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ものすごく人見知りだったのに、人と話すのが楽しくなった

We are Buddies の愛梨です。

We are Buddies(WAB)は、子どもと大人ボランティアが2人組のバディズとなり、月に2回×1~2年間、直接会って一緒に遊んだりお話したりしながら、細く長い関係性を築いていくオランダ発祥のプログラムです。
おとなバディとして活動にかかわり、先日2年間のバディ期間を卒業した、前橋医療福祉専門学校 作業療法学科の学生である小林晃瑠(こばやしひかる)さんにインタビューをしました。2年間のバディプログラムを、そして学校も卒業するタイミングで、この2年間を振り返ってお話を聞かせてもらいます。

インタビュアーは、私(加藤愛梨)です。晃瑠さんの相手のこどもバディは、当時小学校低学年の女の子(Nちゃん)。今は、小学校高学年です。

左:晃瑠ちゃん 右:自分(愛梨)

消極的な自分を変えたくて、手を挙げた

加藤愛梨(以下、愛梨)
晃瑠ちゃん、久しぶりだね~。
資格の勉強などで忙しいときに時間をつくってくれて、ありがとう。いろいろ改めて聞いていくね。まず、We are Buddies を知ったきっかけは?
 
小林晃瑠 こばやしひかる(以下、晃瑠)
学校に、愛梨さんたちが紹介で来てくださったので、そのときに知りました。ちょっと勇気を出して、「やりたい。」と伝えました。自分が結構消極的な人間なので、もうちょっと積極的にいろいろ活動とかできるような人を目指して、ボランティアやってみようかなと思って。子どもと触れ合う機会もあんまりないので、そういうところも魅力的だなと思って、応募させてもらいました。1年生だったときに活動を知ったのですが、高校も卒業して、社会人にどんどん近づいていってるなぁと感じる日々だったんです。ボランティアをしたら、就職とかも有利なのかもしれない、という気持ちもありました。将来のため!と思って、勇気を振り絞って、やってみました。

愛梨
ちょっと大人に近づく一歩。最初、おとなバディに興味があることを、どうやって伝えてくれたんだったかな?
 
晃瑠
活動紹介の授業のあとに、アンケートみたいな紙が配られて、そこに丸をつけるんです。参加したいかどうかを表明しないといけなくて。勇気を出して「参加したい」に丸をつけました。そうしたら、愛梨さんたちからメールが来て、面談や研修などが始まっていきました。

愛梨さんとのオンラインでの面談も、ものすごい緊張してました。これから「どう始まっていくのかな」っていう不安と「自分がちゃんとボランティアできるのかな」っていう不安。それと、「楽しみだな」っていうわくわく感があって。さらに、緊張もあって、全部が混ざってしまって、心の中はすごいことになってました。(笑)
 
愛梨
そこまで緊張しているようには見えなかったんだけど、そうだったんだね。1時間くらいオンラインで話したよね。あの面談の時間を今振り返ると、どんな時間だった?
 
晃瑠
いろんなお話ができて、すごく有意義な時間でした。話しているうちに緊張もほぐれて、終わったあとは、「あ~話せて良かった」っていう感じでした。結構いろいろ自分のことを話した気がしますね。あんな風に自分のことをたくさん話す機会って、あんまりなかったんです。消極的なので、周りに自分のことをあまり話してこなかったんですよ。

出会ったこどもバディは、小さい時の自分と似てた

愛梨
相手のお子さんと出会った日のことは覚えてる?
 
晃瑠
小さいときの自分に近いと思った気がします。けっこう人見知りで、人の影に隠れちゃうとか。私みたいだなって思う点があった。だから、ゆっくり距離を縮めて仲良くなっていけたらいいなって思いました。1~2時間くらいだったと思うんですけど、ちょっとずつ近づいてて、ちょっとずつ遊んで…という感じで、少し距離が縮まった気がします。

2人で遊んだ日。左:晃瑠ちゃん 右:Nちゃん

愛梨
出会いの日は事務局メンバーの立ち合いもあったけど、その後、2人で過ごす時間は、どんな風に遊んでた?
 
晃瑠
当時、その子が家の外に出るのがあんまり得意じゃなかったので、その子のお家で遊ぶことから始めることになりました。一緒にゲームをしたり。

保護者の方との対話による、深い学び

愛梨
印象に残ってることはあるかな?
 
