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戦闘妖精・雪風第5部の感想14話

 このテキストは、2022年からSFマガジン(早川書房)で連載中の、神林長平「戦闘妖精・雪風」シリーズ第5部を読んだその日に書いたフレッシュな感想メモです。読んだその日にふせったーに出していたものを、あまりに酷い表現は削り、誤字を直して移しています。感動や思いつきをそのまま書いているので、感想としてはまとまっていません。自分のための忘備でもあって、書くことで作品を理解しようとしているんです。
 おばかな個人の感想なので、おちゃらけていたり、ご不快な表現もあったりするかと思いますが、ホントに戦闘妖精・雪風が大好きなんです。あしからずご容赦ください。


2024/6/26 22:47

戦闘妖精・雪風 第5部14回 衝突と貫通 

(SFマガジン2024年8月号2023.06.25発売)

 機械の心を掴むには…の対話、深井大尉の話を桂城少尉が自分の言葉で受け止めるから、こちらの理解もサポートされて良いね。そして深井さんの傷を思い出すあの時のTAISポッドが!次号までが長い!

雪風の心を掴むには…

 雪風に乗って出る零と桂城少尉。ふたりの信頼関係はますます深まってる感じがしていいね。そして、深井さんが雪風との関係を桂城少尉に話すのが恋バナ風で楽しい。
「ジャムなどどうでもいい、雪風と飛べればそれでいい、と思っていた」
「おれは相変わらず、雪風に関心がある」
「片思いだな」
「エディスは~対処法を教えてくれた。両想いになる方法だ」
「どうすればいい、と?」
それで、雪風に失恋したと言う深井さんに、
「大尉には同情しますが…」
とかね。
 そして、このあとからがとても好き。機械の心を掴むには…の話をする桂城少尉と深井大尉の対話。深井大尉の話を桂城少尉が自分の言葉で受け止めてくれるから、こちらの理解もサポートされる。
 機械の心を掴むには… レトリックとメタファーで時として嘘をつく「言葉」ではなく、「直接感じ取ればいい」
 雪風は言葉を話さない動物だ、と思えば相手をできるだろうが、実際には動物でもない雪風がどう感じているのか、は、生物の想像を絶するものなのかもしれない。人間が作ったから理解しやすいなどはない。そもそも、人間であっても言葉でなされない「思考」がどうして可能なのかが謎だと。桂城少尉が「ジャムも雪風もわれわれも、みな同じだ」言葉を持たない相手の思考を探るのは難しい、とまとめる。みな同じ。うん。
 機械(雪風)の思惑を探るのは人間の思惑を探るよりも困難だなと思う深井さんが、桂城少尉やブッカー少佐ら人間の気持ちに思い巡らす部分が、すごくすごい。本当に、雪風のおかげで、深井さん、対人間への探索&理解力が増している。この感じだと、より困難な機械の思惑だって、いけるよ!

 深井さんがブッカー少佐も今回の件でようやく〈機械〉たちが〈生きている〉世界に追いついてきたんだ…と思ってる事が書かれていたのも良かった。少佐、きっと理屈では分かっていたかもしれないけど、今回作戦の主導権を握られて、身をもって知った。ということなのかな。あとで、少佐本人の話を聞きたいね!

出撃の状況

 雪風のバンカーバスター件の検証のため、9番機フラカン(ゴパル中尉)が行く予定だったが、故障予測ユニットAIが動いて、出撃すると故障するよと言ってきた。それで、フラカンの代わりに、11番機インバット(機長ラウラ・ペチェ少尉!フルネームだ~そして女性っぽい)が雪風のコースを検証する任務についていた。
 任務遂行中、インバットの故障予測ユニットAIの異常な動作が出て、それは空間受動レーダに対してだと判明。空間受動レーダが一瞬だけとらえた大きな〈穴〉をインバットの中枢知性体はジャムだとしたけれど、一瞬だったので空間受動レーダの故障だと判断。そのデータをペチェ少尉が司令部に送った時に、インバットと司令部の音声交信が不通(前回司令部で呼びかけてたのはそれか)となり、司令部のコンピュータたちはそれらをジャムの仕業だとした。司令部の彼らは〈穴〉を解析して、それは前に雪風が飛びこんだミニ〈通路〉だろうと判定。雪風はその状況を知り「実際に行きたい」と出撃要請をした。
 「この出撃は、インバットからの報告を受けて特殊戦の戦闘知性体たちが急遽立てた作戦によるものだ」(深井) その作戦を遂行するためにブッカー少佐が大急ぎで武装諸々を準備した…という「なにもかもイレギュラーな」ことらしい。

