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読めば演奏会が楽しくなる!GRIT流「レ・ミゼラブル」の味わい方 〜第3回 「レ・ミゼラブル」と吹奏楽〜

すっかり秋の空気となりましたね🍂
この心に染み渡るような涼しさと空気の匂いが大好きなWind Ensemble GRIT 広報担当です。

私たちのnoteをご覧いただきありがとうございます!



私たちは2025年2月8日(土)に開催する第5回定期演奏会にて

C. M. シェーンベルク作曲 福島弘和編曲
ミュージカル「レ・ミゼラブル」より


を演奏いたします。



今回の記事はこれまで2回に渡ってお届けしてきた読めば演奏会が楽しくなる!GRIT流「レ・ミゼラブル」の味わい方最終回になります!🇫🇷

寂しいですね。


前回の記事はこちら↓


最終回では、実際に福島弘和氏編曲のメドレーに含まれる曲目について解説していきたいと思います。



それでは見ていきましょう٩( 'ω' )و



Prologue

1815年。フランス、トゥーロン徒刑場。


囚人たちの果てしない絶望と怒りに満ちたこの曲から物語の幕が開けます。

猛々しく始まる音楽がこの後の物語の運命を予感させるようです。



そしてジャン・ヴァルジャンもそんな囚人の中にいた1人でした。

彼はこの不条理な世界に絶望し、人間と社会に対する憎悪に身を蝕まれていきます。

https://youtu.be/pBbnvOqVNyM?si=OStCtA3rIeCxsD1S




At the End of the Day

1日の終わり。
それは生きる日が1日減る、ただそれだけのことである。


貧しさの中で生きる人々がその窮状をシニカルに表現した一曲。

ここにもまた、手を差し伸べてはくれぬこの社会に対する怒りが込められているように感じます。


そしてこの怒りこそが「レ・ミゼラブル」という作品の本質なのです。




この中で、ファンティーヌという一人の女性が登場します。


彼女は愛する娘を女手一つで育てるために、
娘を宿屋の夫妻に預け、
自らは工場で働いていました。



「レ・ミゼラブル」はヴァルジャンとファンティーヌ、この二人のLes Misérablesの想いが作り出した物語です。


会えなくなった我が娘を想う彼女の気持ちこそが、ヴァルジャンとこの物語を結末まで導く大きなエネルギーとなるのです。

https://youtu.be/SDyL1nQQlqw?si=pEUchTrfiOaFr0NW





そして、演奏曲で続くのはオーボエによるSolo。


これは“Fantine’s Death”、

つまりファンティーヌがこの世を去る直前、

遠くにいる娘コゼットを想いながら語りかける際に使われる旋律です。



本編曲には「レ・ミゼラブル」で最も有名な曲の一つ、ファンティーヌの歌う“I Dreamed a Dream”が使われておりません。

("One Day More"と旋律が重複するからでしょうか。)



その分ファンティーヌの娘を想う気持ちは、

この物語を貫く大きな愛は、

このオーボエのSoloにこそ込められていると言えるでしょう。



On My Own

Fantine’s Deathはその後、物語の後半でエポニーヌの歌う”On My Own”と同じ旋律となります。

本編曲でもそのタイミングで曲名が”On My Own”へと変わります。


胸から溢れ出すマリウスへの想い。
しかしそれは決して叶わない。

エポニーヌが絶望の淵で歌い上げる珠玉の一曲です。



雨夜の輝きとざわめきが私を包み込む中、
目を閉じればそこに彼がいてくれる。

しかし日が昇れば、その魔法は消え失せる。

街に溢れだす見知らぬ人々。彼らにはそれぞれの人生があり、彼らはそれぞれの幸せを抱きながら生きている。

見知らぬ人々の只中にあって、己の孤独を突きつけられる。

そして気付かされる。
彼の人生も、彼の幸せも、私とは関係のないものなのだと。


そのようなエポニーヌの心情を映し出した美しい歌詞がこの曲の魅力です。


その歌詞の美しさを、

そしてエポニーヌの胸から溢れだす“I love him”を、

いかに「音」だけで表現できるでしょうか。

https://youtu.be/CIElS4_K7hY?si=4XDB4T7kV4_rZMvc




A Heart Full Of Love

そんなマリウスの気持ちはコゼットのもとに。

互いに惹かれ合うマリウスとコゼットが、
溢れんばかりのその想いを重ね合わせた一曲。

初めて互いの名前を知り、言葉を交わしたその喜びが胸を満たします。



そんな2人の奏でるメロディに副旋律を重ねるのがエポニーヌ。
彼の幸せは私ではない、別のところにある。


二つの感情が掛け合います。


そして最後に響くB♭の和音は

1音(B♭)と5音(F)の愛と、
3音(D)の哀

ただ純粋に、その感情だけを響かせます。

https://youtu.be/ocDL_b6BRE4?si=s6m-nHjpy2eWDiS7




The Final Battle


曲は一転して「革命」の場面。

苦境に喘ぎ、自らの手で明日と政治を変えるために武器を取り、そして命を落とした若者たちの姿の前に身が引き締まるような思いがします。


烏滸がましくも私たちはその想像を絶するような「覚悟」を表現しなくてはなりません。



その後に導かれるのは“Do You Hear the People Sing?”の旋律。
明日を願う、力強い希望の歌です。

しかし、本編曲では「最後の戦い」を終えた後。

夢が夢と散った後に響く追悼の歌のように聞こえるのは私だけでしょうか。

https://youtu.be/1q82twrdr0U?si=GB8Z_i--xGzrDWhK




One Day More

しかし、彼らの明日を願うその気持ちは
いつの時代にも受け継がれていきます。

それを示すが如く、最後に演奏するのがこの曲。

群像劇としての「レ・ミゼラブル」を象徴する一曲だと言えます。


時間は戻って「革命」前夜。


ヴァルジャン、マリウスとコゼット、エポニーヌ、ジャヴェル、そしてアンジョルラスら…

それぞれが明日という日に掛けた想いを歌う場面。




「レ・ミゼラブル」という作品が、この時代に生きる人々の持つ様々な想いが響き合うことで完成する壮大な「叙事詩」であるように、


それぞれの登場人物たちの想いが込められた旋律が幾重にも重なり、響き合うことでこの曲は完成します。

https://youtu.be/fUToJj7OtSk?si=FRbuOsQGf-jUjd9u




Wind Ensemble GRITは20代の学生・社会人で構成される楽団ながら、多様なバックグラウンドを持った団員が集まっています。


それぞれがそれぞれの想いを込めつつ演奏することで、

V. ユゴーから受け継いだ莫大なエネルギーを表現することができ、

そして聴いてくださる方々に、彼らが願ったような「明日への希望」を感じてもらえたら、

これ以上の幸せはございません。




以上になります!

全3回に渡ってお送りしてきた「レミゼ」紹介シリーズ、いかがでしたでしょうか?

まだまだ語りきれなかった部分も沢山ありますが、残りの想いは吹奏楽団らしく、「音」で伝えたいと思います。

私たちは150年以上にわたって紡がれてきた『レ・ミゼラブル』という一つの壮大な文化に敬意を表し、

人間の愛と命を称えるこの作品の精神を、吹奏楽という形態で表現いたします。


是非、2025年2月8日(土)
Wind Ensemble GRIT 第5回定期演奏会

にてお会いできることを楽しみにしております。



今後も私たちのnoteでは団員インタビューや曲紹介をお届けいたしますので、是非スキやフォローしていただけますと幸いです。

またお会いしましょう〜(^^)/~~~

【次回10月5日(土)更新予定!】


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