No Duo ができるまでの話。
8月26日 土曜日、私は新曲「No Duo」を投稿した。
今回は、この曲について話していこうと思う。
この曲は本来であれば7月1日~7月7日までのイベントで投稿する予定であったが、いろいろな事が積み重なり投稿期間内に投稿できなかった。
事の始まりは2023年1月頃。
ボカロPや歌い手、絵師などが協力して1つの作品を作るというイベントに参加してみたく、募集をかけたりメンバー探しをしていた。
私はボカロPとして参加する予定だった。
その際に歌い手の方から参加してみないかとのメッセージが来て、誘われるままに参加した。
最初はとても嬉しくて、「こんな暗い曲ばかり作っている私でも活躍ができるのか」と、気持ちが高まったのを覚えている。
ふだん私は暗い曲しか作らないし、ダークな雰囲気しか出せないし、歌詞はドン底ネガティブみたいな言葉しか出てこないから、本当に心の底から舞い上がった。
暗い曲でも受け入れてくれるとそう思っていた。
さっそく皆で自己紹介をし、チーム名を決め、頑張りましょうということになった。
まずはボカロPである私が楽曲を作らないことには始まらないため、さっそく作曲を始めた。
BPMは160前後でアップテンポだということは事前に伝えてあったので、その通りに作った。
歌詞は「嘘 はどうでしょうか?」と言われたので、「嘘」にちなんだ言葉を選び、作詞した。
いつもは、歌詞はもう少し鬱っぽく書くのだが、今回は共同制作ということもあり、少しは言葉選びに気を遣って作詞をした。
そして、最初にできた歌詞がこちらである。
【嘘つきだらけの哀れな人間が
この世界にはたくさん溢れている
偽善者だらけの悲しい人間が
この世界にはたくさん溢れている
君の言葉だって信じられない
裏切られるかもしれないし
そうやって怯えて生きてたら
人間不信になりました
誰が何を言っても 正解がわからない そう わからない 何も知らない
君が何を言っても 真実がわからない 嘘つき者だから
嘘つき者だから
偽善者ぶってる哀れな人間に
僕は死んでもなりたくはないな
嘘しかつかない愚かな人間に
僕は死んでもなりたくはないな
君と話したってわかり合えない
僕が悪者にされるから
そうやって理不尽な扱いさ
正直者が馬鹿を見る
誰が何を言っても 正解がわからない そう わからない 何も知らない
君が何を言っても 真実がわからない 嘘つき者だから
嘘つき者だから
Go away pathetic liar 】
タイトルは嘘ということもあり、嘘つき者をイメージして「Liar」にした。
個人的には、中々上手く書けたと思っている。
曲だって大好きなシンセサイザーの音を使っているし、アップテンポで乗りやすい。
繰り返し同じメロディを使っているから覚えやすいと思った。
この楽曲をグループDMに提出しようと思い、TwitterでDMを送る。
一応まだラフ段階だったが、提出したのは2月である。
しかし、DMを送ったところ、既読はついたものの1週間ほど無視されたのだ。
あれ?と思いプロフィールを見に行ったが、しっかりツイートはしているので浮上している。
なぜDMは返してくれないのか不思議だった。
別に、数秒で既読をつけて返信をしろなんて言わないから、数時間後、1日後には返してほしかったが……
メンバーは私を除くと4人だったが、4人全員返信がない。
さすがに不安になったが、1週間すぎくらいにようやく「いいと思います!」と返信があった。
ほっとしたが、あまりにも返信が遅すぎると思うのは私だけだろうか。
ツイートはしているんだから確実にアプリ上では居るはずだ。
DM欄は見ないのだろうか??
