建設業(ゼネコン)の「大変な所」と「やってて良かったと思える所」
はじめに
皆さんこんにちは!現場監督の亀井です。今日は私が建設業(ゼネコン)で働いていて「大変な所」と「やってて良かったと思える所」について紹介したいと思います。これから建設業(特に職種で言うと、現場監督)として働いてみたいと思っている方の参考になるかと思います。私はかれこれ14年間くらい現場監督として働いておりますが、これまでの沢山の経験を思い出しながら書き出していきたいと思います。
大変なところ・キツイところ
①仕事時間が長い(肉体的・精神的にハードワークになりやすい)
まずは大変な所から語っていきたいと思いますが、建設業と言えば殆どの方が「長時間労働で体力的にキツイ、毎日夜遅い、休みが少ない」というイメージを持っていると思います。僕が入社する前も、やはり皆ゼネコンって大変そうというイメ-ジが強かったと思います。
そして実際に働いてみて思うのは、やはりゼネコンという職業は忙しく、夜も帰るのが遅いというのが本音です。現場ごとに工期も違えば規模も違うので、一概には言えないところがあるのですが、他の業界に比べると勤務時間は長い傾向があります。
あとは工期が厳しかったり、施工の条件が厳しい「夜間や休日しかできない」とかで休日が不規則になったりもします。これは配属された現場により違うので何とも言えないですね。ただ、最近は36協定の改定や週休2日制の導入など長時間労働について大分改善されてきた感じはあります。
【ワークライフバランスの弊害】会社は休めと言っているけど、実際にやっている仕事の量は変わらない為、仕事の効率を上げるか、作業の手を増やす必要がありますが、いきなり人を雇うわけにもいかず、かといって急に効率が上がるわけでは無いので、実際は誰かが休むとその他の人に負担が増えたりしています。
現場ICツールの現場活用を増やして効率を上げる取り組みをしたりしていますが、現状はまだ中々課題が多いというのが建設業の実体かと思います。
②責任が重い(人と社会に対する)
続いて、建設業の大変な所2点目ですが、それは「責任が重い」ということですね。人と社会に対する責任という意味ですが、例えば工事中であれば、工事中に事故を起こして人がケガをしたり死んでしまったりすると、下手をすると現場を管理していた監督や所長が警察に書類送検されたりします。
(※もちろんしっかり管理していればそんな事態にはなりませんが、間違った指示や、不適切な設備で作業をさせていたりするとそういったリスクがあります。)
また、工事中に現場に設置した外部足場が台風で倒れてしまったり、掘削中に道路に陥没が発生したり、クレーンが倒れて仮囲いの外に飛び出てしまったり、こういった現象が発生すると、すぐにニュースになって、「〇〇建設、足場倒壊!!」といった感じでニュースになり、社会的にも大きな影響が出てしまいます。
建設業の現場で仕事をしていると、多かれ少なかれ上記のようなリスクを常に身近に感じながら仕事をしなければなりません。ただでさえ忙しい現場で、そういったリスクを常に感じながら仕事をするのはとてもストレスがかかりますし、ましてや一つの現場の責任を全て背負っている現場所長の責任の重さはとても重大なものがあります。
私も工事中に、目の前で人がケガをしてしまったことがあります。この時は幸いそこまで重篤なケガにはならなかったのと、原因も当方には無かったので責任を問われることは無かったのですが、一歩間違っていたら人が死んでしまっていたかもしれないと思うと、とても責任が重い仕事だなと改めて感じた出来事でした。。。
③不確定な要素(人・天候・運?)が多い中で、確実さ(安全・品質・工期・コスト)を求められる
続いて、大変な所3つ目ですが、それは「不確定な要素が多い中で、常に確実さ・正確さを求められる」という所です。建設現場は、建物をゼロから作っていくという特性上外部で工事を行うことが多いので、当然当地の様々な気象条件によって工事が出来なかったり、止まってしまったりすることがあります。
雨や雪、台風、雷、竜巻など一年に何回発生するか?いつ天気が変わるか?不確定ですね。それによって工程が変更になったり、調整が必要になったりするのですが、それでも工期というデッドラインは変わらないことが多いです。
