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【IT小説】機械学習エンジニア、最期の案件 〜託された不正データ〜
登場人物
佐藤 悠斗(さとう ゆうと)
職業: 機械学習エンジニア(元・ネクサス・データ勤務)
経歴: 国内有名大学でデータサイエンスを学び、卒業後ネクサス・データに入社。行政向け機械学習システムの開発を担当。
性格: 責任感が強く、正義感に溢れる。探求心があり、納得いかないと徹底的に調査する。
真鍋 優(まなべ ゆう)
職業: ネクサス・データ所属の機械学習エンジニア
経歴: 佐藤の後輩として入社し、彼の指導のもと機械学習システムの構築に従事。
性格: 明るく社交的で、周囲を和ませるムードメーカー。時に空気が読めないが、根は真面目。
水野 蓮(みずの れん)
職業: ネクサス・データのネットワークエンジニア
経歴: ハッキング技術に長け、AWS環境の運用・保守を担当。過去にホワイトハット活動の経験もある。
性格: クールで無駄なことは一切しないが、仲間には情が厚い。愛猫家。
黒川 隆一(くろかわ りゅういち)
職業: ネクサス・データのプロジェクトマネージャー
経歴: 外資系IT企業出身。結果至上主義で、数字に厳しい。
性格: 冷静沈着だが、合理的な判断を重視しすぎるあまり部下からの信頼は薄い。
第1章:消えたエンジニア
佐藤の失踪
ネクサス・データのオフィスに、いつもの喧騒が戻ってきた。クラウドインフラが動き、スクリーンには大量のログデータが流れていく。しかし、そこにいるべき人物の姿がなかった。
「佐藤さん、まだ来てないんですか?」
真鍋がオフィスの端に座る水野に声をかけた。水野はノートPCから目を離さずに答える。
「今朝からログインしてない。システム管理者権限でアクセス履歴を見たけど、昨日の夜10時が最後だな。」
「昨日は遅くまで働いてましたもんね。でも、それから連絡なしって、ちょっと変じゃないですか?」
「お前が気にすることじゃない。」
水野は淡々とした口調で言ったが、内心では違和感を覚えていた。佐藤は決して無断欠勤するような人間ではない。しかも、彼が担当していた**「行政AIシステム」**のリリースが迫っているこのタイミングで——。
机の上のメモ
真鍋は佐藤のデスクに近づいた。そこには、いつも乱雑に置かれているはずの資料が綺麗に整理され、モニターは電源が落とされていた。
「……ん?」
机の上に、小さな付箋が残されていた。
このデータには気をつけろ
真鍋の心臓が跳ね上がる。明らかに意味深なメッセージだった。データ? どのデータのことを言っているのか。
彼は机の周囲を慎重に探る。引き出しを開けると、そこには数枚の紙が無造作に押し込まれていた。その中には、佐藤が最近扱っていたデータセットの一部と思われる資料があった。
「水野さん、佐藤さんが最近扱ってたデータって、何かわかります?」
「もちろん。『行政AIシステム』の教師データだ。AWS上のS3バケット(クラウドストレージ)に保管されてる。だが、そのデータの中身に何か問題があったなんて話は聞いてないな。」
真鍋は紙をめくりながら、自分のPCを開いた。「この手書きのメモ、何かヒントになるかも……。」
「これ、ヤバいやつかもな……。」
画面に表示されたデータセットの一部を見た瞬間、真鍋の顔から笑みが消えた。
第2章:託された不正データ
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