普通、通知がつくからわかるはずなのに。
本当はこの時点から、このメンバーと共に制作をするのはまずいとは思ってはいたが、私の予想は的中した。
社会人となれば「報告・連絡・相談」というのは当たり前だし、今回はたかがイベントだったが、意思疎通が取れないとなると、チームでの連携も難しくなる。
全員で作品を完成させるためには、協力が必要なんだから、返信は早い方がスムーズで良い。
そのまた数週間後、いよいよ楽曲が完成し、YouTubeに投稿できるような作品となった。
この完成品をまたDMに送る。
今回は割と返信が早かったので安心した。
もう楽曲は作ったし、私のやるべきことはほぼ終わった。
後は、イラストを描いてもらい、動画編集をしてもらい、歌い手さんに歌ってもらうだけだ。
この楽曲の完成品を提出したのは3月である。
きちんとオフボーカル含めたデータを渡したので、歌い手さんも歌えるはずだ。
そしてなんと、そこから5月になるまで一切動きがなく、5月頃からイラストはどうするかの話し合いになった。
絵師さんにラフを描いてもらったので、「このラフが楽曲に合うと思います」と返信をし、描いていただいた。
しかし、このラフ段階からも動きが全くなく、6月頃になりようやく「進捗どうですか?」との連絡。これは歌い手さんから来た。
絵師さんが「構図に悩んでいる」とのことで、描くのが遅れてしまったらしい。
構図に関しては私もずっと悩んでいて、絵師さんになんというアドバイスをすればよかったか、どんな構図が合うのかはピンと来なかった。
私は絵が描けないから、アドバイスがむしろおかしな指示にならないか、失礼なことを言ってしまわないかが不安だった。
最終的に、私がネットからそれっぽい構図を絵師さんに渡し、「こんな構図でお願いします」と言い、「分かりました!」と返信があった。
色や雰囲気などのイメージは、事前に伝えてあったはずだ。
イラストの完成品はその数週間後(6月末まで)には来ていたと思う。
しかし、ペース的にはだいぶ遅い。
本来であれば6月はもうすでに動画師さんが動画編集をし、歌い手さんが音源を出すはずなのに、何も動きがないのだ。
歌い手さんはツイートはする割には音源を出さないし、あなたが出してくれないとMIX師さんも動けないのに。
本当に大丈夫なのか、間に合うのかという不安と、歌い手さんとMIX師さんが個人でやり取りをしていたらいいな。という思いで入り交じった。
一番不安だったのが、動画師さんである。
なんと動画師さんに関しては、チーム名決めの段階から一言もDMで喋っていない。
挨拶や自己紹介も実は動画師さんはしておらず、DMでも喋っているところを1回も見ていない。
楽曲データを提出した時も感想を言わないし、意見も言わない。
何か言えばいいのに。
でもやっぱりツイートはしているから、Twitterにはいるんだろう。
DMを見てないだけで。
もう私はデータを提出した3月辺りから、このメンバーはやる気がないんだと思ってはいたが、まさかDMですら返信しないような、怠惰な人なんて思っていなかった。
危機感や焦りがあれば、5月や6月でペースが遅いことに気づき、誰かしら指摘するだろうに、誰も指示しない。
多分、このイベントに対して「お遊び」だとしか思っていないのだ。
仮にTwitterが凍結やアカウントロックされたとしても、避難用としてディスコードを交換しているし、そちらでも連絡は取れる。
何らかの理由で遅れてしまったり、辞退することになったとしても、連絡をするのは人として当たり前のことだ。
このチームはそれすらもなかった。
私は本気で作曲をしたし、歌詞だって必死に考えて作った。
それを誰もが見て見ぬふり、データを送っても既読無視、私の頑張ったこの楽曲をどう思っているのだろうか?
せっかく頑張って作ったものを侮辱された気分。
私の作る曲は確かに暗いし、聴く人が不愉快になることだって知っているが、あまりにも扱いが雑ではないか。
心を込めて作ったのに、一瞬でゴミになる。
裏切られた気分だ。
結局、私の楽曲とイラストだけ完成したまま月日が流れ、ついに7月1日。
この日から他のチームが曲を出し始める。
いい曲がたくさんあった。素敵な曲をたくさん聴いた。
なのに、私たちのチームはまだ完成していないし、投稿もできない。
劣等感に襲われた。
投稿できないのは、私の曲が原因ではないか?
私の楽曲が歌いにくいからか、そもそも歌詞がダメだったか、曲調がダメだったか、いろいろ考えた。
しかし、DMで返信が来た時、「いいと思います」「かっこいいですね!」と返ってきて要望や意見がなかった。
もう、何がダメだったのかが分からないし、私の被害妄想かもしれないが、投稿できなかった原因が全て私のような気がして怖くなってしまった。
そもそも私がイベントに参加したのがダメだったのか、やらなければよかったのか。
自分の曲は自分が一番好きだから、肯定してあげたかった。
けれどいろんな思いでぐちゃぐちゃになり、涙まで出てきた。
この作品がどうなってしまうのかどうかが恐怖で仕方なかった。
次に動きがあったのは7月5日。
イベント投稿期間内は7月1日から7月7日だが、ついに動きがあった。
だが、衝撃的な内容だった。
歌い手さんが歌のデータを提出し、MIX師さんがこれからMIXするらしい。
あと2日でイベントが終わるのに…?
どう考えても間に合わない。
しかも、なぜ間に合わないのに危機感や焦りがないのかが疑問だった。
歌い手さんも直接私に謝罪をすることもなく、堂々と7月5日に音源を出すのはなぜだろうか?
明らかに間に合わないので、「イベント投稿期間が終わりますが、別の作品として出す予定ですか?」と聞いたところ、「その予定です」と返信。
さらに、MIX師さんの発言で「作業は来週から始めるので、ゆっくりで大丈夫です!」との事。
どういうことだろうか……?
頭が追いつかなかった。
なぜそんなにマイペースなのだろうか。
全員で作品を完成させ、7月1日から7月7日の投稿期間内に投稿する約束ではなかったのか。
約束やルールを破る人間は嫌いだ。
私は絶対にこの期間内に投稿したかった。
だから危機感も焦りもあったのに、君たちはゆっくりと作業をしている。
許せなかった。
投稿期間内に出せないのであれば、もう共同制作でも何でもない。
イベントの曲でもない。
私は間に合うように3月には楽曲を提出したのに、7月になりようやく提出するなんて、数ヶ月ものあいだ何をしていたのだろうか?
