【雑話】キミの”何者かになりたい”はどう代謝されたがっている?
「何者かになりたい」
VRCコミュニティにおいて、主に新しい人からしばしば聞く言葉。
この"何者かになりたい"という表現。自分も似た時期があったからわかるけれど。こんなことを言いたくなる状態にある時ほど、『誰にとっての』『どのような』何者になりたいのかが。総じて抜けていて、自分自身ですらうまく絞れてない・認識できていないことが多いような気がする。
ターゲットも。源泉の欲望も。丁寧にとらえないと言葉で形にしにくいものだから。油断すると持ちたいイメージがホテルの朝食食べ放題バイキングみたいに、持ちたいだけどんどん膨らんでしまう。あれにもなりたい気がする。これにもなりたい気がする。そうなると必要な行動だって、中々定まってくれない。そして他人からの意見やフィードバックは反対に響きにくくなってしまう。「自分なんてとてもとても」と言った極端なへりくだりとしてだったり、「あの人は自分と違ってあんなに恵まれてる!ずるい!」という嫉妬としてだったり。
そもそも、絶対的な影響力・知名度を持った"何者か"なんて(独裁国家の為政者とかを除いて)存在せず、また同じ意味合いで解釈され続ける"何者か"も存在しない。
若年層に有名なアーティストは壮年層には認知されていないことが多いし、学問の探求が進んで、人物解釈が180度変わった歴史上の人物だって少なくない。"何者か"とは、それほど相対的で流動的な価値概念なのだ。
まずはそういった意味で、『誰にとっての』何者かになりたいかを考えるのはとても意味がある。
それはそれとして… 自分の目の前にキラキラと輝く人達を多く見るからこそ。なぜか体のどこかから"何者かになりたい"という、ふつふつとした欲望が出る事もまた自然な事だと思う。
この欲望をうまく代謝しないまま目を背けるのも、自分の成長にはまた良くない事の様な気がする。
そんな時、先述した『誰にとっての』何者になりたいか。を意識して、言葉を代謝してあげるといいと考えてる。
仲良くなることに長けていて、みんなに愛されているあの人や、改変や創作の技術に長けていて、尊敬の目を向けられて止まない憧れのあの人も。当然、いきなりその状態から始まったわけじゃない。関係性のネットワークは、いつの時代、どんな場所でも最初の一人・最初の一か所をきっかけにして、その幹を広げていく。
その人たちも、そのように色んな人からの関心を向けられるようになった最初のきっかけには。自分たちと同じように。多分"憧れ"みたいなものがどこかにあったはずなんだ。
『わたしもあの人みたいになりたい』
『わたしもあの人のように愛されてみたい』
そういった、少し恥ずかしくて、少し目を背けたくて、だからこそ人に言いにくくて、だから他の高尚で難しい言葉に置き換えようとして、色んな修飾をしてしまって、ある時ふと分からなくなる"欲望"としての憧れが。
『何者かになりたい』で悩んでいる人の『なりたい』には、多くの場合そんなものがこっそり潜んでいると思う。
わたしもそうだった。
幼児のように何もかもわからなくなって、ただただお世話されていたい。
頼られてばかりで 頼りたい時に、泣きたい時に泣けなかった。だから誰かに教えられたり、付き従ったりして学びを得たい。
しっとりふんわり、皆を癒せる話のできるあの人がうらやましい。同じようにすることで、いつかわたしも愛されてみたい。
物書きをしてるあの人みたいに、上手く言葉を使いたい。そうすることで、自分とうまく向き合いたいし、自分の本音をよりはっきり見たい。
単純に、ボードゲームやVRらしいゲームでみんなと遊びたい。
そういった欲望が、重なり重なり大きな塊になって自分の『何者かになりたい』に絡みついてしまっていた。何から手を付ければ、どう手を付けていいのかが上手に考えられない。
でもこれを恥ずかしがらず、悪い物とも思わず…
一度飲み込んであげることが。今はかえってとても大事なことだと考えている。
それはそれとして…。やっぱり、そんな欲望はいきなりは叶わない。
こんな欲望を持つということは、たいてい自信がなかったり、自分に人のネットワークがあまり、あるいは全くない状態だったりする。
思考ばかりが膨らんでいても、実践では殆どの場合うまく結びつかない。
だから最初は地道に、先述したすでに何者かになっている人たちの真似をすると良いと思う。
誰か一人にだけ。どこか一カ所にだけ。特定の時間だけ。特定の一行動だけ。小さく働きかける事から始めよう。そういった形で、自分のなりたい"何者か"を分解してあげよう。
働きかける理由は、些細なことでも何でもいい。
人を害したり嫌な気持ちにさせたり、悪い種を撒くわけじゃないなら、ほんの少しなら嘘があってもいいとさえ思う。
その積み重ねがきっといつか、貴方を何者かにしてくれる。
例えば、『幼児のように甘えてみたい』という、さっきのわたしの欲望から先の小さな行動を考えるなら。