他にも、建設業は他の製造業と違って機械で物を大量生産するような仕事ではなく、現場でオリジナルな一点ものを基本的に職人の手で作っていくのですが、当然沢山の人が手作業で行っていくので、たまにはミスも発生します。それによる手直しが発生し、想定外の事態や突発的にイレギュラーな作業が発生します。
それでも絶対に事故を起こしてはいけない。また決められた品質は死守しなければならない。まるで、100円しか持っていないのに、80円のガムも必要、30円のパンも必要、ひょっとしたら更に10円のチョコも必要かもしれない・・・といった感じにあとからあとから追加の要求が増えてくることがあるのですが、現場で働く監督たちはそういった無茶な要求に対して様々な工夫を凝らして、何とか100円に収まるように調整をします。
ちょっと変な例えになってしまいましたが、そういった不確定要素が沢山ある中で、それでも決められた目標を絶対に達成することが求められるというのが建設業の非常に大変な所です。
④常に人間関係で仕事をする。思い通りにいかないことが多々ある。
大変な所4つ目ですが、建設業は先にも記載しましたが、現場で沢山の職人さんに依頼して工事をしてもらい建物を作っていく仕事です。決して自分で建物を作るわけでは無いんですね。その為、建設業の仕事は「どうやって人に動いてもらうか?」ということを常に考えて仕事をしていく必要があります。 人が行う仕事なので、当然思い通りにいかないことが多々あります。また沢山の人が一緒に働く現場ではうまく現場をコントロールできないと、人と人とが衝突してしまいます。
現場で働く職人さんたちは、普段はとても気さくで話しやすくて大好きなのですが、同時にプライドも高く自分の仕事に絶対の自信をもって仕事をしている人が多いです。その為、たまにお互いの考えが合わなかったり、彼らのプライドを傷つけてしまったりすると、仕事がスムーズに進まなくなってしまったり、作業をしてくれなかったり(※職人さんは、現場でお金を稼ぐためにもちろん仕事をしてくれますが、お金じゃなく「この監督のいう事なら、しょうがないから聞いてやるか」とか逆に「こいつの言う事なんか聞かないよ」とか人を見て仕事をする傾向があります。)する時があります。
また政府や客先、職場の上司や会社といった様々な人間関係の中で仕事をするので、色々な人の思惑が重なりこれまた調整するのにたくさんの労力が必要になったりします。そういった調整を現場の中心となってコントロールするのがゼネコンの現場監督の仕事の一つなんですが、一番大変な部分でもあります。
良かったと思える所・やりがいを感じる所
①「自分の仕事が目に見える、形になって社会に残る」
さて、では逆に建設業をやってきて良かったと思える所や、やりがいを感じる場面を紹介していきたいと思います。先ほど紹介したように建設業は、仕事も忙しく・責任も重大でかつ・無理難題を何とか解決していく大変なことが多いですが、それでもとてもたくさんの人が建設業を止めずに続けているのは、建設業には大変なことや辛いことを時に上回るやりがいや、楽しいことが有るからだと思います。(⇒割合的には大変なことの方がはるかに多いかもしれないですが・・・笑)
まず、一つ目は「自分の仕事が目に見える、形になって社会に残る」ことだと思います。建設業に努めていると、何もない更地の地面に新しく建物が出来ていくのを身近で見ることが出来ます。一度経験してみないと分からないですが、やはり自分が携わった建物が完成して実際に人が使い始めるのを見た時は、それまでの苦労が大きいほど、大きな達成感を味わうことが出来ます。
工事中も例えば自分が担当した工事が完了した時、コンクリートの打設が完了した時や、鉄骨の建方が完了した時、他にも仮設工事が完了した時など、目の前で自分が計画したことが形になっていくという過程を見ることが出来るので、自分が現場にどうやって貢献しているかという事が分かり易いという事がいい所だと思います。
私が日本にいた時に最後に担当した横浜のみなとみらいの現場は、工事の請負金額が300億円以上あり、横浜の支店では大規模な高級ホテルの建設現場でした。私はその現場に当初の計画段階から参入していたのですが、3年の工期の中でそれこそ色々な問題やトラブル等がありましたが、それを全部乗り越えて工期通り建物を施主に引き渡すことが出来ました。
その建物に実際に照明が付き、ホテルの利用が開始されているのを見た時、建設業という仕事は、確かにきつくて大変なことが多いけど、私たちが建物を作ることで、社会の多くの人の役に立っているんだなという事を改めて実感することが出来ました。
