多様な価値観が触れ合い、彩り溢れる社会にしていきたい~Buddy's Voice Vol.3~
2020年3月に立ち上がったWe are Buddiesプロジェクト。
このプロジェクトでは、子どもと大人ボランティアがバディとなり、オンライン・オフラインで、遊んだり、話したりしながら、細く長い関係性を築いていく。バディとなった二人は、月に2~3回オンライン、月に1~2回オフラインで、 時間を過ごす。対象年齢は、5~18歳。保護者の方だけが子育てを頑張るのではなく、多くの大人が関わり、登場人物みんなが力を抜いて、優しい気持ちになれる社会を目指すべく、立ち上がった。
このプロジェクトには、大人ボランティアの存在が必要不可欠だ。今年度にボランティア(バディ)として参加しているメンバーたちは、このプロジェクトの土台づくりにも積極的に関わっている。
バックグラウンドも得意分野も異なるバディたちが、なぜWe are Buddiesに参画し、どんな経験をし、これを通して何を実現しようとしているのか。バディたちにインタビューを重ねながら、バディにとって、子どもにとって、社会にとってのこのプロジェクトの意義を探求していく。そんなバディたちの生の声を "Buddy's Voice" にて届けていく。
第3回となる今回は、Buddy's Interview Vol.2 にてインタビューした内田修平さんが、インタビューワー・ライティングを担当してくれた。
インタビューを受けてくれたのは、現在デジタル広告の企業でコピーライター、プランナーとして企業・サービスのマーケティング支援をしている兒玉奈々さん。半年前の夏から発起人の加藤愛梨さんの誘いをきっかけに、関係性を第三者とつくるWe are buddiesの活動に価値を感じ参画することに。現在は小学校5年生の男の子とバディを組み活動をしている。
お互いが気負わず、何気ない会話をしながら自由に遊ぶ時間
内田修平(以下、修平):奈々さん、今日はお時間をいただきありがとうございます!現在Yくん(バディの相手)と約8ヶ月間ほど関わっていると聞きましたが、奈々さんから見てどんな男の子ですか?
兒玉奈々(以下、奈々):Yくんはサッカーと塾をがんばっている小学生の男の子なのですが、話してみると「え、社会人かな?」と感じるぐらい色々なことを考えている子です。(笑) 物事に対してどこまで期待をするべきか?などのコントロールができたり、未来や将来のことを深く考えたり。本当にびっくりしました。また、人をとてもよく見ていて、すごく優しい男の子です。
修平:びっくりさせられますね。 今はどのような形や頻度で関わっていますか?
奈々:コロナの影響で回数が少なくなってしまっているのですが、今は最低月1回はオフラインで遊んでいます。ランチをしたり、愛梨さん(We are Buddies代表)の住んでいるシェアハウスに遊びに行ったりしています。
修平:遊びに行く場所や何をするかはどんな風に決めていますか?
奈々:前回は私から3択で提案しました。図書館か、近くの蔦屋書店か、他の人も誘って一緒に遊ぶか。それをYくんに聞いたら、「図書館がいい!」と返事をくれたので、図書館に行きました。自分の知らないYくんを見ることができて、すごくいい時間になりました。Yくんは論理的に物事を考えるタイプなので、伝記など事実に基づく本が好きなのかなーと勝手に予想していました。ところが、実際にはかなりヒューマン系な、ハートウォーミングな本を選ぶんです。絵本を選ぶときもタッチが柔らかかったり、表紙が可愛かったり、Yくんの優しい一面に触れることができて楽しかったです。
修平:図書館で本を選びながらお互いの新たな一面を見るって、素敵ですね。オンラインとオフラインはどんな風に使い分けていますか?
奈々:コロナの影響で、夏まではオンラインが中心だったので、YouTubeのエクササイズをしたり、オセロのゲームをしたりしていました。でも今はオンラインは全く使ってていません。私たちにはオンラインよりオフラインの方が合っていると感じ、オフラインだけでやることにしました。
修平:何かそう感じたきっかけがあったのですか?