わたしを見る人 に見た目からパーソナリティを理解してもらうために、boothで小さな可愛い子のアバターを探して、unityを頑張ってアップロードしてみる。
わたしを見る人 にギャップを感じさせないために、アバターの見た目に沿ったふるまい・言動をゆるくふんわりしたものに少しずつ変えてみる(断定調で喋らない/なんにでも興味を示してみる/褒めは素直に受け取る etc…)
わたしと初めて話す人 に『いきなり距離感詰めてくる変な人だな』と覚えられないために、最初は1分だけ。一言だけ。一話題だけ関われたらOKってことにする。その時は、相手の好きな話題を投げてあげる。「正直それほど関心ないんだよね」って思ってる事柄でも、調べたりしながら、頑張って投げる。人間好きな事を喋ると楽しいし、楽しいとわたしに良い印象を持ちやすいから。
わたしと対面して話す人 に『悪い人じゃない』と印象付けてもらうために、ちゃんと挨拶をして、変にキョドキョドうろうろせず、1つ話題を投げられたら1つは必ず返すようにして、まだ知らない人にも頑張って挨拶だけはする。それなりに長い時間が必要だけど、きっといつか自分が投げる関心や話題の数より、相手が投げる関心や話題の数の方が多くなる日がきっとくる。
わたしと対面して話す人と仲がいい人 にもお近づきになるために、普段の遊び方や話す場所にも頑張って関心を向けて、今度は別の人にも同じように働きかける。その繰り返しで、わたしがこの場所に関わりたいパーソナリティの姿を覚えてもらう…
こんな感じのことを。NewUserやUserの頃は意識していたのをよく覚えている。小さく小さく、一人一人から本懐をかなえていく。
それは最初に考えていた『何者か』からは程遠くて、程遠さから自分の能力不足をふと実感したり、「この悩みはいつになったら軽くなるんだろう」と不毛に悩んだり、欲しい感情の量が足りなくて、時々暖かさに飢えるような気持ちになったこともあるけれど。それでも確かに、わたしが持ちたいイメージが広がっているのは感じられるから、明日も頑張ってみよう。そしてまたその事を褒められてみよう…という気持ちで奮することはできる。
そうしていると、ふとパラパラと。新たな出会いのきっかけが舞い込むようになった。
「こういうDiscordのサーバがあるんだけど、よかったら入ってみない?」
「このワールドによく来る人で忘年会するんだ! 一緒に来ない?」
「麻雀大会があるんだけど、一緒のチームにならない?」
「あなたはまさか、あの〇〇を書いたスーア先生?!」
「わぁ、あなたのTwitterいつも見てますよ! かわいい人だなぁ…」
「良かったら、こういうイベントのキャストになってくれないかな?」
こういった流れが続いた時。とても安心したことを覚えてる。
自分が小さく小さく歩いてきたことが、無駄ではなかったんだと。
ゆっくりゆっくりだけど、本心に近い感覚でお話できる人が増えた。小さな子供のように、しっとりと甘えられる人も増えた。何か高尚なテーマを定めて、学術を深めるように会話を投げ合える人も増えた。ボードゲームやVRゲームで、わいわいと遊び合える人達も増えた。
その様は最初に思った綺麗でかっこいい『何者か』とは全く同じじゃなくても。欲望ばかりに振り回されて、その叶え方のための技術や言葉も何も持たなかった頃より。はるかにたくさんの事ができて、たくさんの人を愛せる人になれてる実感がある。あんなにあんなに、卑小でちっぽけだった自分が… みたいに。
こんな自分の話が、どこまで参考になるかはわからないけれど…
そんな感じで。『何者かになりたい』って願望が捨てられない人ほど。その願いが大きすぎて、振り回されて悩んでいる人ほど。
正直に目を向けると、恥ずかしかったりドロドロしてたりで。他人どころか自分でもうまく認識できず、他の高尚な言葉や目的で置き換えようとしちゃう 本音としての欲望から『誰にとっての』『どのような』何者かになりたいかを… 一度は。一回は。ありのままの姿で、認識してあげると良いと思う。
認識してあげたら、一人から。一か所から。一話題から。
小さく小さく、それをかなえてあげるためのプロセスを。踏んであげると良いと思う。
一歩が踏めたら、それを繰り返し踏み続けていられると良いと思う。
その繰り返しが何時か、貴方を何者かにすると思うから。
それは最初に描いていた『何者か』とは違うかもしれないけれど、けれど確かに貴方に大きな姿を纏わせてくれて、間違いなく最初には得られなかった色んなきっかけを、もたらしてくれる大きな力になるから。
有名配信者効果で新しい人が沢山VRChatに流れ込んでは、そういった『何者かになりたい』みたいな話を最近よく見聞きして、自分がそうだった頃をなんとなく思い出したので、自戒や振り返りの目的も兼ねての そんなおきもちNoteでした
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