晃瑠
愛梨さんとも当時この件についていろいろお話をしたけど、マイクロカプセルのことがあったときのことは、すごく覚えています。
 
愛梨
懐かしい!読者の方々に向けて、補足をしますね。

「マイクロカプセル」は、数マイクロという微細な大きさで、外側の膜にはプラスチックなどが使われ、中には香料が閉じ込められている化学物質で、市販の柔軟剤などに入っていることが多い。香りを持続させるために製品の中に入っているようなのですが、この”香り”によって頭痛やけん怠感などの体調不良を訴える人が増えているそうで、「香害」とも言われています。

https://www3.nhk.or.jp/news/html/20230801/k10014147781000.html

とても多くの製品に入っていて、晃瑠ちゃんが着用していた普段の洋服からも、この匂いが。こどもバディの子のご家族がこの「香害」に敏感で、普段からマイクロカプセルの入っていない柔軟剤を使うことを徹底されていましたが、晃瑠ちゃんがお家に来たときに体調不良になってしまっていたようで。

晃瑠
ご家族の方にとって、ものすごい負担だったみたいです。我が家で洗濯の際に使っている柔軟剤は、マイクロカプセルを含んだものだったので、そのせいだったみたいです。私は実家暮らしで、洗剤も柔軟剤も自分が選んでるわけじゃなかったんですけど、私も実は匂いに対して少し敏感な方で、実家の柔軟剤の香りが強いと感じることは私もあったんです。でも、実家の柔軟剤を変えるとなるとすぐにできなくて、申し訳なさで涙を流す日もありました
 
愛梨
早い段階で言ってくれたのはよかったよね。私も入って、話し合いをしたね。あのとき、どう感じていた?
 
晃瑠
自分も医療関係の仕事に将来就きたいと当時からおもっていたので、マイクロカプセルの香害が、患者さん...子どもにもよくないであろうことを知れたことはとてもよかったです。私自身いろんなことに気をつけて洗剤なども選べたらいいなって思いながらその時間を過ごしてました。その後、自分の家族とも話して、それ以来、マイクロカプセルフリーの洗剤を使っています。自分も香りに敏感なところがあったので、刺激臭が減って、自宅でも過ごしやすくなりました

愛梨
その対話を経て、晃瑠ちゃんのご家族の行動にも影響があったんだね。私もあれ以来、マイクロカプセルフリーの柔軟剤を使うようになったよ。自分はそんなに匂いに敏感な方ではないけど、自宅に遊びに来た人が匂いに敏感な人である可能性はあるし、なるべく多くの人にストレス負荷のない暮らしを作りたいなとおもって。違う人々がこの社会を一緒につくっていくときに、お互いのことを理解するための対話をするって本当に大切だなってそのとき体感したよ。

結果的に、外で遊べるようになった

愛梨
あと、それがきっかけで、外で遊ぶようになったというのも面白かったよね。
 
晃瑠
洗剤を変えても、すぐに匂いゼロになるわけじゃないみたいで、こどもバディのご家族の方と一緒に、解決策を考えました。「室内だと匂いがこもりやすいけど、外ならいいんじゃないか?」というアイディアが出てきて。ほとんどお家から出ないお子さんだったんですけど、一度外で遊んでみたら意外と平気で!(笑)それ以来、だんだんとその子の意識も外に向いていって、お家の外で遊べるようになりました。

クレープを食べに行ったとき。

晃瑠
内面も、どんどん外交的になっていった気がするので、結果的によかったなっていう印象ですね。けやきウォークのフードコートに行ってゲームをしたり、お昼ご飯も食べたり、あと一緒にショッピングをしたり。お互いぬいぐるみが好きなので、ぬいぐるみを見に行ったりとか。いろいろしてきました。敷島公園などで遊ぶこともあったり。アクティブになってきたかなっていう印象です。

愛梨
晃瑠ちゃんと出会っていなくて、マイクロカプセルの問題が起きなければ、Nちゃんは外出が苦手なままだったかもしれない。人と人との出会いって、本当に不思議だね。(笑)

使う言葉が似てきたふたり

愛梨
この2年間、月に2回、会い続けてた?
 
