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【詩作】寒空の自販機と、暖かい缶珈琲

現実の生き辛さは、冬の寒空と似ている。
どこかで暖かさを見つけて包まれなければ、長くは生きられない所が。

寒空の下に点在する自販機は、興味深く思う人との関わりに似ている。
歩きながら見つけたり見つけられなかったりする所や、対価を元にそこから飲み物を得たくなる所が。

寒空の下飲む暖かい缶珈琲は、生き辛さを凌ぐ刹那的な愛情と似ている。
いつかはまた冷める温かみだと分かっていても、手軽に心が満たされてしまう所が。

愛情に飢える感覚は、暖かな缶珈琲欲しさに自販機を探す心理と似ている。
いつまでも続かない温かみだと分かっていても、そうでもしないと死にそうな気持ちに至ってしまう所が。

人に依存している時のもったりした時間の流れは、同じ珈琲を飲み続ける時の味の変化と似ている。
味が舌に重く纏わりつくようになるが、確かに暖かくなるので飲むのをやめるのが口寂しい所が。

たまの冒険は、好む自販機からある日離れる事と似ている。
そうでもしなければ、いつか缶と一緒に愛情が無くなってしまうのではと、うっすら恐れながらする所が。

好奇心は、まだ見ぬ自販機の品ぞろえを想い歩き出す事と似ている。
遠い場所の異なる文化は、目新しくつい意識を惹かれる所が。

信仰は、歩く道のどこかには自販機があると信じる事と似ている。
暖かさが実際に・具体的にどこにあると知っているわけではなくとも、どこかにはあると強く信じていれば大抵の事には耐えられる所が。

日々の営みは。信仰を忘れてしまわないために、見つけた自販機でたまに珈琲を飲むことと似ている。
崇高な思いばかりでも、動物的な思いばかりでも生きていない所が。

暮らしは、そう珈琲の暖かさを体に注ぎ足しつつ、寝床になる穴倉を見つけたり作る行動に似ている。
生きる上で最後に辿り着きたい場所が、人それぞれ違っているという所が。


人生は、そんなものの数々からなる散文とくり返しに似ている。
全てを知ろうと筆を走らせ、全てを知る前に筆が止まるところが。

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