見出し画像

【IT小説】エンジニアの転職戦記 〜異業種転職に挑んだ男〜

登場人物紹介

主人公:佐藤タケル

  • 年齢:30歳

  • 職歴

    • 新卒で大手SIerに入社、5年間基幹システム(企業の業務の中核を担うシステム)開発に携わる。

    • その後、スタートアップに転職するも、激務と経営不振で心身ともに疲弊。

    • 「このままでは自分のエンジニア人生が終わる」と考え、異業種転職を決意。

  • 性格

    • 楽観的だが、時々悲観的。

    • プライドが高く、失敗を認めたがらない。

    • 技術力には自信があるが、コミュニケーション能力に難あり

ヒロイン:橘リサ

  • 年齢:28歳

  • 職歴

    • 外資系IT企業のクラウドアーキテクト(AWSを活用したシステム設計の専門家)。

    • スキルアップのために日系大手から転職し、現在はリモートワーク中心の生活。

  • 性格

    • 論理的で冷静沈着

    • しかし、意外と情に厚く、後輩の面倒をよく見る。

    • タケルのことを「面白いやつ」と思い、何かと気にかけている。

敵役:高橋マコト

  • 年齢:35歳

  • 職歴

    • 大手SIerでタケルの元上司。

    • ウォーターフォール開発(要件定義から設計、実装、テストまでを順番に進める開発手法)にこだわる昔ながらのエンジニア。

    • 「技術ではなく、プロジェクトマネジメントがすべて」と考えており、タケルとたびたび衝突。

  • 性格

    • 保守的で変化を嫌う

    • 転職を繰り返すタケルを「落ち着きのないやつ」と軽蔑している。


第1章:崖っぷちエンジニア、転職を決意する

転職のきっかけ

タケルが最後にいたスタートアップは、もはやゾンビ企業と化していた。CEOは「**プロダクトマーケットフィット(PMF)**がまだだから耐えるしかない」と言い張っていたが、実態は資金ショート寸前。毎月の給料が遅れるのも当たり前になっていた。

「こんな会社で、俺は何をやっているんだろう…」

AWSのコンソール画面を眺めながら、タケルはため息をついた。**CloudWatch(AWSの監視サービス)**のメトリクスを見ても、サーバーの負荷は低い。そもそもユーザーが増えていないのだから、負荷が高くなるわけもない。

「俺、こんな会社に残ってても成長できないよな…」

ふと、大学時代の友人・ケンジからのLINEが目に入った。

「タケル、最近どう?俺、この前転職して年収200万アップしたわw」

「……まじか。」

タケルの中で、何かが弾けた。

転職活動スタート

タケルはさっそく転職エージェントに登録し、LinkedInのプロフィールを更新した。すると、すぐにエージェントから電話がかかってきた。

「佐藤さんのご経歴でしたら、未経験OKの**SES(システムエンジニアリングサービス)**案件ならすぐに決まると思います!」

「いや、SESはちょっと…。自社開発か、せめて受託開発の企業を希望してるんですが…」

「うーん、未経験だと厳しいですね…」

未経験扱い——それが現実だった。

タケルは確かにエンジニア経験はある。しかし、それはウォーターフォールの基幹システム開発がメインで、**モダンな開発手法(アジャイルやCI/CD)**の経験はほぼゼロだった。

「くそ…やっぱり今の市場では通用しないのか…」

落胆するタケル。しかし、ここで諦めるわけにはいかない。

リサとの再会

そんな中、LinkedInの「あなたへのおすすめ」に橘リサのプロフィールが表示された。

「リサか…懐かしいな。」

リサとは昔、一緒に働いたことがあった。彼女は当時からAWSに精通しており、「クラウドが未来を変える」と言っていた。タケルはそのとき「何を夢見てるんだ」と思っていたが、今やリサはクラウドアーキテクトとして外資系企業で活躍している。

ダメ元でメッセージを送ってみると、意外にもすぐに返信が来た。

「久しぶり。転職考えてるの?」

タケルは現状を正直に話した。するとリサはすぐにアドバイスをくれた。

「今の市場では、クラウドやDevOpsの知識がないと厳しいよ。技術力だけじゃなくて、アーキテクチャの設計思想も理解しないとね。」

「なるほど…。」

タケルは決意した。

「よし、俺もモダンなエンジニアになってやる!」

こうして、タケルの転職戦記が幕を開けた——。


第2章:異業種転職の壁、立ちはだかる

転職市場の現実

タケルは意気揚々と転職活動を開始したが、現実は甘くなかった。書類選考の時点で次々と落とされ、「求める経験に満たない」という定型文の返信が続いた。

「俺、エンジニア経験はあるのに、なぜ未経験扱いなんだ…?」

履歴書を見返しても、確かに経験の空白があるわけではない。それなのに、なぜか企業側は彼を「未経験者」として扱うのだ。

「やっぱりクラウドやモダンな技術経験がないからか…」

タケルは落胆しつつも、何が足りないのかを分析し始めることにした。まずは求人票の傾向分析だ。どの企業がどんなスキルを求めているのかを整理し、自分の経験と照らし合わせてみる。