都合があって遅れるとか、辞退するとかなら仕方がない。
しかしその連絡もなし、謝罪もなしで堂々と7月に後出ししてくるのはどうなのか。
元々既読無視とかされてきたから、そういう人間性、性格なのかと思っていたけれど、ここまで酷いとは思わない。
焦りとか不安とかを通り越して、呆れてしまった。
私はこんな人間たちと共同制作していたのだ。
私こそやる気がなくなった。
勝手に君たちで歌って、ミックスして、動画でも作ってください。という気持ち。
私の「Liar」という楽曲は失敗に終わった。
悔しい、悔しい、悔しい。
せっかく作ったのに。裏切られた。
しばらくは立ち直れなかった。
もう誰とも曲なんて作らないと決めた。
イベントだって参加しない。
なんならボカロPだってこれを機に辞めてやる、とも思った。
ショックすぎて引退まで考えた。
頑張った努力の証は、簡単に紙くずになる。
だから人間は嫌いなんだ、みんな裏切るのだ。
月日が流れ8月になった。
7月31日まで歌い手、MIX師にフォローされていたが不愉快だったのでブロックした。
本当はブロックなんてしたくないのに、今回はうんざりしたので縁を切った。
絵師、動画師に関してはフォローもされていないし繋がりもそんなになかったからそのままでいた。
動画師なんて一言も会話すらしてないんだから赤の他人である。
「Liar」という曲は失敗に終わったが、どうにかして救いたかった。
投稿期間内にYouTubeで出す予定だったから、早く出したかった。
今回こそは失敗に終わりたくない。
歌詞がどんなにダメでも、暗くても、YouTubeに私の作品として残ればいい。
だから私は、歌詞を大幅に改変することにした。
別に今のままで、「嘘つき者」という内容でも、チームメンバーのことを意味しているからよかったのだが、私の中で悪い思い出が残ったので変えることにした。
チームメンバーへ向けて嫌味ったらしく書いてやった。
私は昔から社会問題とか、生きづらさとか、世の中への不満とかを歌詞にしたいと思っていたから、今更こんな嫌味な歌詞を書いても何も無い。
前回に出した過去作品、「被害妄想」「洗脳」「お前のせいだ」だって、昔の同級生や前の職場の人に向けて作った曲だから、対象人物が変わっただけだ。
これがイベントのチームメンバーになっただけ。
世の中、不満をぶちまけた歌詞の有名曲なんてたくさんあるし、私がこうやって不満を言ったところでちっぽけな存在にしかならない。
元々、私の中で「音楽は自由だ」と思っていたから、メロディも使う音もコード進行も歌詞も、何もかも私の好き勝手書いてきた。
だから音楽で愚痴ったって、反吐を吐いたって、何をしても構わないと思っている。
直接口に出して言えないことを、音楽で吐き出していきたい。
ブロックをしたから見れないだろうけど、私のこの歌詞を見たところで、あのチームメンバーたちは何とも思わないだろう。
既読無視をしたことへの罪悪感、危機感のなさ、イベントを軽く捉えていたこと。
全部君たちは無自覚なんだ。
私は本気で取り組んだのに。
仮に謝られたとしても、心にある傷はずっと消えないし、より人間不信になったんだから。
それで、歌詞を大幅に改変した曲こそが「No Duo」である。
デュエットをしなかったという理由でタイトルはこれにした。
本当はチーム名の名前をパクってタイトルにしようかとも考えたが、さすがに悪質なのでやめた。
先ほども言ったが、今後私が誰かと楽曲を一緒に作ったり、ボカロのイベントに参加することはない。
本当は参加したいが、今回のように裏切られるのが怖いから、本当に信用ができる人としか作る予定はない。
私は本当に臆病だから、自分から声をかけることもしない「受け身の人間」だ。
ただ、こういう「受け身の人間」ができるきっかけは、今回のように周りの影響もある。
一生懸命がんばって努力したのに、誰かに見放される。しかし悔しくて、また努力し抗ってみる。それをまた他の誰かが見放す。というループを繰り返していると、人間は最悪、自殺だって考えるのだ。
メンタルが弱いとか、逃げているとかいう問題ではなく、他者からの「受け入れ」と「見放し」を繰り返すと、人間は誰だって壊れていく。
今回のイベントの件でよく理解したのだ。
些細なことだが、1週間既読無視をしたり、やる気がなかったり、人が本気で作ったものを軽率に見るような人とは関わりたくはない。
提出期限を破ったり、守れないような人とは関わりたくない。
イベントで関わった君たちは何も損をしないだろうけど、本気で物事に取り組んだ人は傷つくということを忘れないでほしい。
いつだって、真面目な人が損をして傷つく思いをする。
何かひとつのことに集中して努力をしても、裏切られる。
世の中はそういう風にできている。本当に理不尽だ。
これが、「No Duo」ができたきっかけである。