②いい計画をすると、施主も職人も上司が喜び、自分も満足できる
現場では、何事も『計画』が一番と言われます。何をやるにせよ常に頭の中には『計画』の二文字が入っています。計画をせずに工事を行うと、行き当たりばったりになってしまたり、工事がやり直しになってしまったり、スムーズに進みません。一緒に仕事をしている職人や上司にも迷惑を掛けたりしてしまうので、現場では新入社員の時から上司や先輩社員から『常に先手で計画を立てろ』と言われます。
いい計画とは、すなわち職人が働きやすく、工事がスムーズに進み、上司や施主も満足する計画の事です。その様な計画を自分で作ることが出来るようになってくると、現場の作業を自分が思い描いた様にコントロールすることができ、段々と建設業の仕事が楽しくなってきます。
そして工事の計画を作る上で必須となるのが『工程表』です。建設業ではとにかく工程表を作ることが出来なければ何も始まりません。私が現場で工事管理をするうえで一番重視していると言っても過言では無いです。
いい計画・いい現場・いい建物、全て工程表から出来ていきます。私が新入社員の時、ある上司から『工程表』を書いてみろと言われ、良く分からないながら工事の順番を考えて自分で工程表を作ってみました。それが会社で初めて作った工程表でした。その上司は私の作った工程表を見て、『全然だめだな、いいか、工程表が書ければ工事は終わるんだ、逆に工程がかけなければ工事は終わらない』という様な事を言われました。
正直その時は、そーですか・・良く分からん。と思っていましたが、今になってみると、工程表の上に、現場で必要な作業を洗いざらい全て記入した工程表を作成することが出来れば、作業の管理がとてもしやすく、手戻りや作業の漏れを無くすことが出来るという事を言いたかったのだと理解することができます。
③人と人とのつながり、同じ現場で一緒に関わった人達は忘れない思い出となる
次に建設業のいい所は、時々大変な所もありますが『人と人とのつながり』です。基本的に建設業では、一つの現場で工事中同じ上司や職人と建物を作るという共通の目的に向け、仕事を行うのですが、雨の日も風の日も一緒に現場で働いた人たちは、たとえその現場が終わっても決して忘れないですし、現場で一緒に戦った戦友の様に深い絆で結ばれる人たちもいます。
働く役職によって、段々と関わる人は変わっていくものですが、特に現場で大変な時に助けてくれた職人や上司、いつも慕ってくれた後輩、ありがとうと言ってくれたお客さんの事は、多分この先も忘れられない記憶となるのだろうと思います。
④『終わらない現場は無い』いい現場も・悪い現場もいつかは終わる
最後になりますが、建設業の良い所は『終わらない現場は無い』という事です。どのようなプロジェクトも工期があり、いつかは必ず終わりが来ます。工事中どんなに辛かったり、苦しかったりしても、いつかは終わりが来て、皆現場を離れます。厳しい上司や嫌なお客さんともそれ以降は関わらなくなります。建設業のプロジェクトは1年~3年程度の物が多いですが、それくらいの頻度で職場の人も働く場所もガラッと変わります。
それが建設業のいい所だと思います。私もこれまで、東京➤横浜➤静岡➤浜松➤横浜➤中国と場所を転々としながら働いていますが、色々な場所で色々な人たちと働くことが出来るので、それはそれで楽しみの一つとなっています。
次はどこで働くことになるのか?次はどのような人に出会うのか?建設業では現場単位で、色々な出会いがありますが、同時にいつかは終わりが来て別れが来るというのが面白いところであり、いい所だと思っています。
まとめ
いかがでしたでしょうか?建設業の「大変な所」と「やってて良かったと思える所」を紹介してきました。前半の大変な所はまだ書こうと思えば20ページくらいかけると思うのですが、ページ数の関係で本日は4つばかりにしておきます(笑)。
やってて良かったと思える所は、建設業に入社したての頃は全く思わなかったですが、工事の事を大分覚えてきた5年生くらいの頃になってやっと感じれる様になりました。建設業に入って14年の中堅社員の考えなのでベテランの所長さんからしたらまだまだだって思うかもしれないのですが、とりあえず建設業のイメージを掴むために参考にして頂ければ幸いです。
さて長くなってしまいましたが、今日も最後まで読んで頂きどうもありがとうございます。また会いましょう。
亀井