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原価率20%の飲食店。ビジネスの秘密
以前ZOZOの社長・前澤さんがTwitterで洋服の原価を暴露して炎上したことがありました。それが原因なのか?株価が下がりZOZOTOWNから企業が撤退したそうです。どの業界でも原価を暴露するのはタブーのようですね。
洋服を仕入れて売る小売業は仕入れ価格が原価で、製造業の場合は原材料費や製造ラインの人件費、さらに機械の原価償却費や工場の電気代も原価に含まれるらしいです。
ちなみに販売や営業にかかる費用は販売管理費として計上されるため原価には含まれないそうです。
そもそも、原価率が低いことって悪いことなんですか?
シャネルやグッチのブランド品って、原材料費が高いわけじゃないですよね?
ブランドのロゴや高級感があるから高くても買う人がいるんじゃないでしょうか?
そしてその利益の中から宣伝費や広告費をまかなっているのではないでしょうか?
逆にユニクロなどのファストファッションは、販売価格を下げることによって売れているんじゃないでしょうか?
製造コストや人件費を極限まで削って利益をあげる、薄利多売のビジネスモデルですよね?
昔から「薬九層倍(くすりくそうばい)」というように、安い原価のものを高く売ることで利益をあげるビジネスモデルは存在します。
化粧品やサプリメントは原材料費が安いことで有名ですし、飲食業界では「ラーメン・お好み焼き・パスタ」などの「粉もの」は原価が安くて儲かるといわれています。
飲食業では一般的に、売上に対して食材原価が30%+人件費が20%=50%が良いとされています。
そのほかに酒代・家賃・水道光熱費・広告費・消耗品費・雑費があります。それらすべてを売上から引いた額が利益になります。まあ、そこから所得税も払うのですが。
同じ商売でも、いかに工夫をするかで利益率は変わってきます。よくあるのが、家族経営によって人件費を削ったり、食材を大量仕入れすることで材料費を安くするなどです。
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Sさん(ここからは大将と呼びます)の店は一軒家の1階で、客数は30~40席といったところ。従業員は雇っておらず、奥さんとアルバイトが1~2人。それに加えて、僕みたいに修行しに来ている人が2~4人いました。
僕の場合はお金を払って、もちろん無給で働いていました。しかし、同時期に修行しに来ていたTさんに聞いたところ、Tさんは月々20万円くらいをもらっていたそうなのです。Tさんは僕より10歳位年上の30代前半で、奥さんと子供もいたので、もしかしたら、独立をする前提で従業員として雇われていたのかも知れません。
Tさんも元々は焼鳥屋を経営していたらしく、ひょんなことから大将と知り合って相談するようになったそうです。焼鳥屋を一度でもやったことがある人が口をそろえて言うことは、「串刺しが一番大変だ」です。
お客さんが来れば来るほど、次の日の串刺しの量が増えていく。朝から夕方まで串刺しの仕込みをして、その間に買い出しにも行かないといけない。
18時くらいから店を開けて、営業が終わって片付け終わるのが深夜の2時とか3時。それから家に帰ってご飯を食べて4時頃寝たら、翌朝9時頃にはまた串刺しが始まる。子供がいる家はさらに大変だろう。
そんなTさんの店に、大将はちょくちょく飲みに来たそうです。大将はいつも「毎日毎日串刺して、儲かりようとや?俺がやりよう店は串刺しもせんでいいし、利益率が高いけん今より儲かるぞ」と言っていたそうです。
Tさんは串刺しの大変さや利益率のことを考えると、大将の店をのれん分けしてもらったほうが良いかもと思うようになったそうです。
ちなみに、大将の店もTさんの店も18年以上経った今でも営業しています。
今考えても、大将のビジネスモデルはすごいなと感心します。
大将がやっていた店は、鶏の炭火焼と鶏鍋の専門店でした。食材原価率は20%くらいで、人件費はほぼ0%でした。基本は奥さんが働いていて、従業員は雇わない。僕みたいに修行しにきている人は人件費がかからないし、逆にお金を100万円払ったりしているのでアルバイトを雇っていてもチャラです。
食材原価率が20%というのは、飲食店ではあり得ない事です。
ここからはぶっちゃけ話ですので有料とさせていただきますm(._.)m
【2020/1/26 無料公開しました!】
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※写真はイメージです
店のメニューで使用するのは、鶏のモモ肉のみです。すべての料理にモモ肉しか使わないのでロスが出にくいからです。そしてメニュー数も極力絞ります。
たとえば、同じモモ肉を焼き・炒め・揚げの3種類で出したり、鍋はカツオでとったダシには白菜を使って寄せ鍋風に、醤油とニンニクで味付けしたものにはキャベツとニラを使ってもつ鍋風にして2種類出します。
材料はほぼ同じものでメニューが構成されています。
鶏には、地鶏(ぢどり)・銘柄鶏(めいがらどり)・ブロイラー・種鶏(しゅけい)・廃鶏(はいけい)があります。地鶏と呼んでいい鶏には細かい規定があり、名古屋コーチンや比内鶏や軍鶏(シャモ)がありますが、非常に高価なため一般的な居酒屋では採算が取れないので使われることはほぼありません。○○鷄や○○コーチンや○○シャモや○○じどりと呼ばれているものは銘柄鶏で地鶏ではありません。
「比内鶏」は地鶏ですが、「比内地鶏」は銘柄鶏なのです。
おそらくほとんどの人は知らないことだと思います。そのため、普通の人は○○じどりと名前を付けられた鶏を食べて、身が固ければ固いほど「地鶏は噛みごたえがあって美味しいね」と納得します。
大将の店では炭火焼きには廃鶏を、鍋には種鶏を使っていました。簡単に言うと、種鶏はブロイラーより身が固く、廃鶏は種鶏よりもっと身が固いです。
○○鷄とか○○じどりというネーミングで固い身の鶏を出せば、食べたお客さんは「地鶏を食べてる」と勘違いしてくれるのです。そこに利益率の秘密がありました。
種鶏も廃鶏も、地鶏に比べると安いのです。例えば、地鶏が1kg1,000円だとすると、種鶏や廃鶏は1kg200円〜300円くらいなのです。
つまり、店名やメニュー名でさも地鶏を使用しているようなネーミングにして、商品価格は地鶏と同様に設定しますので儲からないわけがありません。
「比内鶏」が地鶏で、「比内地鶏」が地鶏ではなく銘柄鶏なんて言葉の遊びですが、法律的には違法ではないのです。こういうトリックにお客さんが気づけるはずがありません。
ここで失敗④
僕はのれん分けで店を出しましたが、ずっと葛藤していました。店名やメニューに○○ぢどりと付けているだけで地鶏ではないことに。お客様から必ず聞かれる「どこの地鶏を使ってるんですか?」の質問に、「九州の地鶏です」と言ってごまかさないといけないことに。
結論: 自分に嘘はつかない
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