世界で一人になる方法

例えば、車の運転席に座っていたとする。場所は駐車場とか、なるべく街灯とかがないところがいいかな。夕方から夜にかけて、椅子を倒して横になってみる。
すると、自然と雨が降ってくる。私がそうするのを待ち望んでいたかのように、明確な意思を持って。
その瞬間から、世界は自分と、それを囲む畳二畳分の暗い空間と、音だけになる。雨滴が鉄を叩く音がして、呼吸の音なんてかき消されてしまう。
さて、横になっているとだんだんぼんやりとしてきて、溶けたみたいになる。なんだか自分が液体のようになってきて、自分と他の境界が亡くなっていく。
そうすると、不安とか、不満とかが姿を現してくる。頭の真ん中あたりで渦巻いているその感情が、溶けた身体の中からしこりのように現れる。
そんなのは雨で流し落とせばいい。自分は今、雨と一体化しているのだから、流してしまえばいい。
そして楽しいことを考えればいい。なにか気分の上がること。クスっと笑えること。そういうことで自分を満たしていけばいい。
溶けた身体はいつまでもそのままでいるのでも、ふと思い立って家に帰るのでも、どっちでも自由に選べる。
そのままでいる間はずっと一人だ。


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