 今回は、レイフも雪風もとっても重装備。
レイフの装備、護身用と援護用のミサイルは良いとして、FAFで開発されたけど、地球から警戒されて開発中止になったのを「特殊戦が隠し持っていた」!!!という長距離高速ミサイルLRHM1×2を搭載
 あわわ…クーリィ准将ってすごいよね…特殊戦が特殊なわけだ~
 重たい武装でいつもの身軽な動きができないレイフのことを「口枷した狼」っていうのいいなあ!ロケットランチャー背中に担いだごつい人間じゃないのが良い。
 バンシー級の空中空母の破壊を目的に作られたLRHM1これ、攻撃用、だよね。雪風が、これが必要だと、要求してきた。深井さんがエディスに処方されたオクスリの、やられる前にやれ。先制攻撃をためらうな、のアグレッシブな武器。違うかなあ…
 
 一方の雪風は落下分離型の増槽を装着(初めてなんだ!)して、Dゾーンまでの長い時間または長距離飛行に備えてる。そしてLRHM1は自分では持たない。護衛は給油機能も備えた10番機リヤーン(アグレッサーズの連載時に名前はでていたらしい)と、11番機エンリル。 (11番機多発問題発生…インバットも11番機だし、グッドラックの時点でのガッターレも11番機~ 3機!)
 リヤーンはネット検索だと、サウジアラビアの「デーツの間を吹き抜ける風」で、エンリルは「メソポタミアの風と嵐の神」らしい。風関連の名前良いね!

そしてそして!!!!

「これは、知っているポッドだ」


うわあああああ!!! 雪風のラストミッションで落としに行ったTAISポッド…
(以下、〈改〉ラストを読み違えていて混乱していたので直します。混乱の具合は後半に追記しています)

炎上する雪風から射出されて半分死人で見つかり、心理的なショックから2か月の植物状態を経験するという…ところまで、ばーーーーっとよみがえったかしら…わたしは甦った。

 リヤーンに給油してもらって、シュガーロックへ行くの変更して、そっちへ向かう。そうだよね。レイフはエンリルに給油してもらったのかな。
ああ~次回が待てない~~


ここからは〈改〉を読み違えていた話をします

【自分の認識ではこんなだった】
「楽な任務のはずが…ジャムを追う雪風に砂漠で射出されて、ジャム人間に掴まって、チキンブロスを食べさせられ、自分とFOのコピーと遭遇して腹を撃たれる。なんとか雪風に乗ってジャムの基地を脱出はしたけど、被弾して不時着、近くにいた無人機に魂を移す雪風は、その途中で零に自爆スイッチを押されないよう、零を射出した」
 上記の文を前回のふせったーに原作を読み返さずに書いていたので、確認のため本を開いたら、ここの、さいご「途中で自爆スイッチを押されないように」というのを大きく勘違いしていたとわかった。ここは完全に読み違いをしていた。あとは、魂を移したのは無人機ではなく有人機。この部分は読んでから時間が経って、OVAの記憶が混ざった結果…と思われる。

 自分の認識が違っていたことにうわーーーーっとなって、もう一度、改の8話「スーパーフェニックス」で二度の射出をおさらいし、自爆スイッチについて「棘を抜く者」でおさらいしていた。
 そうすると、5部の深井さんが言ってる、雪風との「齟齬」が見えるような気がして、結果的にとても良い振り返りに。アグレッサーズから5部にかけて、改の振り返り…改を読み解く、みたいな流れがきているのに、すごくわくわくします。
 …これはそれの経緯です。