奈々:オフラインだと何気ない会話ができるんですよね。例えば一緒に道歩いていて、「最近塾が忙しいんだよね」とか「サッカーでこういうことがあって」という感じで、こんな何気ない話が気軽にできるのがいいなって感じています。コンテンツ選ぶときも、オンラインだと一緒に決めて1つの物を一緒にやらないと行けないのですが、オフラインだとそういう制限がないんです。例えば、図書館だとそれぞれが好きなものを持ってきて、もし気が合えば一緒に楽しめるし、そうでなくても各々が一人で楽しむこともできる。自由度があるなって感じています。
大事な価値観を共有できる仲間との出会い
修平:活動を始めて何か変化はありましたか?
奈々:バディのメンバーの中で「他人の価値観に影響を与えてしまうのが怖い」という話をしている人たちが何人かいて、その考え方を誰かと共有できたのが人生で初めてでした。人にいい意味で影響を与えてしまうこともあれば、悪い意味で影響を与えてしまうこともあって、それに自覚していることが大事なんだなと気づかされました。影響を与えることが良いとか悪いとかではなく、自覚すること。この体験によって、バディの活動だけじゃなくて、日々の生活や仕事にも変化がありました。周りの人との価値観の違いによって、どこまで入り込んでいいのかっていう距離感を意識せず生活をしてきたのですが、バディの中で価値観を言語化したことで、他人の価値観に影響を与えてしまうという事象を認識できるようになりました。これを共有できる仲間と出会えたことが本当によかったです。
例えば、他人が言葉を発した時に、言葉とは違う意図がある場合もあると思います。自分も「本当に言いたかったのは、これじゃないのに…」と思うときもあります。ただ表に出てきた言葉だけではなく、その人の気持ちを掴んでいきたいなって感じました。
修平:人生で初めて奈々さんの価値観が共有できたというのはすごいですね!どうしてそれが共有できたんですか?
奈々:なんでだろう。。。月に1度オンラインで開かれるバディの定例会が、すごくいい場なんですよね。もちろんファシリテーションがいいというのはあるんですけど、謎なんですよね(笑)こんなに短期間でそんな深い価値観を共有できたというのは自分としてもすごく不思議なことで。会社でもGoogleの心理的安全性の話を習って、自分がファシリテーションをやる時には意識するんですけど、バディの定例会でも今の気持ちをさらけ出す形でチェックインしたりするから、それによって心理的安全を保たれている気がします。
無理をしない、未来の可能性を担保する緩やかな関係をつくりたい
修平:奈々さんはどんな想いを持ってYくんに関わっていますか?
奈々:関係性を作って長続きさせるって生産的な活動だけじゃないと思うんです。例えば、Yくんも今はすごく悩んでいる訳ではないんですけど、大きな壁にぶつかったり、保護者の方とうまくいかなくなったりした時に、この関係性が活きてくる可能性もあるんじゃないかと思っています。短期的な変化や成長を求めるんじゃなく、そういう可能性を担保するように時間を過ごせたらいいんじゃないかと思います。
修平:そうですよね。もし保護者の方との関係性が変化しても、奈々さんとどうでもいい話をする時間や、奈々さんのような自然体でいられる相手がいることは大きいですよね。Yくんと良い関係を続けていくために工夫していることはありますか?
奈々:とにかく無理しないことですね。Yくんは塾やサッカーに行っているのですが、性格的にひとつひとつちゃんと成果を出していきたい結構真面目なタイプなんです。新しいことを始めるときも成果を出せるかどうかを考えるらしくて、手を抜きたくないだろうし、そこに気持ちを持っていく時間も必要だと思っています。だからこそ、お互いが無理して、お互いが苦手なことをやるのではなくて、緩やかな関係で過ごせる時間をつくれたらと感じています。イベントみたいにならず、疲れない感じがいいなと。普段会わない私と会うことだけでも特別なことなので、そういうYくんの生活の中では異質なものはなるべく減らして、生活の延長線上で関われたらなと思っています。
修平:意味や目的を考えないという関わり方がとても素敵ですね。Yくんとの関係については今後どんな風にしていきたいですか?
