【IT小説】プロトコルX~未公開技術を狙う影の組織~
登場人物
春川颯太(はるかわ そうた)
職歴: 都内の中小IT企業に勤務するシステムエンジニア。新卒で入社してから5年目。日々の業務は定型的なプログラム修正や顧客対応が中心。
性格: 責任感が強く、常に仕事を完璧にこなそうとするタイプ。しかし、自分の技術がどこまで通用するか不安を抱え、自信を持てない部分がある。
趣味: 深夜のプログラミングや新しい技術に触れること。
菜月玲奈(なつき れな)
職歴: 元ホワイトハッカー。セキュリティ企業に勤めていたが、自身の理念に合わず退職。現在はフリーランスとして活動。
性格: 冷静沈着で計画的だが、過去のトラブルにより人を信じるのが苦手。
趣味: デジタルアート、カフェ巡り。
樹慎吾(たつき しんご)
職歴: 国内有数のAI研究者。大学院卒業後、大手テクノロジー企業でAIの応用研究を行う。
性格: 楽観的でユーモアがあり、どんな状況でも前向きに考えられる。
趣味: スポーツ観戦、DIY。
圭(けい)
職歴: 高校生。父がエンジニアで、小さい頃からコードを書くことに親しんでいた。暗号解析の分野で天才的な才能を発揮。
性格: 少し気まぐれだが、本質を見抜く力に優れている。
趣味: スマートデバイスの改造、ゲーム開発。
第1章: 平凡な日常と謎の招待状
平凡な日々の閉塞感
春川颯太の目の前には、昨日とほぼ変わらないコードの羅列が広がっていた。数ヶ月前に発生したシステムトラブルの再発防止策として、古いモジュールを一から書き直している最中だったが、進捗は思うようにいかない。頭の中では、別の方法があるのではないかと考えつつも、与えられた仕様書に従うしかなかった。
彼のデスクは、同僚が一日の仕事を終えて帰宅した後の静けさに包まれていた。蛍光灯の明かりが眩しく、モニターに映るコードのスクロールが目を疲れさせる。「この作業を片付ければ、少しは時間ができるかな…」 そんな考えが頭をよぎるが、彼の手は止まらない。
「こんなことで、俺は成長できるのだろうか…?」
颯太の心に浮かんだ疑問は、日々の業務を重ねる中で次第に大きくなっていった。プログラミング自体は嫌いではない。むしろ好きだった。しかし、会社の決まりごとや納期優先のプロジェクト進行が、彼からその情熱を少しずつ奪っていた。
彼は一息つくために立ち上がり、給湯室で冷めたコーヒーを口に含む。窓越しに見える都会の夜景はどこか無機質で、自分の人生もこの景色に溶け込んでいるような気がした。
謎のメールとの遭遇
そんなある日の深夜、颯太がようやく作業を終えようとしたときだった。デスクトップに一通のメールが届いた。
件名: 世界を変える技術に興味はありませんか?
差出人: X
本文:
あなたの才能が必要です。以下のURLにアクセスしてください。
メールに記載されたリンク先には注意すべきだと、頭の中で警告が鳴る。セキュリティ教育で嫌というほど学んだことだった。しかし、颯太はどうしてもそのリンクを無視できなかった。
彼の脳裏には、これまで触れることができなかった未知の技術への興味が渦巻いていた。現実の閉塞感を打破するきっかけがここにあるのではないかという期待と、不安が入り混じる。しばらく迷った末、彼は心を決めた。
「もしこれが、何か新しい挑戦のきっかけになるとしたら?」
クリックする手は震えていたが、目は画面に釘付けだった。リンクを開いた瞬間、画面には簡潔なメッセージと地図が表示された。
こちらにお越しください。
その地図に示された場所は、都内のある廃ビルだった。
廃ビルでの邂逅
リンク先には、都内の一角にある廃ビルの住所が記されていた。半信半疑ながらも、その場所へ向かう颯太。夜の静寂の中、その廃ビルはひっそりと佇んでいた。朽ちた看板や割れた窓ガラスが目に入り、人気のないエリアが彼の緊張をさらに高めた。
階段を上る音がビル内に反響する。息を飲みながら指定された部屋のドアを開けると、そこにはスーツ姿の男性が待っていた。
「来てくれてありがとう。君が、春川颯太君だね。」
その男は、どこか余裕を感じさせる微笑みを浮かべながら颯太に言った。室内には大型ディスプレイが数台設置されており、壁一面には何かのコードが投影されていた。
「私は、プロトコルXの管理者…そう呼んでくれればいい。」
その男性の背後に映し出されるコードの複雑さに、颯太は一瞬で心を奪われた。それは、彼がこれまで見たどのコードとも異なり、次元が異なる技術を示唆しているようだった。驚きと興奮で胸が高鳴る。
「これは…いったい何なんですか?」
「簡単に言えば、未来の技術だ。」
男は颯太の質問に簡潔に答えると、ディスプレイに映るコードの一部を指差しながら説明を始めた。その内容は、既存のネットワーク構造を根底から覆すような画期的なものであり、颯太の胸の中に眠っていた情熱を再び燃え上がらせるものだった。
彼はその技術に引き込まれるように、画面に映る情報を見つめ続けた。
第2章: プロトコルXの存在
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