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日記8 書くことないから記憶を捏造して思い出を書く

こんにちは。みなさんは人生観が変わるような体験はしたことがありますか? 僕はあります! 今日はそのことについて振り返りながら書いていこうと思います。

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高校生の時、僕は文芸部に所属していました。文芸部って読書をしたり、書いたりするみたいなイメージが強いと思うのですが、僕のところも例にもれずそんな感じでした。部室には先輩たちが残していった小説や哲学書などが置いてあったり、かと思えばマンガとかもたくさんあったりで、結構自由な部活でした。

部活メンバーは3学年合わせて10人くらいしかいなかったような気がします。全校生徒が1000人くらいだったのでかなり少ない方なのかな?

さて、高校生になりたての僕が文芸部に入ったのには理由がありました。それは勉強のためです。高校受験に落ちて私立高校に入学することが決まっていて暗い気持ちで過ごしていた僕は、高校生活を勉強にささげようと思っていました。そのため、夜遅くまで練習をして疲れそうな運動部は入らないでおこう。そう決めていました。しかし、部活に入らないと担任の先生がうるさいので、仕方なく文芸部に入ろうと思っていました。

文芸部は校舎の4階(僕の高校は4階建てでした)の端っこらへんにありました。要がなければ誰も寄り付かないし、だから部員の数も少なかったんだと思います。陰気なイメージのある所でした。

入部届を出すために文芸部室の扉を叩くと、中から「どうぞ」という声が聞こえてきました。扉を開けると活動している部員は一人しかいないようでした。その人ーー女性だったのですがーーは、読んでいた文庫本からこちらに目を移し「おや、新入生かな? 文芸部にようこそ。まあ、そこに座るといい」と言い、その人の目の前の席を指さしました。

目の前の席に座って改めてその女性を見ると、僕は思わず息を飲んでしまいました。黒い艶やかな髪にキレのある瞳。顔は凛としていて美しいのに、どこか柔らかな雰囲気のある不思議な女性でした。
「ど、どうも。入部届を出しに来ました。えと、新入生の田中(仮名)です」
「ふむ。こんなちっぽけな部に入ろうなんて、君はよっぽど変わり者のようだね。私は白石千歳(仮名)だ。文芸部の部長をしている3年だ。よろしく」
「よろしくおねがいします」

こうして僕は文芸部に入ることとなりました。
千歳先輩が6月に部を引退するまでの間、僕たち以外の部員が来たのは一階だけで、ちょっとちゃらそうな人が「うぃっす~。あれ、新入生? めずらし。よろしく」とだけ言って、本棚に置いてあるバンドの雑誌を手に取ると、そのまま出て行ってしまいました。先輩によるとその人は軽音楽部に所属しているそうでした。

僕も勉強をしようとさっさと幽霊部員になってしまおうと思っていました。しかし当時の僕はお金がなく、アルバイトも校則で禁止されているため、参考書に困っていました。僕が困り果てていた時、先輩が「勉強か? そこにあるの使って良いぞ」と言いました。

見ると、本棚には過去の先輩たちが残していった受験用参考書や教科書などが小説に交じっておいてあり、仕方なく僕は文芸部室に居つくことになったのです。

そうこうして10日くらいずっと文芸部室に行っていると、突然先輩は
「おい、君はどうしていつも勉強ばかりしているんだ? つまらないだろう」
と言いました。
「でも、僕あまり本とか興味ないですし……」
そう言うと、
「よし、じゃあついてこい」
と、おもむろに僕の腕を取って校門の外まで連れていかれたのです。
「先輩、まだ下校しちゃまずいんじゃ」
「大丈夫だ。生徒会長の私が言うんだから大丈夫だ」
と言いながら、だんだんと駅の方に向かっていきます。

最寄り駅の周りは結構栄えていて、娯楽施設がたくさんありました。
先輩は「どこにしようかな……よし、決めた」と言い、僕をボーリング場に連れて行きました。
ボーリングなんてやったことなかった僕は
「ちょっと、僕やりかたなんて知りませんよ」
と抗議しましたが
「大丈夫だよ。すぐわかる」
と、僕の腕を掴んで離しませんでした。

結局、僕はストライクを一回取っただけであとはヘナチョコでした。でもストライクを取ったときの一回は先輩が笑顔で「よくやったな! すごいぞ!」とほめてくれたので、その時だけ僕も笑ったような気がします。
その後はカラオケに連れていかれたり、スターバックスで女子高生が好きそうなのを飲んだりと、結構楽しい思い出でした。

そんな感じでたまに遊びに行くのを繰り返しているうちに、先輩が引退する6月になりました。先輩は受験生なので、これから忙しくなるそうです。

「ははは、結局あまり勉強できませんでしたね。でも、楽しかったです」
「私も楽しかったよ。今まで誰もここに来なかったからな」
先輩が窓の外を見ながら言いました。夕日が部室を染めていました。
それきり、お互いが言葉を探すうちに部屋に沈黙が支配しました。
僕は帰ろうとしました。しかし、帰りたくない。そうも思いました。僕が決めかねていると、ぼそりと先輩が呟きました。
「『人っていうのはそう簡単に間違えないものさ。一斤のパンのように』」
「え?」
こちらを振り返りながら、言いました。言葉は夕日に支配されたまま。
「ミシェル・ドゥ・ヴィニョンという哲学者の言葉だ。君がこの部室に始めてきた時に読んでいた本の、ちょうどそこを読んでいた」
「先輩……」
先輩は再び夕日の方へ向き直り、もう何も言わなくなりました。
「それじゃあ、僕はこれで帰ります」
席を立ちあがり、カバンを持っても先輩は何も言いませんでした。
部室のドアを閉める瞬間、
「またな、少年」
そう言ったのがぼそりと聞こえました。

それ以来、先輩が部室に来ることはありませんでした。引退してからもう来たくないのか、いさぎがいいのかは分かりません。
でも、先輩が言った言葉は何となく胸の支えになって、今も迷いがあるときはその言葉を思い出します。


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いかがでしたか? これが僕の人生観が変わった出来事でした!
やっぱり人との出会いっていいものですね!


ちなみに僕にはこんな先輩はいませんでしたし、高校の時は帰宅部でしたし、先輩が言った言葉も、哲学者も存在しません。

でも、過去なんていうのは心の中にしかないので、根気よく捏造すればいつかそれが真実になるかもしれませんね!

ありがとうございました!

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