奈々:Yくんが嫌じゃなければ、意見やそのとき思っている嫌なことをぶつけられる相手でいたいと思っています。そういうことを吐き出せる相手がいることがとても大事だと思うので、自分がその相手になれたらいいなと思います。
自分の目標としては、ちゃんと続かせることです。プライベートだと、価値観合わないなとか、一緒にいて楽しくないななどの気持ちがあると、関係が切れてしまうことが多いです。一方で、仕事でもなく、Yくんとは価値観や性別も違うし、すごく共感し合う点がない状況の中で、敢えてどんな関係性が築けるのかチャレンジしてみたいので、無理なく続かせていきたいです。家族や仕事と関係ないところで、必須事項じゃないのに関係性をつくることってどういうことなんだろう…と、考えていきたいです。
自分の人間観を広げる時間であり、社会に彩りを与える場
修平:We are Buddiesの経験は奈々さんの人生にどんな影響を与えそうですか?
奈々:自分の人生と重ならなそうな人と出会うことで、人間観を広げることに繋がるのではないかと思います。映画や小説でも自分とは重ならない人の人生を味わえるけど、それを生で味わえる場所ですね。私は、居心地のいい場所を選んでしまうことが多く、映画とか小説も自分と近いものを選んでしまうことが多いです。バディの活動は、自分とは違う価値観や人間観に触れられる場所なんですよね。
修平:このバディの活動をどんな人におすすめしたいですか?
奈々:子ども視点で、出来るだけ多様性のあるメンバーが集った方がいいと思うので、年齢や職業、出身地が出来るだけバラバラの方がマッチング的には面白いんじゃないかな。
もう1つは私視点で、何か仕事に打ち込みすぎて余白がない方に、バディになることをおすすめしたいです。仕事に一生懸命になることはいいことだし、お金を稼ぐことも仕事で何かを生み出していくこともすごくいいことだと思うのですが、生活の中で、生産的じゃない時間とか、何の意味があるんだろうという余白を残しておくことが大事だと思っています。余白がなくなると思考が画一的になっていきがちだし、人生に彩りがなくなってしまう感じがするんです。これによって、価値観が固定されていって、ネットに自分の視点だけで色々書き込んで誰かがを傷つけたり、色々なことが起きてくるなと。例えば、広告の仕事の中では、「このメッセージを出したら、誰がどんな想いをするんだろう?」と想像力がなくなってしまったり。ちゃんと人間と向き合う場所というか、余白を持つことが大切だと思うので、忙しく仕事をしている方や家族を持っていない人におすすめしたいと思います。みんながちょっとずつ異質なものに触れたり、緩やかなものを持つと、価値観の総数が増えていって、社会全体の彩りが増していく感覚があります。
修平:コピーライターならではの想像力ですね!ご自身の想いから、彩り溢れる社会をつくっていこうという気持ちで活動に関わっている奈々さんが本当に素敵だなと感じました。最後に、この記事を見る方に向けて一言お願いします!
奈々:We are Buddiesのような緩やかな関係性を結ぶ支援やボランティアに、目先の価値ではない目的で参加する人たちが増えていったら嬉しいです。
修平:奈々さんのお話を聞いていく中で、これからの時代の中で間違いなく必要な仕組みだと改めて感じました。奈々さん、本日はたくさんお話を聞かせていただきありがとうございました!
(編集後記)
奈々さんとはちゃんと話すのが今回初めてだったのですが、奈々さんの多様な価値観が溢れる世の中にしていきたい想いに触れ、まさに奈々さん自身がWe are Buddiesの多様性を広げてくれているんだろうなと感じました。そして、インタビューを通して「こんなこと考えていたことに初めて気づきました。私もインタビューをしたいです!」と言っていただきとても嬉しかったです。We are Buddiesにはまだまだ素敵なバディがたくさんいるので、今後のインタビュー記事も是非乞うご期待下さい!
次回もお楽しみに!
INTERVIEW & TEXT :内田修平
EDITING:加藤愛梨
※編集という程でもありませんが…