
【IT小説】システム監査人の告白 〜改ざんされたログの真実〜
登場人物
結城 修(ゆうき おさむ)
職業:システム監査人(新米)
経歴:情報系の大学卒業後、大手企業のIT監査部門に配属。エンジニアとしての実務経験は浅いが、好奇心旺盛で行動力がある。
性格:熱血タイプ。失敗してもめげず、課題に立ち向かう。時には空回りすることも。
藤堂 誠(とうどう まこと)
職業:シニア監査人
経歴:長年にわたり企業のITシステム監査を担当。過去には重大な不正を暴いた経験を持つ。
性格:冷静沈着で洞察力が鋭い。修を成長させようとするが、時には突き放すことも。
神崎 隼人(かんざき はやと)
職業:システム開発リーダー
経歴:天才的なプログラマーで、行政システムの開発を統括。
性格:合理主義者。監査人を煙たがるが、技術的な議論には乗ってくる。
黒幕(???)
職業:大手企業の幹部
経歴:組織の中枢にいて、ITシステムの全体戦略を決定している。
性格:腹黒く、自己保身のためにあらゆる手を使う。
1章:監査の始まり
監査部門への配属
「お前、今日からシステム監査を担当することになったからな」
新卒で入社し、数ヶ月の研修を終えたばかりの結城 修は、上司の藤堂 誠から突然の辞令を受けた。
「え、監査ですか? システム開発じゃなくて?」
システム監査とは、企業や組織の情報システムが適切に運用・管理されているかをチェックする仕事だ。セキュリティリスクの評価や不正の発見など、重要な役割を担う。
「監査って、基本的に“システムを作る側”じゃなくて“システムをチェックする側”だろ? 正直、地味な仕事ってイメージが…」
「甘いな、結城。監査は“システムを守る”仕事だ。エンジニアがプログラムを書くのなら、俺たちはそのプログラムが信用できるかを確かめる。その重要性がわからないようじゃ、この仕事は務まらないぞ」
「うっ…」
藤堂の冷静な指摘に、修は少し気圧された。
「でも、監査ってどこから手をつければいいんです?」
「まずはログのチェックだな。監査の基本は、システムの記録を解析して異常を見つけることだ」
「なるほど、探偵みたいですね」
藤堂は笑わなかった。「探偵というより、検察官だな。証拠を集め、犯罪を立証する。それが監査人の仕事だ」
最初のミッション
「で、最初の仕事は?」
「ある行政システムのログ監査だ。どうも不正アクセスの兆候があるらしいが、証拠がまったく出てこない」
行政システムは、国や自治体が管理するデータベースや業務アプリケーションだ。市民の個人情報や税務データなど、極めて機密性の高い情報を扱っている。
「不正アクセスが疑われているのに、証拠が出てこない?」
「そうだ。ログには何の異常もない。だが、それが逆におかしい」
「…まさか、ログが改ざんされてる?」
藤堂は微かに笑った。「そういうことだ」
修はゴクリと唾を飲み込んだ。ログ改ざんが本当に行われているなら、内部犯行の可能性が高い。システムのどこかに隠された痕跡があるはずだ。
「結城、お前にやってもらいたいのは、不正の証拠を見つけることだ」
「よし…やってやります!」
修は拳を握りしめた。
藤堂は小さく頷く。「期待しているぞ。ただし、気をつけろ。監査はときに、強力な敵を生む」
「敵、ですか?」
「監査とは、誰かの不正を暴く仕事だ。つまり、不正をしている人間からすれば、お前は邪魔な存在になる」
修は背筋が少し寒くなった。「そんなにヤバい仕事なんですか…?」
「監査の怖さは、これからじっくり学んでもらうさ」
こうして、新米監査人・結城 修の最初の監査が始まった。
2章:消えた証拠、敵対する開発チーム
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