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コンサルタントの会議ファシリテーション術
みなさんこんにちは。
マーケティングディレクター兼データサイエンティストのtohari.です。
今回は、マーケティングやプロモーションの企画業務に携わる方向けに、「効果的なブレスト会議の進め方」について書いていきます。
この業務って、普段の仕事の中で結構時間取られていますよね?
同時になかなかうまく進まないことが多い。というか、効率的に進む会議の方が少ないのではないかと思います。話があちこち飛んだり、雑談が入り混じってきたり。それでどんどん時間が長くなって、しまいには時間切れで結論がよくわからないまま終了、なんてことは日常茶飯事です。
これ、なんとかしたいですよね?
今回の記事はそんな方向けのものです。
会議のファシリテーション力もマーケティングコンサルタントの重要なスキルですので、ぜひ参考にしていただければと思います。
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広告会社のよくある会議風景
まずこちらをご覧ください。
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企画のブレスト会議に参加したことある方でしたら、少なからず共感いただけるのではないかと思います。
このような会議の中で起こっていることを整理すると、以下のようになるかと思います。
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冒頭でも書きましたが、このような状況は本当によくあることかと思います。
もちろん色々な雑談の中でヒントが生まれてくることもありますし、遊び心の中で面白いアイデアが生まれたりもするので、そのような会議の全てが悪いわけではありませんが、多くの場合は生産性の低い会議で終わってしまいます。
日本の労働生産性は先進国中ぶっちぎりで最下位
実はこんなデータもあります。
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2020年なので少し前のデータではありますが、OECD加盟国37カ国の中で、実は日本の労働生産性はなんと26位。主要先進国の中では1970年以降日本はずっと最下位をキープしているという驚きのデータです。
1980年台の日本の高度成長期を考えると、いかに長時間労働で生産性の低さをカバーしていたのかがよくわかります。
もちろんこのデータはいわゆるホワイトカラーの仕事だけを対象としているわけではありませんが、会議の非効率さもこの結果を生んでいる1つであることは容易に予想できます。
売り上げの低い会社ほど会議が長いと言いますしね。
こうした労働生産性の低さの原因の1つして、時間に対する意識の問題は大きいように思います。
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個人的にこれまでの仕事を振り返ってみても、「時間は借り物」という概念は確かになかったです。
でもこうした意識を全員が持つだけで、会議の形もだいぶ変わるようには思います。
ちなみに、会議を効率化することでどの程度業務が改善されるのか、簡単に試算してみました。
もちろん人によって差はあると思いますので、あくまで参考として捉えてください。
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仮に1回2時間、1日に2-3回、週に3-5日ミーティングを行った場合、1ヶ月の会議に要する時間は48-120時間程度になります。1日8時間労働を基本とした場合、その中で会議が占める割合は実に30-75%にも及びます。
ただし、広告会社や制作会社の場合、長時間労働の人が多いですので、実際の割合はもっと少なくなるかとは思います。でも、そもそも会議が長くて多いので長時間労働になっているケースも多く、仮に会議を半分の時間で済ませることができれば、かなりの労働時間短縮にはなるはずです。
そして会議時間を半分にするというのも、個人的には特に十分可能な範囲だとも思います。
事実、筆者がリードするブレスト会議の場合、30分から長くても1時間で終わらせています。
効果的な会議の進め方
それではどうすれば会議を効果的にすることができるのか、筆者から2つほどご提案させていただきます。
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それでは1つ1つご紹介していきますが、長くなりますので、今回は(1)のみお話ししていきます。
*(2)については、「アイデア発想術」としてチーム発想、個人発想を合わせて、別記事でご紹介します。
会議の「問いと枠組み」とは?
① 「問い」を正しく設定する
会議の「問い」とは、話あうべきテーマのことです。
冒頭の例で言えば、「どのような新商品プロモーションを行うか」になります。
これって、一見簡単なように思いますが、意外に落とし穴も多く、気をつけないと誤解していた、ということも少なくありません。
こちらをちょっとご覧ください。
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さて、あなたはどう考えますか?
