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【IT小説】デジタル・スパイラル~情報に飲み込まれる人々~

登場人物

名前:佐藤 翔太(さとう しょうた)

職歴

  • 元営業職(3年)—中小企業で法人営業を担当。

  • 未経験でIT業界へ転職し、システムエンジニア(SE)として活動中。

性格

  • 挑戦心が強く、失敗を恐れない一方で、不安や挫折に対して敏感。

  • 他人の気持ちに敏感で、周囲を巻き込むコミュニケーションが得意。

  • 時に自信を失うこともあるが、自分を鼓舞しながら前進する粘り強さを持つ。

名前:中村 健(なかむら けん)

  • 翔太が通ったプログラミングスクールの講師。元フリーランスエンジニア。

  • ポジティブで面倒見が良く、翔太の相談役となる。

名前:木村 真奈美(きむら まなみ)

  • 翔太が入社した会社の先輩エンジニア。冷静で的確なアドバイスをするが、最初は距離がある。


1章:未知の世界への第一歩

プログラミングとの出会い

佐藤翔太は、かつて自分の仕事に誇りを持っていた。しかし、営業成績の競争が激化し、毎日のノルマに追われる生活の中で、次第に自分の将来に不安を抱くようになる。そんなある日、偶然目にした「未経験からエンジニアへ」という広告が彼の人生を変えた。

“今のままでいいのか?”

この疑問が、彼をプログラミングスクールの門を叩かせるきっかけとなった。

最初の授業で、翔太は「Hello, World!」というプログラムを書いた。講師の中村が、画面に文字が表示される仕組みを丁寧に説明する。

プログラム:一連の命令をコンピュータに与え、実行させるためのコード。

翔太は、たった数行のコードで結果が得られることに驚き、次第にプログラミングの魅力に引き込まれていった。彼が画面に「Hello, World!」と表示された文字を見たとき、これが未来への扉を開けた瞬間だった。

翔太は夜遅くまで参考書を読み漁り、オンラインでチュートリアルを見ながら手を動かした。「もっと深く知りたい」という思いが膨らみ、睡眠時間を削ることも厭わなくなっていた。

初めての挫折

しかし、順風満帆ではなかった。アルゴリズムの基礎を学ぶ授業で、翔太は初めて壁にぶつかる。

中村:「アルゴリズムは問題解決の手順そのものです。例えば、バブルソートを使って配列を昇順に並べる方法を考えてみましょう。」

翔太は配列を見ただけで頭が真っ白になった。

バブルソート:隣り合う要素を比較し、順番が逆なら交換するという手法を繰り返す簡単なソートアルゴリズム。

何度も手を動かしてみたが、エラーが消えない。コードのどこが間違っているのか、何度確認しても見つからない焦りが翔太を追い詰めた。

翔太:「何が間違っているのか全然わからない…。」

教室で一人残り、コードを見直す翔太。中村は隣に座り、彼の肩を軽く叩いた。

中村:「翔太君、失敗するのは当たり前だよ。むしろ失敗しない方が不安だ。今は少し休もう。」

その言葉に救われ、翔太は再び立ち上がった。彼は一度エディターを閉じ、深呼吸をしてからノートに自分の考えを整理し始めた。

次の日、翔太はバブルソートの動作を一つ一つ紙に書き出し、実際の動きと比較することで間違いを発見した。その瞬間、翔太の胸には達成感が溢れた。「エラーを恐れずに向き合う」という重要な教訓を得たのだ。

仲間の存在

スクールには同じように未経験から挑戦している仲間がいた。彼らと課題を共有し、時に励まし合うことで、翔太は孤独を感じることが少なくなった。

ある夜、深夜まで課題に取り組む仲間たちとピザを囲んで語り合った。

友人A:「俺も初めは全然できなくてさ。でも、エラーを解消した瞬間、なんか世界が変わった気がしたんだ。」

友人B:「わかる。コードが動くと、自分が魔法使いにでもなった気分になるよな。」

翔太:「そうだよな。俺もその感覚、もっと味わいたいな。」

彼らは課題に取り組む中で、それぞれの失敗や成功を共有し合った。仲間の失敗談を聞いて自分と重ね合わせたり、誰かが成功した時には一緒に喜びを分かち合った。こうした時間が翔太の心を支え、さらなるモチベーションを引き出した。

新たな試み

課題を進めていく中で、翔太は自分なりの勉強法を模索し始めた。ただ教科書を読むだけではなく、実際にプロジェクトを模倣して自分で小さなアプリケーションを作り始めたのだ。

例えば、日常生活で使えるような「簡単なタスク管理アプリ」を作成することに挑戦した。どのような機能を持たせるかを考え、コードを書く過程で多くのエラーや課題に直面したが、その度に調べ、学び、改善していった。

翔太:「タスクが完了した時に、音を鳴らす機能を付けたらもっと面白くなるかも。」

こうした小さな挑戦が積み重なり、翔太は自信を少しずつ取り戻していった。そして何よりも、コードを書いている時間が楽しいと感じるようになっていった。


2章:最初の仕事、そして現実の壁

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