けは全体の36%を占める圧倒的な輸出先1位で、その中国+香港向け食品のうち、3割以上を占めるのが水産品だ。
日本の水産物輸出総額に占める中国の比率は22.5%、香港は19.5%と合計で42.0%にも達する。中国と香港による水産物の輸入停止措置により、これがいっきにゼロとなるわけで、日本の漁業・水産食品業界にとって大打撃となるだけでなく、農林水産品の輸出拡大をめざす日本の戦略にも逆風となる。
一方、物流業界ではエアによる中国向け水産物輸送が一時ストップするなどの影響が出ているが、意外にも大きな混乱は起きていないようだ。というのも、食品輸出、とくに生鮮品については少量・多品種で貨物としての規模が小さいため、現状、物流現場で大きな支障は出ていないという。ただ、中国・香港向けの在庫がはけないため、今後、冷凍・冷蔵倉庫が不足するという懸念もあるという。
せっかく順調に伸びてきた日本の食品輸出が腰折れしないよう、中国に対する日本政府の早急な対応が求められている。
2023年9月27日掲載
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