正解は
実は、「どちらでもない」です。
*1または2とすぐ答えた方、気をつけてください。普段の仕事でも同じようなミスをしているかもしれません。
と言いますのも、与えられた情報だけでは、どちらのスタンスに立てば良いのかわからないからです。
つまり、考えるべき問いを正しく捉えるには、状況を再確認する必要がある、ということです。
どういうことか、具体的にご説明します。
ポイントは、「料理が出てくるのが遅いとの不満がある」という状況が、今のレストランへの不満の全てなのかどうかがわからない、ということに気づけるかどうかにあります。
例えば、
これが不満の全てであれば、このテーマに限定して議論すれば良いので、考えるべき問いは「1=料理の待ち時間を減らすにはどうするか?」になります。
ですが、
これが不満の1例として上がっているだけなら、このテーマだけを考えても十分でないので、考えるべき問いは「2=顧客の不満を無くすにはどうするか?」が正解になります。
与えられた前提に不透明な部分があればそれを補う必要がありますが、よくあるのが不透明な部分を個人個人で勝手に埋めてしまい、個人個人で異なる問いの設定をしてしまう、ということです。
各自で異なる問いの理解の上で議論に入ってしまうと、こんなことが起こってしまいます。
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個人的にはよく見かける状態です。
ですので、わかっているとは思っても、会議の前には問いに対してきちんと共通認識を図ることが必要です。
コンサルタントであれば、こういう基本動作もしっかりしていなければなりません。
② 会議の「枠組み」とは? *超重要(コンサルタントの腕の見せ所)
さて、ここからが本番です。
「枠組み」とは何か、整理してみました。
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これだけだとちょっとわかりづらいと思うので、普通のアジェンダとの違いの中で、枠組みの説明を深めたいと思います。
別の記事(ロジカルシンキングができるようになる、たった2つの思考習慣)で登場してもらったロジカルさんにまた来てもらいました。
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まず、普通にアジェンダを設定しただけの会議だと、アイデアがバラバラ出てきて、議論が十分であるかどうかが見えず、話も脱線しやすくなります。
一方で、枠組みの場合は・・・・
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問いに答えるための必要な論点が、構造的に整理された状態にあります。
この構造を会議の前に想定し、メンバーと共有して会議をスタートさせる、というのが「問いと枠組みのある会議」になります。
そしてその枠組みを問いに対して抜け漏れなく示せると、会議は一気に合理化に向かいます。
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でも、例えばどんなプロモーション提案をするかといった会議の場合、最初に枠組みを提示するのってそんなに簡単じゃない、と思われるかもしれません。
確かにそうではありますが、でも、だからこそコンサルタントの腕の見せ所なんです。会議の前にどんなアイデアが出てきそうか、一人でアイデア出しをしてみると良いと思います。そこから、アイデアの種類を分類していけば、完全ではないかもしれませんが、ある程度の枠組みができ上がります。
優秀なコンサルタントはその精度が高いわけですが、そのレベルまで達していなくても、自分なりにアイデアの種類の全体感を描いた状態で会議に参加するだけで、意見をコントロールするのはそれほど難しくなくなります。
やってみればわかります。
枠組みづくりには会議の事前準備が必要ですが、ちゃんと準備すればちゃんと会議をリードできますし、準備作業も慣れてくればどんどん時間短縮できるようになります。
さらに枠組みをもう1歩深めて、このようなレベルまで落とし込めれば完璧です。
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おそらく話は脱線せず、決められた時間内にしっかりとした話し合いができるようになります。
枠組みづくりのポイントは、「問い」につながるアイデアの種類の全体感を描くところにあります。そしてそれをアジェンダとして落とし込む。
俯瞰的・構造的に捉える思考力が問われますが、これができると会議はとても合理化するというわけです。
まとめ
いかがでしたでしょうか?
まず日本の労働生産性の低さには驚きですよね?
外国と比べてこんなレベルにあるんだと、筆者もあらためて考えさせられました。
そして広告会社や制作会社で行う効果的なアイデアブレストに悩む方に向け、「問いと枠組み」という視点をご紹介させていただきました。
「問い」については、今話し合うべきテーマをきちんとメンバー間で共有することの大切さ、そして「枠組み」については、ブレストmtg前に議論の全体感を大まかでも構想する大切さをお話させていただきました。
全体を見渡す力はコンサルタントに求められる必須スキルです。
といってもそれほど難しいことはなく、たった3つの作業です。
まず個人でアイデア出しをしてみる
出てきたアイデアを分類してみる
分類を見て足りない分類がないかを考え、あれば付け足したり、修正する
ご自身がブレスト会議をリードする立場かどうかは関係なく、一度会議の前にこの作業を30分だけ時間とってやってみてください。
それを持って議論に臨むと、まず今までの会議がいかに無秩序だったかわかると思います。
そしてもし可能なら、ご自身で議論を調整する役割を果たしてみてください。全体感を大まかにでも掴んでいれば、きっとうまくできると思います。