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読まなくてもよい取説

走り出し

どうしてヒゲの配管工は右方向に前進しながら、リクガメをぴょんぴょん踏みつぶして甲羅だけにしてしまうのか?
──それは、囚われたお姫様を助けるためである。

上記の例はあまりにも不条理だが、一般的には行為にまつわる理由がわかると、それなりの安心が得られる。
そうした意図と自分が文章を書く際の、自分以外があまり得をしない責任感・文責のようなものでこの記事は書かれている。
なので、面倒であればまったく読まなくて結構です。

人間はなぜ物語を読むのか?

まずはweb小説にまつわる、ある種の普遍的な事実を挙げることで、僕とあなたがたは共通の認識を得る。
それと同時にどうだろうか、お友達とまではいかないものの、何となく僕の人となりを知ってくれたあなたがたはレビューに対しての心構えができる。
なんと小賢しい予防線か。
だから、これからの内容に関しては重要な事実というより「ふうん、そんなもんなんだ」程度に聞き流してもらいたい。

web小説を日ごろから消費している僕が、レビューを書こうと考えた際に浮かんだ疑問があった。
──いま読んでいるこれは「なに」なのか? 
──僕はなぜこれを読むのか。そこから拡大して、人間はなぜこれを読むのか?
web小説とは物語である。
物語というのは、古代ギリシャのアリストテレスの語る『詩学』でいう、
「行為をする人物の再現」にあたる。
ちょっと回りくどい言い回しだ。

平たく言ってしまえば、登場人物がなにか物事を動かしたり、何かを成す過程を再体験しているのが「物語を読む」ということだ。

さらには『詩学』によれば
「再現(模倣)をすることは、子供のころから人間にそなわった自然な傾向である」
「つぎに、すべての者が再現されたものをよろこぶことも、人間にそなわった自然な傾向である」
としている。

物語はリアリティのある人物を模倣している、この姿を眺め・推察することで人は喜びを感じる。そして物語を頭の中で再現(模倣)することも、人間にとっては自然な喜びの一部である。というわけだ。

そして、読者は物語に込められた行為によって、カタルシス(感情の浄化)が生みだされる。
カタルシスとは物語を読んで読者が感じた「あわれみ(悲しみ)」「おそれ(恐怖)」といった感情が物語によって解放され、浄化されることとされている。

つまりヒゲの配管工で例えると、彼が懸命に走っている姿や飛び跳ねることを頭の中で再現するのを人は喜ぶ。彼がうっかり穴に落ちたり、茶色い歩くキノコに衝突したり、ハンマーをぶつけられて苦しむ姿によって生まれた悔しさや緊張感が、試行錯誤のうえで最後には旗付きのポールにつかまってゴール、花火が上がる。しまいにゃお姫様まで助ける。ヤッター!
これが物語を読む動機付けとカタルシスの原理だ。

イメージするという行為そのものの喜びと、ヤッター!の解放。
この原理が人に物語を読ませる。

この理屈は僕の中で非常に納得できるものだった。
気持ちいから読む、それだけのごくシンプルな理由で人は物語を消費する。

どうしてレビューを行うのか?

これはほとんど利己的な理由にあたるので少し話すのにためらわれる。
だが待ってほしい、これは利己的だがちゃんと利他的でもある。

自分が好んでいるものを共有して他人にも好んでもらう、そうすると人間は社会において他者と結びつきを感じて幸福を得る。
レビューを書いた作品を誰かに面白いと思ってもらえるだけで、僕はごく僅かにも社会の一員をはたし、幸福と感じてしまうのだ。これには本当にびっくりだ。
自分が喜び、レビューで作品を知った人が喜び、そして作品を書いた作者も読者が増えることで喜ぶ。
なんてこった三方よしってやつだ。

しかもこの循環は加速することで、例えば作品の人気が上がれば出版社が書籍化したり、投稿サイトにはアクセスが増えて広告料が入ったり、もろもろの経済活動によって納税の義務が生じてぶっ〇すぞ国が潤ったりする。
利害関係者が増えて、そのみんなが幸福になる。
実際にはそんなことにはならないが、その可能性があるというだけで充分だ。
うれしいね。

ゴールはどこだ


つまりだ。
web小説のレビューを書くことは僕にとってとても良いことで、そしてそれを読んで面白がる人がいれば、それもあなたがたにとっては良いことだ。
そもそもweb小説を読むことじたいが喜びに繋がるのだから当然なんだ。
誰かの書いたレビューをSNSでシェアなんかしたりするのも素晴らしいことだ。
どんどんやっていい、ためらう理由はどこにもない。
僕らはそうやって発信していくことで社会的なお友達になって、web小説という(人類史の中では)新しい媒体の影響力を高めることを目指していく。
特に面白い作品を書く作者さんには、精神的な報酬だけでなく何かを得てほしい。
何かというか実際には金だ。
欲を言えばamazonの欲しいものリストの物品ではなく、web小説サイト経由でマニーをゲットして作品を作る意欲に繋げられるようになってほしい。

ぜひぜひ、よろしくお願いします。
面白い作品を読みたい僕のために。


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