
定年までに残業ゼロを目指して 〜働き方改革、俺の場合〜
定年までに残業ゼロを目指して 〜働き方改革、俺の場合〜
登場人物紹介
田村 正樹(たむら まさき)
40代後半のベテランSE。官公庁案件歴は15年を超え、防災情報システム周りなら右に出る者はいない。最近は腰痛と戦いながら、"働き方改革"という名の蜃気楼を追い求めている。
皮肉が口癖で、特に「昔は…」と言い出す上司と「最新技術が…」と言う若手には厳しい。
モットーは「効率化こそが正義」。目指すは定年まで残業ゼロ。
佐藤 陽介(さとう ようすけ)
20代後半の若手エンジニア。ポジティブ思考で「とりあえずやってみましょう!」が口癖。技術はまだ発展途上で、CI/CDの概念すら「美味しいのそれ?」というレベルだったが、田村に鍛えられ徐々に覚醒中。
高橋 彩乃(たかはし あやの)
20代前半の新人エンジニア。ネガティブ寄りで、毎日「今日こそ辞めよう」と考えている。超がつく残業嫌い。
CI/CDには強めの興味があり、「自動化すれば帰れる」が信条。
山本 貴之(やまもと たかゆき)
30代後半の中堅エンジニア。理論派で冷静沈着。現場のバランサー役として田村を補佐するが、たまに田村の毒舌にツッコミを入れるのが仕事。
木村 浩司(きむら こうじ)
50代前半のプロジェクトマネージャー。事なかれ主義で、官公庁の顔色をうかがってばかり。
「まあまあ」「とりあえず」「検討します」を使いこなす、典型的な古き良きPM。
第1章:「定年が見えてきた男、働き方改革に目覚める」
プロローグ
「あー、まただよ」
田村はモニター越しに届いた官公庁からの依頼書を見て、心の中で大きなため息をついた。
防災情報システム刷新案件。納期、約2ヶ月。
誰がどう考えても無理があるスケジュールだが、そこに赤字で書かれている。
『国民の安全に関わるため、最優先で対応願います』
(いや、だったらもっと早く発注してくれよ)
そんな皮肉を心で呟きつつ、隣に座る佐藤に声をかける。
「おい佐藤、CI/CD知ってるか?」
「え、ええと、なんかこう…サーバーが勝手に動くやつ、ですよね?」
「ざっくり正解。今からそれ、フル活用するぞ。じゃなきゃ死ぬ」
無理ゲー開始
翌日、プロジェクトメンバーが集まった。
「2ヶ月でシステム刷新ですか…。おもしろくなってきましたね!」と佐藤。
「いや、絶対おもしろくない」と高橋。
「……冷静に考えて、設計だけで1ヶ月はかかるのでは」と山本。
「ま、まあまあ、そう言わずに。官公庁さんも急いでることですし」と木村。
田村は黙って、ホワイトボードに大きく書いた。
『定年までに残業ゼロを目指す』
「今日からこれが我々のスローガンだ。異論は認めない」
メンバーは絶句した。
「この納期で…ゼロって…」と佐藤。
「帰れる未来が見えない…」と高橋。
「冗談にしか聞こえませんが」と山本。
だが田村は本気だった。
無茶な納期にまともに付き合っていたら、心も身体も壊れる。
「どうせなら、働き方改革ってやつ、試してみるか」と腹をくくったのだ。
皮肉まみれの設計会議
初日の設計会議。
「で、要件はこれだけ…ですか?」と山本が確認する。
「ええ。今後変更があるかもしれませんが」と木村。
「いや、ありますよ。絶対」と田村。
ここで重要なのは、CI/CD。
要は「Continuous Integration / Continuous Deployment」の略で、簡単に言えば「こまめに開発して、すぐリリースする仕組み」。
「佐藤、高橋、お前らの仕事は1つ。Gitでブランチ切って、プルリクして、CI回して、デプロイまで自動化。それだけやれ」
「え、だけ、って…それだけで大変すぎませんか…?」と高橋。
「だが、それが全てだ。自動化は裏切らない。人は裏切るけどな」
官公庁という名のラスボス
途中で届く仕様変更メール。
『やっぱりこの機能追加でお願いします』
『予算は変わりませんがよろしくお願いします』
「はい、出ました!」と田村。
「何がですか?」と佐藤。
「国民の安全って言っとけば何でも通る魔法の呪文。いやあ、すごいな。俺も家庭で使おうかな」
「家で言ったら離婚案件ですよ」と山本。
そんな皮肉を飛ばしつつ、設計は進み、実装も少しずつ動き出した。
感情の揺れ
だが、心は平穏じゃない。
深夜、田村はふと考える。
(俺、何やってんだろうな…この年で、またこんな修羅場かよ)
でも、チームの若手が頑張っているのを見ると、意外にも悪くない気分だった。
(まあ、どうせやるなら、面白くしてやるか)
そんな風に思えるのは、経験のおかげかもしれない。
次の展開へ
数週間後、残業ゼロの看板はどうなっているのか。
官公庁との攻防はどうなるのか。
物語は、次の章へ。
第2章:「全員逃げるな、巻き込め大作戦」
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