晃瑠
はい、大体は会い続けていました!実習中は難しかったんですけど。
 
愛梨
2年振り返って、どうだった?二人はいまどんな関係性?
 
晃瑠
身長も伸びて、私とほぼ変わらなくなっちゃったんですよ。そういう成長を見られてよかったなっていう気持ちです。関係性は、仲の良い友達みたいな感じです。

愛梨
どんなときに「友達って感じだなぁ」と感じる?
 
晃瑠
一緒にゲームしてるときに、使う言葉とか似てたり。最近は、ヨッシーのゲームを一緒にやってるんですけど、ヨッシーに羽が生える機能があってそれを見た私が「なんかパタパタみたいだね〜」っていうとNちゃんが「パタパタ〜」っておもしろ可愛く言っていたのでつられて私も繰り返してしまったり。そんな風に、ちょっと面白い感じの言葉とかを一緒に使って2人で顔を見合わせて笑っちゃってます。(笑)自分が同年代の友達とかかわってるときと、あんまり変わらないなって思います。

私はおとなだからサンタさんは来ないんだよ~

愛梨
こどもバディの晃瑠ちゃんに対するかかわり方などにも、変化を感じる?
 
晃瑠
最初の頃は、ちょっと一歩引いて、お母さんを通して話をするようなところもあったんですけど、回数も重ねるごとに、だんだん直接私にいろいろ言ってくれるようになってきて。「こないだここ行ったんだよ~」みたいなことを教えてくれたりとか。「晃瑠ちゃんはこれどう思う~?」みたいな感じで、いろいろ聞いてくれます。最近は、「晃瑠ちゃんのところサンタさん来るの~?サンタさんにプレゼント何頼んだ~?」って聞かれて、「私大人なんでもらえないんだよ~。」って答えました。(笑)
 
愛梨
やりとりが可愛い~。こどもバディは、晃瑠ちゃんのこと、子どもだと思ってるのかな?(笑)
 
晃瑠
どうなんでしょうね~!(笑)いつか聞いてみたいです。

家族じゃないけど、それくらい近しい存在

愛梨
相談されることとかもある?
 
晃瑠
相談というほどではないですけど…
小学校高学年で身体の変化もいろいろあると思うので、そういう話も色々話します。深い話もできる関係性になったので、心を開いてもらえたのかなって思うことがあります。
 
愛梨
そういう話って、親御さんにはしにくかったりするもんね。

晃瑠
あと、自分のやりたいことを教えてくれるようになりました。やりたいゲームとかも、最初はあんまり言えなかったんですけど、うん、だんだんとこれやりたい、あれやりたい、って。
 
愛梨
晃瑠ちゃんとこどもバディの子は、お互いにとっての日常の一部になっているのかなとか思いながら聞いていました。
 
晃瑠
家族じゃないですけど、それぐらい近しい存在になってるかなっていう感じです。

「もう1人の娘のような存在」

愛梨
こどもバディのお母さんとのかかわりはどんな感じ?
 
晃瑠
遊ぶときは2人ですけど、お母さんも一緒に3人でお話したり、一緒にデザートを食べたりする時間はよくあります。そのときに、いろいろ話します。ご家族でよくお出かけするみたいなので、おでかけのときの様子をきいたり。すごく楽しいです。「もう1人の娘のような存在」と言ってもらったときがあって、すごく感動しました。お母さんにとってもこどもバディにとっても、それぐらい近しい存在になったんだなっていうことを感じて、嬉しかった。

愛梨
2年経って、月に2回会わなくてもよくなったと思うんだけど、これからどんなふうにかかわっていきたいとかってありますか。
 
晃瑠
忙しいときは会えないかもしれないですけど、月に1~2回会い続けていけたらいいなっておもいます。ちょっと家族みたいになってるので、お出かけとかしながら、成長を見守っていけたらなって思ってます。

人と話すのが楽しくなってきました、最近

愛梨
2年を通じて、晃瑠ちゃんの中での変化や成長みたいなものって何かあるかな?
 
晃瑠
「消極的」から「積極的」に変わったなっていう気がします。あと、会話とかもあんまり得意じゃなかったんですけど、自分からいろんな話題を振ったり話を広げたりができるようになってきました。実習でも、活かされてます。実習先の方とのコミュニケーションとかも、あんまり気負いすぎないで自分の意見を言ったり。そういうのがあんまり得意じゃなかったんで、そういう面も改善された。
 
愛梨
それは大きな変化!
 
