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Empty Big Box の急増に見る米国流通の未来(1)

この数年、カリフォルニアやニューヨークに行くたびに何となく感じていた米国流通業界激変の兆しのようなものが、とうとう現実になってきたようだ。全米各地に建設されてきたリージョナル型のショッピングセンター(SC)ではテナントが抜けてしまった空きスペースが数多く見られるようになってきた。さらに主要幹線道路沿いに建設されたコミュニティ型のSCでも、そして複数の大型専門ディスカウンターを集めて絶対的な集客力を誇ってきたはずのパワーセンターにおいても、空きスペースが目立つようになってきたのだ。

このような惨憺たる状況を、ビジネス・インサイダー誌が具体的なデータを示して報告している。同誌のデータを見ると、2017年前期に店舗を閉鎖予定のチェーンの数はすでに記録すべきレベルに達していることがわかる。以下、掲載されたデータから主だった店舗を書き出してみる。

ディスカウントの靴リテーラーチェーンの「ペイレス・シューストア」が2017年に閉鎖を予定している店舗は約1,000店。弱電や電気パーツ販売の「ラディオシャック」は552店舗、女性アパレルSPAの「リミテッド」は250店舗(別のブログで既報)、同じく女性アパレルSPAの「ウェットシール」は171店舗、同じく「べべ」は170店舗、カラフルなプラスチック製サンダルの「クロックス」は160店舗、GMSの「JCペニー」は138店舗、女性アパレルSPAの「BCBG」は120店舗、総合ディスカウントストアの「Kマート」は108店舗、文具ディスカウンターの「ステイプルズ」は70店舗、ドラッグストアチェーンの「CVS」は70店舗、百貨店チェーンの「メイシーズ」は68店舗、カジュアルファッションの「アバクロ(アバークロンビー&フィッチ)」は60店舗、同じくカジュアルファッションの「ゲス」もやはり60店舗、GMSの「シアーズ」は42店舗、という具合。

とりあえずここに掲載しただけでも、合計3,149もの店舗が今年中にシャッターを下ろす。しかもその多くが、いわゆる大型の郊外型モールにおける主要なテナントであり、それらがモールに与えてきた魅力はモールの集客力の源泉となってきたはずだ。またメーシーズやシアーズなどはモールにおける核店舗として、モールに欠かすことのできない存在感を与える店舗だった。なかでも「ビッグボックス」と総称される大型の小売り店舗においてそうした傾向は著しい。その2種類の米国流通にとって重要な要素が主要な幹線道路やモールからいま姿を消そうとしているのだ。

2017年度だけでも3,000店舗を超える規模で出現しようとしているBig Box。主要なテナントや核店舗を失ったモールはどのように顧客を集めるのか? まさに巨大な空箱になってしまった「Empty Big Box」はこれからの米国社会とビジネスにどのような影響をもたらせるのか? いったい米国で何が起こっているのか? これから数回連続して考えてみたい。

(以下シリーズ2につづく)

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