「AWS、Docker、Kubernetes、Terraform…やっぱりインフラのスキルが必須か…」

彼はすぐに学習計画を立て、Udemyの講座をいくつか購入した。夜遅くまで学習を進め、次の面接に備える。

そして迎えた一次面接。

「佐藤さん、CI/CDの導入経験はありますか?」

「えっと…個人的にDockerとGitHub Actionsを試したことは…」

「実務経験としては…?」

「実務ではやっていませんが、個人プロジェクトでは…」

「そうですか…。では、現場で実際にIaC(Infrastructure as Code)をどのように活用したか、具体例を教えてください。」

「……」

タケルは言葉に詰まった。

こうして、実務経験の有無が壁になっていることを痛感した。転職市場では、単なる学習ではなく、実務での経験が何よりも重要視されるのだった。

「よし、だったら副業で経験を積もう!」

タケルは新たな決意を胸に、クラウド案件の副業を探し始めるのだった。


第3章:ハローワールドとプログラム地獄

はじめてのプログラミング学習

転職市場の厳しさを痛感したタケルは、まずは技術力を磨くことを決意した。手始めに、初心者向けのプログラミング学習サイトを開き、Pythonの入門講座を始めた。

「よし、まずは基本のprint('Hello, World!')からだな…」

タケルはキーボードを叩き、Enterキーを押した。

Hello, World!

画面に文字が表示されるのを見て、少しだけ達成感を感じる。

「おお、これがプログラムってやつか!」

興奮しつつも、次のステップへ進もうとしたが、すぐに問題が発生した。

「変数ってどうやって使うんだ?」

Pythonの公式ドキュメントを読み始めたものの、説明が抽象的すぎてよく分からない。動画チュートリアルを見てみるが、講師がやたら早口で、途中でついていけなくなる。

「ええい、とにかく手を動かそう!」

タケルは数時間かけて、if文やforループの基本を学んだ。最初はスムーズだったが、ある瞬間からエラーの嵐が始まった。

初心者に立ちはだかるエラーの壁

「SyntaxError: invalid syntax…? 何これ?」

エラーメッセージの意味がまるで分からず、Googleで検索するものの、回答が英語ばかり。

「Pythonって日本語じゃ動かないのか?」

タケルは冗談めかしながらつぶやいたが、内心は焦り始めていた。変数名のルールを間違えていたり、インデントがズレていたりするだけでエラーが発生する。

「プログラムって、こんなにシビアなのか…?」

一度エラーが出ると、それを修正しても新しいエラーが次々と湧いて出る。まるでモグラ叩きのようだった。

「いや、俺はエンジニアとしてやっていくんだ!負けるわけにはいかない!」

タケルは一息ついて、エラーメッセージを慎重に読んでみることにした。すると、エラーの原因を特定するヒントが書かれていることに気づいた。

「なるほど、エラーメッセージをちゃんと読めば解決策が見えてくるのか!」

リサの助言:手を動かしながら学べ!

そんな中、リサとのチャットでタケルは学習の進捗を報告した。

「Pythonの基礎をやってるんだけど、エラーが多すぎて挫折しそう…」

すると、リサから即座にアドバイスが飛んできた。

「プログラミングは手を動かしながら覚えるものよ。理論だけ学んでも意味ない。簡単なアプリでも作ってみたら?」

タケルは目からウロコが落ちた。

「そうか、実際に何か作ってみればいいのか!」

そこで彼は、小さなToDoリストアプリを作ることに決めた。単純な機能で構わないが、実際に動かせるものを作ることで、理論がより深く理解できるのではないかと考えたのだ。

「よし、まずはCLI(コマンドラインインターフェース)で動くToDoアプリを作ってみよう!」

こうして、タケルはプログラミング学習を次のステージへと進めることになった。

**(第3章、続く)**手始めに、初心者向けのプログラミング学習サイトを開き、Pythonの入門講座を始めた。

「よし、まずは基本のprint('Hello, World!')からだな…」

タケルはキーボードを叩き、Enterキーを押した。

Hello, World!

画面に文字が表示されるのを見て、少しだけ達成感を感じる。

「おお、これがプログラムってやつか!」

だが、その後すぐに地獄が始まることを、タケルはまだ知らなかった。


第4章:転職エージェントの洗礼

ここから先は

6,059字
この記事のみ ¥ 490
PayPay
PayPayで支払うと抽選でお得

この記事が気に入ったらチップで応援してみませんか?