【最初の射出】
 ポッドを落とした後に現れたジャム。雪風はそれを追いたかったので、高速離脱しようとしていた人間の操作を拒否し、架空の火災を発生させて強制射出、人間を放りだした。

 それまでのグノー大佐や天田少尉、オドンネル大尉の話を読んできているし、初読の時はとうとう雪風も?!くらいにしか思ってなかったんだよね… 雪風は「棘を抜く者」の問題機の時から変わってない… やっぱり暴れ馬だ。

 5部の話にすると、雪風の対ジャムに特化した性質と、特殊戦の「情報を持ち帰るために逃げ帰る」が齟齬を起こした。

【二度目の射出】
 ジャムの基地から脱出したのはいいけど、被弾して不時着。ジャムは雪風を解析しようとしている。機体後部に火災発生。零は自爆スイッチを押してシーケンスを作動させようとするが、撃たれた失血が酷くて動けず、後席の操作ができなくて諦める。
 雪風は自機の情報を近くに来たブッカー少佐とサミア大尉が乗るFRX-00に転送を始め、その途中で「自爆しないといけない事態が発生した時に必要な人間の手」(=零)を、転送終了まで保ったままでいて、転送直後に自動射出した。
 この時、雪風は零が怪我のために自爆スイッチを押せないという〈人間の事情〉を知らない。(追記:乗員の顔と視線をモニタする特殊戦機のみに装備された装置は、グッドラック以降に登場するが、その装置が〈改〉時点であったのかは未確認。仮にあったとして、乗員の意識のあるなしは分かっても、怪我のことまでは分からないだろう)
 零が雪風とこのまま爆発しちゃってもいいや…なんて思ってることも当然知らない。あくまでも雪風から見たら、人間はユニットの一部なんだ。

 「自爆しないといけない事態」というのは「棘を抜く者」によれば、「飛行不能になって墜落する場合」などで、ジャムに情報を知られないようにするための自爆だ。だけれど、『人間が自爆スイッチを入れても、自爆モードにはならず、機体の中枢コンピュータが自爆が妥当かを判断する』らしい。そこの主導権が機体にあるのすごいな特殊戦機…
 乗員の手で自爆させられる場合というのは、中枢コンピュータが死んだとき。だから、改の最後で雪風が取っておいた「必要な手」というのは、データの転送途中で何かが起きて雪風の中枢コンピュータが死んだときに、ジャムに情報を渡さないようにするために機体を自爆させる零の手のことだ。

 零が動けて転送の途中で自爆シーケンスを発動させたとしてもおそらく受付けないだろうね。ジャムになんとしてでも情報は奪わせない。自分に何かあったら人間ユニットが爆破してくれることになっているし、転送が完了したらその機体で旧機体を破壊すればいい。スッキリハッキリ。
 最後の自動射出の意味も、火災を起こしている機体から乗員を保護するために組まれた通常の手順なんだろね。
 Xの相互フォロワ様のコメントの『「自分は転送完了=脱出した、乗員も脱出させた。乗員の損害の状況?乗員自身で報告すればいい。ミッションはコンプリートした」と解釈した』
 がとてもスッキリ表現してくださっててありがたかったです。

 そう、わたしが感じた「邪魔な人間は要らない」なんて、雪風は思ってなかった。目的を達成のための優先順位の必然上で起る事象だった。
 機械は、人間がどう思っているかなど忖度することもない。邪魔とかそういう人間らしい情動もない。ない、はず… …?
 システムを知ることで、そういった雪風の行動を理解できることもあるのかなって。5部ってそういう話でもあるんだと思う。 そのうえで、システムを越えたどこかに、雪風やコンピュータたちが人間をどう認識しているのか、その思考や意志、あるかもしれない情動を探っていこうっていう。
 
 雪風と心中してもいいとか彼女に振られた…とか、雪風がグッドラックって言った~!と思うのは擬人化している人間の都合で、機械は機械。雪風は雪風の世界で生きてるって、改めて戦闘妖精・雪風はほんとに面白いなってなったのでした。

 今、この作品を読めることに感謝


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