オナニーを禁じられた男 #2 「もちろん、行こう」
オナ禁12日目の夜。ここ最近、軽度の興奮を身に纏った俺は、日も沈みかけた新宿にいた。
「今日、行くよね?」
ゆず氏(@M_rk_np)からの提案。
今までの俺なら断っていたかもしれない。
「いや、今日はこの後予定があって。」
「今度にして、また集まろう。」
そんな理由を並べてこの瞬間から目を背けて、明日以降の自分に期待をして、でも明日以降の自分も当日になればきっとそれ以降の自分に期待して。未来に期待を託して、俺はいつまでも行動をしなかっただろう。
でもこの日は違った。これはオナ禁によるホルモン変化なのか定かではないが、俺はオナ禁12日目であり、軽度の興奮状態が続いていたことは事実だ。
「もちろん、行こう。」
だから、今日こそはやるんだ。ストリートナンパを。
ゆず氏に加えて、ツトム氏(@tomtom232323)の後押しもあり、俺は人生初のストナンをするため新宿へ向かった。
俺たち3人はストナン会場である新宿に着いたものの、景色はいつもの新宿だ。飲みに行く時、デートに行く時とこの街自体は何も変わらない。相変わらず騒がしい街だ。
だがいつもと違うのは、今日俺はこの街で誰と会うのか、どこへ行くかは全くの未定で、その未来は自分で切り開かねばならない、ということだ。
この喧騒の中で俺は何ができるだろう。
JR新宿東口の改札から出た俺は、期待と不安が丁度半分ずつの、小学校の入学式の時のような感覚を覚えていた。
それからは先述した2人の後押しを受けながら、何組の女子に声をかけただろうか。最初にどこでどんな子に声かけをしたのか具体的には思い出せない。でもそれはチャンスは突然訪れ、突然消えてしまうというストナン特有のものなのだろう。
俺はこの日ほど、「チャンスの女神は前髪しかない」と実感した日はない。
そして、初めて声をかけた時の緊張感、初めて会った女子とその場で和気藹々と話した後の達成感は1日経った今日も忘れられない。
「俺にもこんな大胆なことができるんだ」
結果的には2人組を連れ出したものの、一夜を共にすることはできなかった。その日は悔しいという、感情が渦巻いていた。
だが1日経って思った。俺は何も失ってない。
むしろ、-言葉にしてしまうと陳腐になってしまう気がするのでここでは避けるが-、得たものの方が大きいと感じている。(何でも言語化してしまうと、他人が定めた「言葉」という定義の中に、自分の感情や思考を押し込んでしまう感じがあまり好きではないので、自分の中にしまっておきたいこともある。)
ストナンの話はここで終わりにしよう。
ここからはオナ禁13日目を迎えた今日の心境を綴りたい。
オナ禁の効果。それは個人によって当然変わるものだ。
何日やれば何が変わるのか?それは等しく誰にでも起こりうる事象なのか?それは今の俺にはよく分からない。
でもこの2週間ほどの期間で分かったこともある。
それは、自分自身の変化をこうして発信していれば共感してくれる人や、共感できる人を見つけることができること。
例えば、GJ氏(@GaijinJackmanGJ)は俺と全く同じ日数のオナ禁をしており、彼曰く、
「朝から気が荒ぶり、オナ禁の快楽>オナニーの快楽」であるという。
俺もオナ禁を始めてから、家にいても落ち着かず早く外へ飛び出して何かをしたい、身体を動かしたい、人と話したい、知らないところへ行きたいという衝動に駆られている。これはオナ禁以前よりも顕著な変化だ。
自分へ起こった変化が、他の人にも起こっている。
これを知った時に、ある種の自信になり、自分の感覚は間違っていなかったのだと思った。
それと同時に自分にだけしか起こらない変化が見られたら、それはそれで面白いんだろうな。
俺は日々強くなっていく興奮を我が物としてコントロールしつつ、新しいことに対して臆せず挑戦を続けていきたい。
今後の自分に期待していきながら。
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