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【産むことに人生全振り?!のりちゃんの話⑥】もしも精子がなかったら?!精子がいなかった夫婦が選べる選択

    みなさんこんにちは。
 脊髄損傷車椅子ユーザーをパートナーに持つ2児の母、のりちゃんです。脊髄損傷の車椅子ユーザーと子どもを持つことについて、私の経験をお話させていただいています。

 ここに書かれた内容は、あくまでも私の場合の話ですので、一個人の経験談としてお楽しみください。

前回は男性のTESEについてお話しました。

 もしも精子がいなかったら?
私たちはTESEを2度行っています。1度目はまだ右も左も分からなかったのですが、2度目は「もしも精子がいなかったら?」を強く意識し、検索魔になりました。

 それは友人の話を聞いていたからです。脊髄損傷の友人は再婚で、今のパートナーと不妊治療をしようとTESEをしたところ、既に精子が採れない状況になっており、慌てて前のパートナーと不妊治療をした病院に問い合わせ、唯一残っていた1本のアンプルを使って何とかお子さんに恵まれたそうです。


もしも精子がなかったら?

 我が家は2度のTESEで活動精子を得ることができましたが、初めてのTSEをした13年前はそういう可能性があることさえ知りませんでした。そんな経験を元に、もしも精子がなかったらどんな選択があるかをお知らせいたします。


①時期をずらして再度TESE

 実際には可能性は低いそうです。

②セカンドオピニオンで他の病院へ

 こちらも①同様です。

③夫婦ふたりで生きる選択


 この選択を選ぶ方は多いです。子どものいない夫婦だからこその楽しみや幸せ、行ける場所は案外たくさんあります。

④非配偶者間人工授精(AID)
 
 子どもの出自を知る権利が現時点ではないことや、ドナー情報の保存期間から生物学的父親がわからないケース、精子提供での医療介入が人工授精に限定されるため体外受精にステップアップできないこと、慢性的なドナー不足、ドナー不足による実施病院の少なさなど様々な問題があります。

⑤特別養子縁組

 特別養子縁組では法的な要件を満たすことや、家庭裁判所に申し立てをし心理的・経済的・社会的適性があると判断される必要があります。特別養子縁組斡旋団体はいくつか存在しますが、多くの団体が特別養子縁組を希望する際、健康状態や生活環境についての基準を満たすことを条件としているため、実際には脊髄損傷者が特別養子縁組をするのは障害のない人に比べ、ハードルが高いのではないでしょうか。

⑥養育里親

 こちらは各地域によって制度の内容や要件が異なるため、居住地域の福祉事務所や児童相談所・里親支援機関に問い合わせる必要があります。養育里親になるには一定の健康状態が求められるため、脊髄損傷という障害がどう判断されるかはわかりません。家庭訪問や研修等があり、責任を持って子どもを養育する環境が用意できるかが問われます。

最近では精子に成熟する前の細胞である精子細胞を採取して顕微授精をするなどの方法もあるようです。

 この他にも今のパートナーと別れてステップファミリーへの道を目指したり、精子提供者を自身で見つけて子どもを得る場合や、生物学的な父親と3人で共同して子どもを育てる場合なども最近ではあるようですが、後者2つはさまざまな複雑な問題がまだまだ多いのが現状です。

私たちの場合



 1度目の1度目のTESEで取れた精子は10アンプルでした。
「それってつまり何匹ですか?」
おそるおそる聞くと、帰ってきた答えは
「何匹とはお答えできませんが、顕微授精10回分になります。」
「えーと、それってどれくらいの感じで捉えたらいいんでしょう…。少ないのか、多いのか…。」
「何人ご希望ですか?これだけあれば何人だって作れますよ!」

 それから私たちは約2年の不妊治療で第1子を授かり、そこから3年ほど不妊治療をしましたが2度妊娠するも生まれてくれる子はいませんでした。その後、凍結した10本と再凍結分を使い切ってしまうことになるとは夢にも思いませんでした。

 その後検査や再TESEを行い、第2子妊娠するまでにまた2年ほどの歳月が経過してしまいました。

半端ない追い詰められ感とカウントダウン

 全部で10本しかない精子アンプル、1回の顕微授精のたびにひとつ解凍するため、卵子が1つしか取れなくても20個とれても1回分の精子アンプルが消費されます。

 つまり、既にとってしまった精子の質を卵子でカバーするしかない!卵子の個数が採れた方がよりチャンスに結びつく。女性側の肩にすべてがのしかかっている状態です。

 1本、また1本と減るアンプル数を前に、平静を保つことは不可能でした。

 体質改善に課金し、あらゆるクリニックのブログを読み漁り、海外からサプリを取り寄せ、温活だ!とよもぎ蒸しパットを買い、神頼みだ!と妊活スポットを巡り、最新の治療法を見つけては病院に提案し、提案しては
「この病院では安全が優先されるので先進的な治療は…」
と言われて下唇をかみ締め、ドクターに
「私にできることは何ですか?」
と聞く度、
「もう十分がんばっておられます。提案できるものはこちらから提案します。ですが今は何もありません。」

自分を責めるしか方法がなかった

 私の卵子の質でしょう?私が頑張れてないから受精しないんでしょう?私の子宮が良くないの?だから着床しないんでしょう?私がアレルギー体質だから受精卵を排除してしまうのかも…。 
 自分を責める以外の方法があったなら、教えて欲しかったです。


 終わりが来た日、最後のアンプルを使った日、私は一体どうなってしまうんだろう…。恐怖で仕方ありませんでした。どこの病院に転院すればいいのか、長崎か長野か…でも上の子がいてはなかなか。私は一体どうなってしまうんだろう。壊れてしまうの?
 特別養子縁組やAIDを調べ、Xに送られてくる「実績あります。お手伝てできます。」のDMさえ一瞬目に止まってしまうほどでした。

 ですが特別養子縁組は障害がある夫婦にはハードルが高く、また第1子が実子の場合は難しかったのです。更に夫は特別養子縁組をすることには反対だったこともあり、精子を使い果たした先は妊活の終焉を受け入れしかありませんでした。
 それまではとても苦しくて、精子がないただそれだけの事がこんなに苦しく女性の人生を狂わせるのかと悔しくて憎くて、毎晩泣き明かしていました。実子を持つって、なんなのでしょうね?
 生殖の医療介入を決めた私たちは、自分たちで終わりを決めて受け入れる必要がありました。
 長い不妊治療を行ってきたからこそ、そして全面自費の時代だったからこそタイミングを失い、不妊治療が辞められなくなってしまっていました。


不妊治療をはじめる前に決めておこう!先のこと

 不妊治療を長年駆け抜けてきた私からみなさんにお伝えしたいことがあります。人生の時間やお金を無駄にしないために、女性のキャリアを失わないために予め先のことを決めておくとスムーズです。

①精子があった場合、なかった場合どういう選択を求めるか話し合っておく
②妊娠した場合、しなかった場合どういう選択を求めるか話し合っておく
③もし余剰胚(凍結受精卵のあまり)が出てしまったり、凍結精子の残が出た場合どうするか?

 これらは決めていても、いざその時になれば気持ちに変化がでることはあります。それもアリです。その時はまた話し合い、意見をすり合わせればよいのですから。
 事前に見通しを持ち、夫婦で話し合っておくことこそが重要です。

 男性のみなさん、これらを女性任せにせずご自身のこととして自ら調べて考えておいてください。精子というバトンを渡したその先で、女性の人生は妊娠してもしなくても大きく変わってしまいます。

 次回は、不妊治療の終わりとは?リアルタイムな今ののりちゃんちの状況をお知らせしたいと思います。

 




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