晃瑠
人と話すのが楽しくなってきました、最近。自分から話題を振って、相手がそれにいろいろ答えてくれたりとかしたときが、「私、話せてる~!」って。We are Buddiesに出会ったころなんかは、もうすごーーーい人見知りで、話すのがすごく苦手で、逃げちゃうようなタイプでした。お友達をつくるのも苦手で、自分からは行けない受身のタイプでした。おとなバディをやるようになって以降、学校でもいろんな人と話したりするようになりました

キャリア・進路 × おとなバディ経験

愛梨
キャリアを考えるときにも、おとなバディの経験ってなにか影響あったりする?
 
晃瑠
作業療法士も、小児とか発達領域でのお仕事があるので、そういう方面にいけたらいいなと思ってます。おとなバディをやる前から興味はあったんですけど、経験したことで、すこしは力がついてきたかなって。活かしつつ、働いてからもっと力をつけて、子どもと触れ合う機会を増やしていきたいなって思ってます。
 
愛梨
作業療法士というお仕事に、どんな風に活かされていきそう?
 
晃瑠
リハビリみたいな感じのプログラムを患者さんと一緒に考えたりするんですけど、だんだんと関係性を築くことが大事なんです。専門用語で「ラポール形成」って言うんですけど、おとなバディの経験は、そういう部分で直接活きてくる気がします。

こどもバディと会う時間は、自分にとっての「息抜き」

愛梨
未来学園の学生さんたちのお話を聞くと、「興味あるけど、忙しくて難しい。」って言う方が多い。資格の勉強もあるし授業も大変そうだし実習もあるし、月に2回を1年以上続けるって、大変なのはわかる。晃瑠ちゃんはどんな風に工夫してたの?
 
晃瑠
バディの活動は土日にやることが多かったです。あとは、平日でも学校がたまたま休みの日があれば「ここどうですか~」って聞いたり。バイトもしてたんですけど、特に問題はなかったです。自分にとっての息抜きなので。こどもバディと会う時間が楽しみだから、バイトとかよりもその子と遊びたいっていう感じでした。

愛梨
日程調整とかは晃瑠ちゃんが主導で保護者の方と進めてたのかな?
 
晃瑠
そうですね。
 
愛梨
日程調整とかも、この活動をやる上で結構ポイントでね。自分の空いてる日を先に伝えたりとか、自分主導でやっていく方が、実は会いやすいよね。保護者の方もその方がスムーズだったり。実習があるときはどうしてた?
 
晃瑠
そうですね、実習のときはそうやって伝えてました。テスト期間とかは…1週間前は勉強がちょっと大変だけど、テスト前の1週間はこどもバディと遊ぶ予定を入れないように調整すればいいので、特に問題はなかったです。学校の友達と遊んだりする時間もとれてましたし、全然大丈夫でした。

愛梨
そしたら最後に、未来のおとなバディたちに向けてのメッセージをいただけますか?
 
晃瑠
自分の場合は、おとなバディをやってみて、自分をすごく成長させられる良い機会になりました。やってみたら自分にとっていい経験を積めるかなって思うので、ぜひやってもらいたいです!子どもが好きという人もそうですし、あとやっぱり私みたいにちょっと人見知りなところがあったり消極的な人。ちょっとだけ一歩勇気を出してやってもらえたら、結構変わりそうな気がします。

愛梨
貴重なお話、ありがとうございます!

終わりに

面談などでたくさん晃瑠ちゃんとお話していたころは、まだ緊張しっぱなしの頃だったんだなぁと。当時はまだあどけなさがたくさんあったけど、力強く、でもほどよく力が抜けた感じで自分の心の内を話してくださる姿が、なんだかとても美しかった。
インタビューも、撮影も、とっても楽しかったです。

晃瑠ちゃんの社会人デビュー、楽しみにしています!

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We are Buddies って?
子どもと大人がバディズとなり、遊んだり話したりしながら、細く長い関係性を築きます。保護者の方だけが子育てを頑張るのではなく、多くの大人が関わり、登場人物みんなが力を抜いて、優しい気持ちになれる社会を目指し立ち上げました。

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